Sランクパーティーを追放された鍛冶職人、世界最強へと至る ~暇になったおっさんは気晴らしに作ったチート武器で無双する~

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第55話 すれ違い

「それではバラン様、どのような依頼を希望されますか?」
ギルドの受付の女性が丁寧に訊ねてくる。


「えっと、モンスター退治みたいな依頼がいいんですけど……」


マリアがモンスターとの戦闘を怖がっているのでそれを克服するためだ。


「ランクは高い方がよろしいですか?」
「いえ、どのランクでも構わないです」
「そうですか……では異常発生した大王オオウミウシガエルの群れの討伐という依頼はどうでしょうか? こちらはDランクになりますが」
「マリア、それでいいか? ……マリア?」
隣に立つマリアを見下ろすと「カ、カエル……!」と体を小刻みに震わせていた。


「マリアってカエル苦手なのか?」
「は、はい……き、気持ち悪くて見るのも駄目です。すみませんけどこの依頼はちょっと……」


うーん、マリアはカエルNGか。


「すいません、他にありますか?」
俺は受付の女性に訊いてみる。


「そうですね……それでは洋館に現れる首なし騎士の退治という依頼はどうですか? こちらはAランクです」
「どうだ? マリア」
マリアに確認する。


「は、はい、それならなんとか」
「じゃあそれでお願いします」
俺が言うと受付の女性が詳しい依頼内容が書かれた依頼書を差し出してきた。


それを受け取ると、
「ではご無事をお祈りいたしております」
礼儀正しくお辞儀をする受付の女性に見送られ俺とマリアはギルドをあとにした。




☆ ☆ ☆




「えーっと、なになに……」
俺は歩きながら依頼書を読み上げる。


「カジカ村の村はずれの洋館に夜な夜な出没する首なし騎士デュラハンの退治。依頼ランクA。報酬は……金貨三十枚か」
「デュラハンですか……」
マリアはかみしめるように言った。


『何? デュラハンて?』
エクスカリバーが訊いてくる。


首がない騎士のモンスターだ。
『何よ、そのままじゃない』
しょうがないだろ、他に説明のしようがないんだから。


首なし騎士デュラハンはその名の通り首がない。
セフィーロたちとパーティーを組んでいた時にダンジョンで何度か遭遇したことがあるがセフィーロたちは難なく倒していたから今の俺とマリアなら倒せるはずだ。
もちろんマリアがデュラハンを怖がらなければだが。


「夜に出るようだからしばらくどこかで時間でもつぶすか?」
「あ、あの……出来ればデュラハンと戦う前にモンスターに慣れておきたいんですけど」
「それは構わないが」
「わたしこの辺りでモンスターが出る場所がないかギルドに戻って訊いてきます」
「だったら俺も行くよ」
「いえ、それくらいは一人で大丈夫ですからっ」
言うとマリアは駆けていった。




『あんたちょっとあの子に対して過保護じゃない?』
「そうか? そんなつもりはないけどな」
『あんまりひっついてるとうざがられるわよ。んでそのうちポイよ』
「うっ……」
エクスカリバーの言葉が胸に刺さる。


マリアのためによかれと思ってやっていることがまた裏目に出ても困る。
マリアとはもう少し距離を置いたほうがいいのかもな。




しばらく待っているとマリアがギルドから走って戻ってきた。
「すいません、お待たせしましたっ……」
「ああ」
「? あ、あの……近くに断首の丘というモンスターが沢山出現する場所があるそうなので行ってみませんか?」
「ああ、わかった」
「あ、ありがとうございます」




断首の丘には歩いて向かった。


「そこにはモンスターの首なし死体が転がっていることもあるみたいなんですよ。な、なんか怖いですよね」
「ああ、そうだな」
「も、もしかしてデュラハンと何か関係があるんでしょうかね?」
「さあな」




近くという割にはそこそこ歩いてようやく俺たちは断首の丘に到着した。
一面見渡す限り背の高い草が生い茂っていて小さいモンスターだと近くに来るまで気付けそうにない。


「中に入っていってみましょうか」
「ああ」


俺たちは草の中に分け入っていく。
草をかき分けながらしばらく進むと、
「あっ、バ、バランさん、これ見てくださいっ」
マリアが声を発した。


マリアの視線の先を見下ろすと地面には首のないゴブリンの死体があった。


「は、話に聞いていた通りですね。まるで刃物か何かで斬られているみたい……」
「ああ」


死んでいるモンスターは意外と平気そうなマリア。
やっぱりモンスターと戦うことが怖いのだろう。
俺は生きているモンスターをみつけるためまた歩き出そうとしたところでぐっ、と腕を掴まれた。


!?


見るとマリアが意を決したような表情で俺を見上げていた。


「どうした? マリア」
「あ、あの、わたし何かバランさんの気に障るようなことをしましたか?」
「へ? いや別に何も」
なんで急にそんなことを。


「で、でもバランさんのわたしへの態度がちょっと前から冷たくなったような気がするんですけど」
「そんなことないぞ。いたって普通だ」
『全然普通じゃなかったわよあんた』
とエクスカリバー。


『その子と距離をとろうとしてなんか嫌な奴になってたわ』
「うそっ……」
「何がうそなんですか?」
マリアが丸い大きな瞳でみつめてくる。


「あー、今のはエクスカリバーに言ったんだけど。っていうかさっきエクスカリバーに言われたんだ、マリアに過保護すぎるんじゃないかって。そんなことしてるとそのうちまた嫌われるって」
「え……? そ、そんなことあるわけないですよっ」
そうは言っても一度追い出されているからなぁ。


「だから変にくっつきすぎない方がいいんじゃないかと思ってたら……悪い、余計変な感じになってたかも」
「あの……わたし確かにバランさんを追い出すような真似しちゃいましたけど……バランさんのこと嫌いじゃないですからっ。そ、それだけはわかっていてくださいっ」


耳を赤くして言い放つとマリアは草を分け入って先に行ってしまった。

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