最強で最速の無限レベルアップ ~スキル【経験値1000倍】と【レベルフリー】でレベル上限の枷が外れた俺は無双する~
第19話 夜の出来事(八か月前)
フェリー乗り場近くの公園のベンチで目を閉じながら俺はなんとはなしにダンジョンが出来たばかりの頃を思い返していた。
たしか、あの日は春の割にひどく寒い夜だった――
===== ===== ===== =====
「待て真琴、まだ話は終わってないぞっ……!」
「全部俺が悪いんだろっ!」
高校を退学になった俺は父親と義理の母と大喧嘩の末玄関ドアを力任せに開け放つとそのまま家を飛び出したのだった。
行く当てもなかった俺はその足で近くの公園へと駆けこんだ。
家から持ち出したものはスマホと全財産の現金二万円だけ。
十六歳にしては少ないかもしれないがバイトも貯金もしていなかったのだからしょうがない。
俺は走ったことで喉が渇いていたのでとりあえず公園にあった水道の蛇口をひねる。
すぐ目の前には自販機が置かれていたが二万円しかないんだ、節約しておきたい。
水道の水でのどを潤した俺はベンチを探してそこに腰かけた。
「はぁっ……これからどうしよ……」
夜のとばりの中常夜灯の明かりに照らされながらつぶやく。
静かな夜に公園のベンチで一人。頭に浮かんでくるのは父親の激怒したそれでいてなんとも言えない悲しみを含んだ顔。
わかっている。
退学処分が親不孝なことだというのは。
でもいじめを見て見ぬ振りできなかったんだからしょうがないだろっ……。
……先生に相談すればよかったのか?
……それとも桜庭たちと話し合えばよかったのか?
……俺のやったことはまるっきり無意味なことだったのか?
頭を抱えながら自問自答を繰り返していた時だった。
「……ちょっ、ちょっとやめてくださいっ!」
若い女性の甲高い声が公園内に響いた。
「ん? なんだ?」
とっさに顔を上げて辺りを確認する。
と、
「やめてっ、誰か助けてぇっ!」
またも女性の声が公園内にこだまする。
ただ事ではない女性の悲鳴に俺はベンチから立ち上がると声のした方へと駆け出していた。
☆ ☆ ☆
すぐに俺は大きな木の下で若い男性二人に絡まれている女性を発見した。
女性は腕を掴まれながらももう片方の手に持ったバッグで必死に抵抗している。
「おい、そんな嫌がることないだろ」
「こんな夜遅くに何してるの~って声かけただけじゃん」
「だったら手を放してくださいっ!」
会話から察するにただのナンパのようだった。
てっきり襲われているのかと思ったので俺はとりあえず胸をなでおろした。
だが、
「あっ、きみ助けてっ、お願い助けてっ!」
ほっとしていると女性と目が合ってしまった。
女性はわらにもすがる思いで俺に助けを求めてくる。
すると男性二人が俺に視線を移した。
その瞬間だった。女性は男性の腕を振り払うと公園の外に猛ダッシュ。「あ、おいっ……!」と声をかける男性を無視して一目散に走り去っていってしまった。
一瞬の出来事に唖然としていた男性たちは気を取り戻すと俺に再度向き直る。
そのうちの一人が俺を見て言う。
「おい、お前のせいで逃げられたじゃねぇか」
どういうわけか火の粉が俺に飛び火した。
「いや、そう言われましても……」
ナンパに失敗したのはそっちの問題だろ。
「ったく……ヤマ、もう行こうぜ。さみーよ」
片方の男性がポケットに手を突っ込みながら呼びかけるがヤマと呼ばれた男性の方はおさまりがつかないのか俺に近付いてくる。
身長の差から俺は自然と見上げる形になった。
「な、なんですか?」
「謝れ」
「……え?」
「謝れって言ったんだ」
デジャブか?
