Sランクパーティーを追放された鍛冶職人、世界最強へと至る ~暇になったおっさんは気晴らしに作ったチート武器で無双する~
第47話 マリア
「マリア……」
「バ、バランさん……」
俺とマリアは次の言葉が出ないままお互いみつめ合っていた。
すると、
「あら、もしかして知り合い?」
中肉中背の女性がマリアに話しかける。
「は、はいアナベル様」
「へ~、まあでもSランクの冒険者なんてそんなにいるもんじゃないし知り合いでも不思議はないか。まさか知り合いだからって手加減したりなんかしないわよね? マリア」
「は、はい……」
アナベルと呼ばれた女性がマリアの頭にぽんと優しく手を置いた。
「わたしがマイトノーベル家の現当主アナベル・マイトノーベルよ。そしてこの子がうちの代表のマリア。こう見えてSランクの冒険者よ」
アナベルはそう言うとカバランに顔を向ける。
「ほら、次はそっちの番よ。自己紹介くらいしなさいな」
「カバラン様、堂々と落ち着いて」
「う、うん」
ラインバッハさんに背中を押されカバランが前に出る。
「……ぼ、ぼくちゃんがラハール家の現当主のカバラン・ラハール、だっ。そ、それでこっちのバランがうちの、だ、代表だっ」
「ぼくちゃん? あなた年いくつよ?」
「よ、四十二歳……」
「四十二歳!? あなたいろいろやばいわね」
アナベルは苦い顔でカバランから顔をそむけると「まあ、いいわ」と今度は俺を見た。
「あなたマリアの知り合いみたいだけど手加減なんかしないで本気でやってね。これは代々続くマイトノーベル家とラハール家の因縁を終わらせる記念すべき試合なんだから」
「あ、ああ」
俺は現状をまだ飲み込めないまま返事だけした。
「じゃああとは二人に任せてわたしたちは離れたところから見守りましょ」
「う、うん。わ、わかった……」
「バラン様、お気をつけて」
アナベルやカバランたちが離れていってマリアと二人だけになった。
「バ、バランさん、お久しぶりです」
「ああ、あれ以来だな」
と言った後しまったと思う。
今の言い方だとパーティーを追い出されたことを根に持っているような言い方に聞こえたかも。
「す、すみません……」
案の定マリアはうつむいてしまった。
「いや、マリアが謝るようなことじゃないから。あれは俺の自業自得だし」
「いえ、そんなことは……」
そこまで言ってマリアは押し黙ってしまう。
「……」
「……そうだ、この前ゾーンが俺を訪ねてきたんだ」
「え、ゾーンさんがですか?」
「ああ」
やはりゾーンはマリアたちには何も告げずに来ていたのか。
なんとなくだがそんな気がしていた。
「だ、大丈夫でしたか? 何かされたんじゃ……?」
心配そうに俺を見上げるマリア。
「いや、特には何もなかったぞ」
本当は全力で戦い合ったのだがそれを言うとますます心配させそうなので黙っておく。
「そ、そうですか、よかったです。で、でもそれじゃあゾーンさんは何をしにバランさんを訪ねたんですか?」
「さあ? それは未だに俺にもよくわからないんだ」
『バーカ』
エクスカリバーの声が頭に届く。
今はマリアと話してるんだから静かにしててくれ。
「……マリアの方こそ大丈夫か? ミノケンタウロスにやられてからモンスターが苦手になったとかって」
「ゾーンさんがそう言ったんですね……はい、確かにその通りです。冒険者がモンスターを怖がるなんてどうかしてますよね。冒険者失格です」
「……」
俺が何も返せないでいるとマリアが自嘲交じりに続けた。
「セフィーロさんたちの足を引っ張っている分せめて一人でお金を稼ごうと今回の依頼を引き受けたんです。今回の依頼は相手がモンスターじゃないから……でもよりによって相手がバランさんだなんて」
「そっか」
セフィーロはミノケンタウロスの一件以降仲間に強く当たり散らしているとゾーンが言っていた。
マリアが一人でこんな依頼を受けているのももしかしたらそれが関係しているのかもな。
「マリア、なんなら俺はこの試合棄権しようか」
「そ、そんな、それは駄目ですっ。これは代々続くマイトノーベル家とラハール家の因縁に決着をつけるための大事な代理戦争なんですからっ」
『そうよ、何甘いこと言ってるのよ。こいつもあんたを追い出した内の一人なんでしょ。さっさと殺しちゃいましょ』
そういう物騒な発想はやめろ。
「それにわたしも冒険者として依頼を引き受けた以上中途半端なことは出来ません」
真面目なマリアが言いそうなことだった。
「いくら相手がバランさんでもわたしは本気で戦います」
「ちょっとー! いつまで待たせる気なのっ。二人ともさっさと始めなさーい!」
アナベルが遠くの岩陰から叫ぶ。
「……わかった。俺も真剣に戦う。それでいいな?」
「はい」
真剣な顔でうなずくとマリアは俺から距離をとった。
ひゅーと冷たい風が吹いてくる。
