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最強で最速の無限レベルアップ ~スキル【経験値1000倍】と【レベルフリー】でレベル上限の枷が外れた俺は無双する~

シオヤマ琴@『最強最速』10月2日発売

第25話 チートスキル(七か月前)

「……佐倉さんっ、佐倉さん聞こえますかっ。佐倉さんっ」


神代の声が聞こえる。
俺はその声に導かれるようにして目覚めた。


「あ……あれ……俺……?」


「よかった。気がつきましたね」
「平気みたいね」
目を開けると俺は地面に横たわっていて神代と長澤が安堵の表情で俺の顔を覗き込んでいた。


「神代。長澤……俺、どうして……?」
「佐倉さんはポイズンバードの毒にやられたんですよ」
と神代。


「毒? ……そういえば」
ポイズンバードの攻撃を避け切れずくちばしが首元をかすめたんだった。
俺はとっさに首元に手をやる。


「あれ? 傷が、ない……?」
浅い傷だったがたしかに攻撃をくらったはずなのに。


「あんた、蓮華に感謝しなさいよ」
「え? 水川に?」
蓮華というのは水川のこと。
女子同士仲がいいのだろう、長澤は水川のことを下の名前でそう呼んでいた。


「どういうことだ?」
俺はやはりすぐ近くで寄り添ってくれていた水川に顔を向けた。
水川は俺と目が合うと恥ずかしそうにうつむく。


「あんた毒が回って気を失ったのよ。それを蓮華が助けてあげたってわけ」
「水川は解毒魔法が使えるからな」
と両腕を組んで俺を見下ろしているのは海道だ。


「ついでに回復魔法で傷も治してやったんだぞ。な? 水川」
「あ、は、はい」
話を振られた水川が遠慮がちにうなずく。


「そうだったのか。ありがとうな水川。助かったよ」
「い、いえ。気にしないでください」
と水川はふるふると首を横に振った。
ボブカットのさらさらとした髪が揺れシャンプーだろうか、石鹸のいい香りが俺の鼻をくすぐる。


「それにしても解毒魔法とか回復魔法とかあるんだな」
「あんた魔法使えないの?」
長澤が俺の目を見て言った。


「いや、使えるけど俺は火炎魔法と氷結魔法だけだ」
「おっ、火炎魔法ならおれも使えるぜ。お前ランクはいくつだっ」
「ランクは3」
「マジかよ。おれはランク2だぜ、くっそっ」
勝手に張り合ってきて残念がる海道。
正直どうでもいい。


「ほかのスキルは覚えてないわけ? ダンジョン探索に役に立ちそうなやつとか?」
「そういう長澤たちはどうなんだよ」
俺は少し興味がわいて訊き返した。


「あたしは【忍び足】ってスキルが使えるわ。足音を一切させずに歩くことができるのよ、魔物に気付かれないから便利なの」
「おれは【ちから+100】ってスキルがあるぜ。おれにはもってこいのスキルだろ」
長澤と海道が自慢げに語る。


「ちなみに僕は【透明化】というスキルを覚えています。文字通り透明になれるだけですけどね」
神代は爽やかな笑顔を崩さない。


俺は残った水川に視線を移した。
だが水川は俺と目が合うなり目を背けてしまう。


「水川はどんなスキルを覚えてるんだ?」
「わ、わたしは……何もない、です」
「え? 何もない?」
「は、はい。すみません……」


俺はレベル20にもなれば魔法以外の特殊なスキルもみんなが覚えているものだと勝手に思い込んでいた。
だがどうやらそれは違うらしい。


見ると水川は恥じるように目を伏せてしまっていた。


……悪いこと訊いちゃったかな。
俺のせいで肩身の狭い思いをさせてしまったのだとしたら不用意な発言だったのかもしれない。


俺は水川をフォローしようと明るく声を弾ませる。
「でも回復魔法と解毒魔法が使えるんだろ。それで充分じゃんか。なあみんなっ?」
「ええ、そうですね。水川さんは我々のチームには欠かせない存在です」
空気を読んでくれたのか神代が俺の言葉に賛同してくれた。
サンキュー、神代。


「それよりあんたはどうなのよっ。いい加減教えなさいってば」
話題を変えるつもりだったのかそれとも単に興味があっただけなのか長澤が俺に顔を近付ける。


「えっと、俺は【レベルフリー】と【経験値1000倍】ってスキルを覚えてる。レベルフリーはよくわからないけど経験値1000倍は言葉通りのスキルだ」


「経験値1000倍ですって!? なにそれ、マジなの?」
「それが本当だとしたらすげぇチートスキルじゃねぇかよっ」
長澤と海道が声を上げ反応した。


そして神代も口を開く。
「すごいですね。あなたには驚かされてばかりです。そんなスキルが存在していたなんてびっくりですよ」
普段と変わらず落ち着き払っていてびっくりしているようには見えないが。




「さてと」
と言うと神代は立ち上がった。


「では、佐倉さんもだいぶ元気になったようですからそろそろ下の階に向かいましょうか」
「あいよ」
「そうしましょ」
「は、はい」


神代のその一言で俺たちはダンジョン探索を再開するのだった。

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