先週高校で俺が桜庭に対して放ったセリフをまんま口にする男性。
「え、えっと……」
「いいから謝れっ!」
「あっ……す、すいません」
桜庭たちにボコボコに殴られた時の記憶と痛みが脳裏をよぎりとっさに頭を下げ謝ってしまった。
「ふんっ」
と鼻を鳴らし立ち去っていく男性。
「おい、ヤマ待てってば」
もう一人の男性もあとを追っていってしまった。
夜の公園に一人残された俺は悪くないのに謝ってしまったことを後悔するとともにそんな自分を恥じて、
「くそっ…………」
きゅっと唇をかみしめていた。
たしか、あの日は春の割にひどく寒い夜だった――
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「待て真琴、まだ話は終わってないぞっ……!」
「全部俺が悪いんだろっ!」
高校を退学になった俺は父親と義理の母と大喧嘩の末玄関ドアを力任せに開け放つとそのまま家を飛び出したのだった。
行く当てもなかった俺はその足で近くの公園へと駆けこんだ。
家から持ち出したものはスマホと全財産の現金二万円だけ。
十六歳にしては少ないかもしれないがバイトも貯金もしていなかったのだからしょうがない。
俺は走ったことで喉が渇いていたのでとりあえず公園にあった水道の蛇口をひねる。
すぐ目の前には自販機が置かれていたが二万円しかないんだ、節約しておきたい。
水道の水でのどを潤した俺はベンチを探してそこに腰かけた。
「はぁっ……これからどうしよ……」
夜のとばりの中常夜灯の明かりに照らされながらつぶやく。
静かな夜に公園のベンチで一人。頭に浮かんでくるのは父親の激怒したそれでいてなんとも言えない悲しみを含んだ顔。
わかっている。
退学処分が親不孝なことだというのは。
でもいじめを見て見ぬ振りできなかったんだからしょうがないだろっ……。
……先生に相談すればよかったのか?
……それとも桜庭たちと話し合えばよかったのか?
……俺のやったことはまるっきり無意味なことだったのか?
頭を抱えながら自問自答を繰り返していた時だった。
「……ちょっ、ちょっとやめてくださいっ!」
若い女性の甲高い声が公園内に響いた。
「ん? なんだ?」
とっさに顔を上げて辺りを確認する。
と、
「やめてっ、誰か助けてぇっ!」
またも女性の声が公園内にこだまする。
ただ事ではない女性の悲鳴に俺はベンチから立ち上がると声のした方へと駆け出していた。
☆ ☆ ☆
すぐに俺は大きな木の下で若い男性二人に絡まれている女性を発見した。
女性は腕を掴まれながらももう片方の手に持ったバッグで必死に抵抗している。
「おい、そんな嫌がることないだろ」
「こんな夜遅くに何してるの~って声かけただけじゃん」
「だったら手を放してくださいっ!」
会話から察するにただのナンパのようだった。
てっきり襲われているのかと思ったので俺はとりあえず胸をなでおろした。
だが、
「あっ、きみ助けてっ、お願い助けてっ!」
ほっとしていると女性と目が合ってしまった。
女性はわらにもすがる思いで俺に助けを求めてくる。
すると男性二人が俺に視線を移した。
その瞬間だった。女性は男性の腕を振り払うと公園の外に猛ダッシュ。「あ、おいっ……!」と声をかける男性を無視して一目散に走り去っていってしまった。
一瞬の出来事に唖然としていた男性たちは気を取り戻すと俺に再度向き直る。
そのうちの一人が俺を見て言う。
「おい、お前のせいで逃げられたじゃねぇか」
どういうわけか火の粉が俺に飛び火した。
「いや、そう言われましても……」
ナンパに失敗したのはそっちの問題だろ。
「ったく……ヤマ、もう行こうぜ。さみーよ」
片方の男性がポケットに手を突っ込みながら呼びかけるがヤマと呼ばれた男性の方はおさまりがつかないのか俺に近付いてくる。
身長の差から俺は自然と見上げる形になった。
「な、なんですか?」
「謝れ」
「……え?」
「謝れって言ったんだ」
デジャブか?
先週高校で俺が桜庭に対して放ったセリフをまんま口にする男性。
「え、えっと……」
「いいから謝れっ!」
「あっ……す、すいません」
桜庭たちにボコボコに殴られた時の記憶と痛みが脳裏をよぎりとっさに頭を下げ謝ってしまった。
「ふんっ」
と鼻を鳴らし立ち去っていく男性。
「おい、ヤマ待てってば」
もう一人の男性もあとを追っていってしまった。
夜の公園に一人残された俺は悪くないのに謝ってしまったことを後悔するとともにそんな自分を恥じて、
「くそっ…………」
きゅっと唇をかみしめていた。
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