Sランクパーティーを追放された鍛冶職人、世界最強へと至る ~暇になったおっさんは気晴らしに作ったチート武器で無双する~

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第29話 オークの大群

地鳴りのような音がする方へ飛んでいくと下に砂煙が見えた。
よく目を凝らすと砂煙の中にオークの大群がいる。
そして最後尾には周りのオークより一段と大きなオークがいた。多分あれがオークキングなのだろう。


オークの群れは列をなしかなりの速さで移動している。
このまま行くとバラン村に行き当たる。


「まずいな。動きを止めないと」


とはいえオークの群れの前に下り立っても戦車に轢かれに行くようなものだ。
ダメージキャンセラーのおかげで俺は無傷で済むだろうがオークたちを止めることは出来ない。


「おい、エクスカリバー。力を貸してくれ」
『……すぅすぅ』
「こんな時に寝てんなっ」
『……ぅん。何よ、うっさいわね』
「あれを見てくれ、オークの群れが村の方に向かってるんだ」
『へ~』
「だからあの光であいつらをやっつけたいんだ」
『勝手にボタンを押せばいいでしょ。別に私を起こす必要なくない?』
なんとなく声の感じで機嫌が悪そうなのはわかる。


「ま、まあそれはそうなんだが一応な」
『太陽エネルギーは充分溜まってるはずだからあんな奴ら一発で即死よ、即死』
「ああ、わかった」
言うと俺は少し距離を取ってオークの群れの前方に着地した。


オークの群れは俺に気付いているのかいないのか動きを止める気配はまったくない。


俺はエクスカリバーを振り上げると持ち手部分の金色のボタンを押した。
その瞬間黄金色の光が天高く伸びる。
エクスカリバーの言っていた通りあふれんばかりの太陽エネルギーが膨れ上がった。
遠くから、それこそバラン村から見たら二百メートル超の巨大な光の剣が見えていることだろう。


『ねえ。どうせだから攻撃する時に技の名前でも叫べば? その方が雰囲気出るわよ』
「なんだよ、雰囲気って」
『だってあんたボタン押す以外別になんもしてないじゃん。せめてかっこよく叫べばあんたが力を使ってるように見えるでしょ』
「いいんだよ。俺はどうせかっこよくなんかないし、おっさんだし」
むしろこの年で技名をつけて叫んでいる方がイタいだろ。


『叫んだら威力上がるって言っても?』
「え……そうなのか?」
『あんたミノケンタウロス倒した時も叫んでたでしょ。それで普段以上の力が出せたのよ。大事なのは気力なのよ』
それらしいことを並べ立てるエクスカリバー。


「本当だろうな? そんなこと今までは一言も言ってなかったじゃないか」
『ほらもうオークの群れが目の前まで来てるわよ。男ならうだうだ言ってないで叫びなさいっ』


直前で言いやがって。くそっ――
「エクスカリバー!!」
俺は意を決して大声で剣の名前を叫びながらエクスカリバーを振り下ろした。


ズズズンッ。


巨大な光の剣がオークたちを一瞬で蒸発させる。
まばゆい光に飲み込まれて次々と消滅していくオークたち。




数十、数百といたオークたちだったが光がやむと跡形もなくすべて消え去っていた。


「やった、やったぞ」
『まだよ。でかいのが一匹残ってるわ』
俺は顔を上げる。
すると前方にオークキングが不気味に口角を上げつつ立っていた。


「おい、なんであいつ生きてるんだよ」
『知らないわよ。直接訊いたら』


オークキングはイノシシのような顔をこっちに向けると俺めがけて駆け出す。


早いっ!


重戦車のごとく突進してきたオークキングに俺はドォンとはね飛ばされてしまった。
勢いよくごろごろと地面を転がる。


『あんた大丈夫?』
「……ああ、問題ない」
あまりの衝撃に気を失いそうになったがエクスカリバーは放さなかった。
ダメージキャンセラーがなかったら確実に死んでたな。


『……オレのタックルをくらっても死なないとは脆い人間のくせにどういうことだ?』
オークキングは自分の頭をぺしぺし叩きながら首をかしげている。


「それはこっちのセリフだ。お前こそさっきの光を受けてなんで無事なんだ?」
『さっきの光か? あれはうまかったぞ』
「うまかった?」
わけのわからないことを言うオークキング。


『オレのスキルは魔法吸収だ。魔法を体に受けることでそのエネルギーをオレの力に変換出来るのだ』
魔法?
おい、エクスカリバーの光って魔法だったのか?
『知らないわよ。作ったあんたが知らないものを私が知るわけないでしょ』


オークキングは俺を見据える。
『貴様のおかげで数段パワーアップしたはずのオレの攻撃を受けて貴様はなぜ無事なのだ。解せん』


まいったぞ。
こいつにはエクスカリバーの光は効かないらしい。
エクスカリバーの刃はただのレプリカだしどうやって倒せばいいんだ?
なあ? エクスカリバー。
『……すぅすぅ』
寝んなっ。

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