レベリング・マーダー ~一週間に一回人を殺さないと自分が死んでしまうのでそれならいっそ勧善懲悪したいと思います~

シオヤマ琴@『最強最速』10月2日発売

第27話 潰れたトマト

「さてと、このストーカー男はどうするか」


気を失っている男を見下ろす俺に美紗ちゃんが拾った金属バットを差し出してくる。


「美紗ちゃん……」
「この人は鬼束さんを殺そうとしました。死んで当然です」
怖いくらい穏やかな表情でそう口にする。


「鬼束さんがやらないならわたしがやります」
美紗ちゃんの言葉は真実味を帯びていた。


だがもちろんそんなことを美紗ちゃんにやらせるわけにはいかない。
それにこいつが生きていたらきっと美紗ちゃんにも危険が及ぶに違いない。


「貸して。俺がやるよ」
金属バットを受け取ると、
「……んぐっ……ぐあぁっ……」
男のうめき声が聞こえてきた。
男が目を覚ましたようだ。


「美紗ちゃんは先に帰ってて。見ない方がいいから」
「いえ、わたしも最後までいます」
「……そっか。じゃあいくよ……」
俺は金属バットを両手で振りかぶった。


「せーのっ!」
そして男の頭に向かって全力で振り下ろす。


ドゴッ!
ドゴッ!
ドゴッ!


返り血を浴びながら何度も何度も振り下ろす。


ドゴッ!
ドゴッ!
 ・
 ・
 ・


気付けばコンクリートの道路上には床に落としたトマトのようにぐちゃぐちゃになった男の脳みそが飛び散っていた。


俺は血まみれの金属バットを男の体の上に投げ捨てた。




ててててってってってーん!


頭の中に効果音が鳴り響く。


『鬼束ヤマトは鬼頭純を殺したことでレベルが1上がりました』


『最大HPが1、最大MPが2、ちからが1、まもりが1、すばやさが0上がりました』


「美紗ちゃん終わったよ」
「はい」


美紗ちゃんとじっと目を合わせそれから男の方に向き直ると男の死体は既に消えていてアパートの鍵だけが残っていた。


「帰ろうか」
「はい」
ゆっくりとそれを拾うと二人でその場を立ち去る。




道すがら我ながら残虐な殺し方をしたな、と思うも後悔の念も罪悪感も一切なかった。
それどころか俺たちは男の死を通して一段と絆が深まったような気さえしていた。

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