勇者パーティーを追い出された大魔法導士、辺境の地でスローライフを満喫します ~特Aランクの最強魔法使い~

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第34話 ジュエル王女の結婚相手

「プルセラ王女のお姉さんと結婚っ!?」
「そうだ、簡単なことだろ」
「どこがですかっ」
「?」
プルセラ王女は鳩が豆鉄砲を食らったような顔をする。


「何が不満なんだ? 私の姉さんは美人だぞ。それに一生働かなくて済むぞ」
「いやいや、プルセラ王女のお姉さんてことはジョパン国の第一王女でしょうが」
「そうだが」
何か問題でも、と言わんばかりの顔だ。


ん?
そういえばジョパン国の第一王女のジュエル王女には許嫁がいたはずだが……。


「ジュエル王女って婚約者がいましたよね。確か同じ王族の……」
「いるぞ。ガシュウ国のランド王子だろ」
「いるじゃないですか。なんですかこの話?」
さっきからずっと時間の無駄だ。


「ランド王子は女癖が悪いらしい。これまでに数々の浮名を流して二股、三股は当たり前の男だ。言わば女の敵なんだ。そんな男と姉さんを結婚させるわけには断じていかない」
「はあ……」
「なんだ、その気のない返事はっ」
「だってそれが俺となんの関係があるんですか?」
俺はジュエル王女ともランド王子とも面識はない。


「関係はある。姉さんと結婚すればお前は次期国王だ。そうなればお前をパーティーから追い出した勇者を見返せるぞ。なんなら勇者を打ち首にだって出来る」
「打ち首になんてしたくないですよ」
俺は別にそこまでリックを恨んでいるわけではないし、今の生活もそれなりに気に入っている。


「そもそもその結婚は国王同士が決めたんですよね。だったらどうにも出来ないでしょう」
「それが出来ると言ったらどうだっ」
プルセラ王女は俺の顔を見てにやりとした。


「今週末ランド王子が剣術大会に出るためにジョパン国にやってくるのだ」
「剣術大会?」
「ああ、ランド王子は女好きのバカ王子だが剣術だけはかなりの腕前らしくてな、ガシュウ国の騎士団長にも匹敵する強さだと聞く。そのランド王子が姉さんに自分の強さを見せつけたいがために剣術大会に出るのだ」
「それで?」
「ランド王子は宣言したのだ。自分に勝った奴にはジュエル王女をくれてやると。もちろんよほどの自信があってのことなのだろう」
うーん、なんか話だけ聞くとちょっと嫌な奴だな。


「つまり俺にその剣術大会とやらに出てランド王子を倒せと?」
「そういうことだ。物分かりがいいじゃないかお前」
「話はわかりましたけど無理ですよ」
「うんうん。お前ならきっとそう言ってくれると思ってえええっ!?」
大袈裟に驚くプルセラ王女。リアクションが大きいな。


「今なんと言ったお前っ?」
「だから無理ですって。勝てませんよ」
「なんでだ! お前は世界最高の魔法使いだろうがっ!」
プルセラ王女は語気を強める。


「そうかもしれませんけど剣術なんて習ったことないですよ、俺。それって剣術大会なんですよね、魔法使ったら反則になりません?」
「うっ……それは」
「大体なんで俺なんですか? ジョパン国の剣術のすごい人に頼んだらどうですか?」
「ぐぬぬぬっ……」
プルセラ王女は顔を紅潮させ体を震わせる。


そして一言、
「お、お前なんかもう知らんっ!」
言うと走り去ってしまった。

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