見上げるといつの間にか灰色の雲が空を一面覆い隠していた。
「バ、バランさん……」
俺とマリアは次の言葉が出ないままお互いみつめ合っていた。
すると、
「あら、もしかして知り合い?」
中肉中背の女性がマリアに話しかける。
「は、はいアナベル様」
「へ~、まあでもSランクの冒険者なんてそんなにいるもんじゃないし知り合いでも不思議はないか。まさか知り合いだからって手加減したりなんかしないわよね? マリア」
「は、はい……」
アナベルと呼ばれた女性がマリアの頭にぽんと優しく手を置いた。
「わたしがマイトノーベル家の現当主アナベル・マイトノーベルよ。そしてこの子がうちの代表のマリア。こう見えてSランクの冒険者よ」
アナベルはそう言うとカバランに顔を向ける。
「ほら、次はそっちの番よ。自己紹介くらいしなさいな」
「カバラン様、堂々と落ち着いて」
「う、うん」
ラインバッハさんに背中を押されカバランが前に出る。
「……ぼ、ぼくちゃんがラハール家の現当主のカバラン・ラハール、だっ。そ、それでこっちのバランがうちの、だ、代表だっ」
「ぼくちゃん? あなた年いくつよ?」
「よ、四十二歳……」
「四十二歳!? あなたいろいろやばいわね」
アナベルは苦い顔でカバランから顔をそむけると「まあ、いいわ」と今度は俺を見た。
「あなたマリアの知り合いみたいだけど手加減なんかしないで本気でやってね。これは代々続くマイトノーベル家とラハール家の因縁を終わらせる記念すべき試合なんだから」
「あ、ああ」
俺は現状をまだ飲み込めないまま返事だけした。
「じゃああとは二人に任せてわたしたちは離れたところから見守りましょ」
「う、うん。わ、わかった……」
「バラン様、お気をつけて」
アナベルやカバランたちが離れていってマリアと二人だけになった。
「バ、バランさん、お久しぶりです」
「ああ、あれ以来だな」
と言った後しまったと思う。
今の言い方だとパーティーを追い出されたことを根に持っているような言い方に聞こえたかも。
「す、すみません……」
案の定マリアはうつむいてしまった。
「いや、マリアが謝るようなことじゃないから。あれは俺の自業自得だし」
「いえ、そんなことは……」
そこまで言ってマリアは押し黙ってしまう。
「……」
「……そうだ、この前ゾーンが俺を訪ねてきたんだ」
「え、ゾーンさんがですか?」
「ああ」
やはりゾーンはマリアたちには何も告げずに来ていたのか。
なんとなくだがそんな気がしていた。
「だ、大丈夫でしたか? 何かされたんじゃ……?」
心配そうに俺を見上げるマリア。
「いや、特には何もなかったぞ」
本当は全力で戦い合ったのだがそれを言うとますます心配させそうなので黙っておく。
「そ、そうですか、よかったです。で、でもそれじゃあゾーンさんは何をしにバランさんを訪ねたんですか?」
「さあ? それは未だに俺にもよくわからないんだ」
『バーカ』
エクスカリバーの声が頭に届く。
今はマリアと話してるんだから静かにしててくれ。
「……マリアの方こそ大丈夫か? ミノケンタウロスにやられてからモンスターが苦手になったとかって」
「ゾーンさんがそう言ったんですね……はい、確かにその通りです。冒険者がモンスターを怖がるなんてどうかしてますよね。冒険者失格です」
「……」
俺が何も返せないでいるとマリアが自嘲交じりに続けた。
「セフィーロさんたちの足を引っ張っている分せめて一人でお金を稼ごうと今回の依頼を引き受けたんです。今回の依頼は相手がモンスターじゃないから……でもよりによって相手がバランさんだなんて」
「そっか」
セフィーロはミノケンタウロスの一件以降仲間に強く当たり散らしているとゾーンが言っていた。
マリアが一人でこんな依頼を受けているのももしかしたらそれが関係しているのかもな。
「マリア、なんなら俺はこの試合棄権しようか」
「そ、そんな、それは駄目ですっ。これは代々続くマイトノーベル家とラハール家の因縁に決着をつけるための大事な代理戦争なんですからっ」
『そうよ、何甘いこと言ってるのよ。こいつもあんたを追い出した内の一人なんでしょ。さっさと殺しちゃいましょ』
そういう物騒な発想はやめろ。
「それにわたしも冒険者として依頼を引き受けた以上中途半端なことは出来ません」
真面目なマリアが言いそうなことだった。
「いくら相手がバランさんでもわたしは本気で戦います」
「ちょっとー! いつまで待たせる気なのっ。二人ともさっさと始めなさーい!」
アナベルが遠くの岩陰から叫ぶ。
「……わかった。俺も真剣に戦う。それでいいな?」
「はい」
真剣な顔でうなずくとマリアは俺から距離をとった。
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