勇者パーティーを追い出された大魔法導士、辺境の地でスローライフを満喫します ~特Aランクの最強魔法使い~

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第46話 人語を話すスライム

「え? スライムが喋ったんですか?」
「そのようです」
「いや、まさか……」


モンスターが喋ることがまったくないわけではない。
しかしそれは一部の限られた希少種のみでどこにでもいるような弱小モンスターのスライムが人語を操れるはずはない。


それなのに、


『ぼくをいじめないで。ぼくは悪いスライムじゃないよっ』


目の前のスライムはなぜか人の言葉を話している。


「わたくしたちはスライムさんをいじめたりなんていたしませんよ。そうですよね? スタンス様」
「え、ええ」
いじめという言葉に反応しついそう答えてしまった。


「ね? だから安心してくださいねスライムさん」
『う、うん』
スライムは安堵の表情を浮かべると俺たちを見上げながら話し始める。
『ぼくは人間と仲良くしたいだけなんだ。でも魔王様は人間を殺せって言うし人間はぼくのことを敵だと思っているし、ぼくどうしたらいいかわからなくて……』


「それは大変ですね」
困った顔をしながら頬に手を当て相槌を打つジュエル王女。


『そうなんだ。ぼくどうしたらいいのかな?』
「そうですねぇ……スタンス様はどう思われますか?」


話が俺に飛んできた。


「どうって言われても……」
正直スライムはモンスターだからさっさと倒せばいいのではと思うがスライムの頭を優しく撫でているジュエル王女の手前そうも言えない。


人間の言葉を喋るスライムか……高く売れるかな?
なんて考えが頭をよぎったその時、


「そのスライムを最初にみつけたのはおれですよっ。だ、だからおれがそいつをもらう権利がありますっ」
馬車の御者さんが声を張り上げた。


「お、おれには借金があるんですっ。人の言葉を喋るスライムならきっと高く売れるはず、おれにそのスライムを返してくださいっ」
声を震わせながら御者さんはスライムを抱きかかえたジュエル王女に手を伸ばす。


「スライムさんは物やペットではありませんよ。あなたにお渡しすることは出来ません」
毅然とした態度でジュエル王女が返す。


「ふ、ふざけるなっ。そいつはおれのだ、か、返せっ」
「きゃっ、やめてくださいっ」
力ずくで無理矢理スライムを奪い取ろうとする御者さん。
ジュエル王女は渡すまいとスライムを抱きかかえたまま体を丸めた。


これはさすがに止めたほうがいいな。


「ウォーターボール!」
「こ、この放せってごぼごぼっ……!?」


俺はウォーターボールと唱え球体の水を御者さんの顔の周りに出現させた。
御者さんは顔に水のボールがまとわりつき息が出来ずにジュエル王女から離れた。
苦しそうにもがきながらも水を払おうとするが水は顔にくっついていて離れない。


うーん、我ながらえぐい魔法だ。


俺が指を鳴らすと水のボールはぱしゃんとはじけて消えた。


「すいません御者さん、大丈夫でした?」
「う、うわあぁぁー!」
必死の形相で俺から逃げていく御者さん。


「……やりすぎたかな」




「ありがとうございましたスタンス様。おかげでスライムさんは無事です」
「そうですか、よかったですね」
『ありがとうね、スタンス』
スライムからもお礼を言われる。


そっか、結果的にスライムを助けた形になったのか。
……ていうか助けてやったんだからスタンスさんだろ。


「にしてもこれから先どうしますか?」
御者さんがいなくなってしまった。


「俺馬車なんて走らせたことないですよ」


すると、
「大丈夫です、わたくし乗馬の心得がありますから」
とジュエル王女。


「え、ジュエル王女が馬車を走らせるんですか?」
「はい。わたくしにお任せください」


王女にそんなことさせていいのかなぁとは思ったが他に手もないのでジュエル王女の言う通り任せることにした。


「ではスライムさんは馬車の中に入っていてください」
『うん、わかったよ』
抱きかかえていたスライムを馬車に乗せるジュエル王女。


「あの、ジュエル王女。このスライム連れていくんですか?」
「はい、そうですよ」
当たり前のように返す。


「いやいや……え?」
「わたくしスライムさんとお友達になりましたので一緒に暮らしたいと思います」
「一緒に暮らす? スライムと?」
「はい。きっとフローラさんも喜んでくださるはずです」
とジュエル王女は微笑を浮かべながら言った。


そうかなぁ。
フローラがモンスター嫌いじゃなければいいけど。




それから俺たちは馬車に揺られること一時間、ゴッサム地区の中央に位置するズースの町に到着したのだった。

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