《完結》転生魔王「人類支配しろなんて言ってないよね?」魔族「申し訳ありませんでした!」

執筆用bot E-021番 

13.オレを殺した犯人

 ユイブを王都へ連れ帰ることによって、人間と魔族の平和条約は修復されることになった。


 勇者は、勇者という立場を罷免させられた。


「ヤッパリお前だったか」


 王都。城の中庭にて、オレはひとりの魔族と出会っていた。


 上半身が鳥。下半身が人の姿をした魔族。カイネルである。《獄魔刀》を向けると、見事に反応した。オレを殺した犯人だ。


「どうして私だと、わかったのです」
 と、カイネルは尋ねてきた。


「アルノルトもユイブも、伝令にウソの情報をつかまされたと言っていた。フィリズマが送った使者だ。しかしフィリズマはそんなこと記憶にないと言っていた。使者そのものは送っているのだ。なら、送った使者がウソを吐いていると考えるのが普通だろう」


 この《獄魔刀》は使い手を覚えている。しかしそれは魔族長である3人も知っていることなのだ。だったらオレを殺す凶器として、この剣を選ぶとは考えにくい。
 魔族長以下の者が犯人である可能性のほうが高かった。


「そうでしたか」
 観念したようにカイネルはうなだれた。


「どうしてオレを殺した? そして今回もアルノルトやユイブの手で、オレを殺させようとしたな」


「ただの嫉妬です。オレはフィリズマさまを好きですが、フィリズマさまは魔王さまのほうを向いてばかりいますから」


「オレを殺せば、すこしはフィリズマに振り返ってもらえると思ったか」


「はい」


「そうか。まぁ良い。今回のことは不問にする。反省してこれからもフィリズマに仕えることだ」


「しかし、魔王さまを殺害しておいて不問にするというのは、いかがなものかと……」


「愚策だろう。だが、オレは痛いことや血を見るのは好きではない。だから平和条約も結んだのだ」


「しかし……」


「それにオレは、もう魔王として君臨するつもりもないからな」


「それはどういう意味でしょう?」


「もう良い。行け」


「はッ」


 カイネルは一度その場にひざまずくと、空へと飛び立った。カイネルと入れ替わるようにフィリズマとアルノルトとユイブがやって来た。


「魔王さま。こんなところで、どうされたのです?」


「いや。何でもない。それより平和条約が無事に修復されたのだ。お前たちは魔王城に戻って、魔族たちをまとめろ」


「魔王さまは、いかがされるのですか?」


「見ての通り、オレは人の姿をしているからな。人として生きてゆこうと思う。人間の両親だっていることだ」


「しかし、それではこれから、ずっと会えないのではありませんか?」


「そんなことはない。オレは外交官だからな。魔族との交渉という名目で、何度か会いに行くさ」


「そうですか」


「フィリズマ、アルノルト、ユイブ」


 3人の名前を呼ぶと、3人とも姿勢を正した。


「なんでしょうか?」
 と、フィリズマが代表して尋ねてきた。


「これからお前たち3人の魔族長が、魔王として魔族たちを仕切ってくれ。くれぐれも、また戦争を起こしたりしないように」


「しかし、それでは……魔王さまは?」


「オレはもう隠居だ。さっきも言ったように、人として暮らしていく」


「そんなぁ」


 3人はさめざめと泣きはじめたし、オレを引き留めようとしたが、オレは意思を変えるつもりはなかった。


 そのときだ。
「やーい。聞いちまった」
 と、穀物庫の裏から飛び出してくる者がいた。


「勇者ですか。どうしましたか、こんなところで」
 と、オレは尋ねた。


 いや。罷免されているから、もう勇者ではなかったか。本名を知らない。他に呼びようもない。


「聞いちまったぜ。てめェ、最初から魔族とグルだったんだな。どうりで交渉がアッサリと成立すると思ってたぜ。言いふらしてやるからな。戦争だ。戦争。もう一度、戦争だ!」
 と、勇者は城のほうに走り去って行った。


「殺しますか?」
 と、フィリズマとアルノルトとユイブの3人が、殺気だった様相で尋ねてきた。


「いいや。気にすることはないさ」

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