《完結》転生魔王「人類支配しろなんて言ってないよね?」魔族「申し訳ありませんでした!」
9.フィリズマとアルノルト
タメーリク砦には、軍務執政官のフルバスが捕えられていた。
他にも数人の騎士がとらえられていたので、解放してやった。
ふたたび王都に戻ることにした。捕虜を連れ帰るためでもあり、平和条約の修復が望めそうだという旨を伝えるためだ。
「いやぁ。助かったよ。エドガーくん」
王都への街道を歩いていると、フルバスがそう声をかけてきた。クマのような図体の男である。顔のほとんどが、真っ黒いヒゲに覆われている。目だけは子供みたいにキラキラ輝いているのが見て取れる。
「助けになって何よりです」
「すこし前に勇者が援護に来てくれたのだがね。やはり魔族は強いね。あの勇者は見事に敗北していた」
「勇者はどこへ?」
「負けて、逃げたのだろう」
「そうでしたか」
「しかしどうしてエドガーくんが、このような役回りをしているのかね? 君はロドリゲス家の大事な跡取りだろう」
と、フルバスはヒゲをナでながらそう言った。
「まぁ、そうなんですが、成り行き上です」
フィリズマのところへ行ったのは、もちろん自己判断だ。両親には言っていない。もちろん中身が魔王だということも打ち明けてはいない。
「なににせよ、助かったよ。こんなに立派な子息がいるだなんて、ロドリゲス家は安泰だな」
と、フルバスが、大きな手でオレの背中をたたいてきた。前につんのめってしまう。
「ありがとうございます」
「これから人と魔族は、ふたたび平和条約を結び直す方針なのだろうか?」
「ええ」
「是非ともそうなってもらいたいものだな。魔族と戦うのが愚策であることは、前線にいる者がイチバンよくわかっているのだ。あんなのに勝てるわけがない」
そりゃそうだろう。
魔族という種族は、基本的に人よりも、魔力に優れた者が多い。マトモにやりあえば、魔族に分があるのだ。
「平和になれば、何よりだと思っています」
「そうだな。オレもそう思っている」
王都に戻ると、すでに日が暮れていた。タメーリク砦と王都を往復するのは、時間がかかる。
王都の城門棟の前には、内務執政官のロウが待っていた。
「おう。友よ。無事であったか」
「おう。エドガーくんが来てくれていなければ、危なかったところだ」
と、フルバスと言葉を交わしていた。
フルバスがカラダが大きいのにたいして、ロウは歳のわりには背骨が曲がっている。
この正反対なふたりが、国を支える2柱の執政官なのだ。
「ロウ執政官。約束通り、アルノルトの率いる魔族とも、平和条約の修復を約束させました」
「見事な手際だな。まさか、こんなに上手くいくとは思わなかった」
「このままユイブとの交渉にも向かいたいと思います」
「いや。すこし待て。もう夜も遅いのだ。夜道は危険だ。ユイブの居所もわかってはいない」
「あぁ。そうですね」
夜を行くのが危険だという発想がオレにはなかった。
人なら、そう考えるのだろう。あまり強行して怪しまれるのは避けたい。
「とりあえず、フィリズマ殿と、アルノルト殿には、宿を用意させてもらった。エドガーも一度、家に帰られると良い。両親が探しておられたぞ」
「そうでしたか。わかりました」
フィリズマとアルノルトは、どうしてもオレと一緒にいたいと言い張っていた。
説得するのに手間取った。平和条約の件よりも手間取った。どうにか言い聞かせて、2人をロウにあずけることにした。
他にも数人の騎士がとらえられていたので、解放してやった。
ふたたび王都に戻ることにした。捕虜を連れ帰るためでもあり、平和条約の修復が望めそうだという旨を伝えるためだ。
「いやぁ。助かったよ。エドガーくん」
王都への街道を歩いていると、フルバスがそう声をかけてきた。クマのような図体の男である。顔のほとんどが、真っ黒いヒゲに覆われている。目だけは子供みたいにキラキラ輝いているのが見て取れる。
「助けになって何よりです」
「すこし前に勇者が援護に来てくれたのだがね。やはり魔族は強いね。あの勇者は見事に敗北していた」
「勇者はどこへ?」
「負けて、逃げたのだろう」
「そうでしたか」
「しかしどうしてエドガーくんが、このような役回りをしているのかね? 君はロドリゲス家の大事な跡取りだろう」
と、フルバスはヒゲをナでながらそう言った。
「まぁ、そうなんですが、成り行き上です」
フィリズマのところへ行ったのは、もちろん自己判断だ。両親には言っていない。もちろん中身が魔王だということも打ち明けてはいない。
「なににせよ、助かったよ。こんなに立派な子息がいるだなんて、ロドリゲス家は安泰だな」
と、フルバスが、大きな手でオレの背中をたたいてきた。前につんのめってしまう。
「ありがとうございます」
「これから人と魔族は、ふたたび平和条約を結び直す方針なのだろうか?」
「ええ」
「是非ともそうなってもらいたいものだな。魔族と戦うのが愚策であることは、前線にいる者がイチバンよくわかっているのだ。あんなのに勝てるわけがない」
そりゃそうだろう。
魔族という種族は、基本的に人よりも、魔力に優れた者が多い。マトモにやりあえば、魔族に分があるのだ。
「平和になれば、何よりだと思っています」
「そうだな。オレもそう思っている」
王都に戻ると、すでに日が暮れていた。タメーリク砦と王都を往復するのは、時間がかかる。
王都の城門棟の前には、内務執政官のロウが待っていた。
「おう。友よ。無事であったか」
「おう。エドガーくんが来てくれていなければ、危なかったところだ」
と、フルバスと言葉を交わしていた。
フルバスがカラダが大きいのにたいして、ロウは歳のわりには背骨が曲がっている。
この正反対なふたりが、国を支える2柱の執政官なのだ。
「ロウ執政官。約束通り、アルノルトの率いる魔族とも、平和条約の修復を約束させました」
「見事な手際だな。まさか、こんなに上手くいくとは思わなかった」
「このままユイブとの交渉にも向かいたいと思います」
「いや。すこし待て。もう夜も遅いのだ。夜道は危険だ。ユイブの居所もわかってはいない」
「あぁ。そうですね」
夜を行くのが危険だという発想がオレにはなかった。
人なら、そう考えるのだろう。あまり強行して怪しまれるのは避けたい。
「とりあえず、フィリズマ殿と、アルノルト殿には、宿を用意させてもらった。エドガーも一度、家に帰られると良い。両親が探しておられたぞ」
「そうでしたか。わかりました」
フィリズマとアルノルトは、どうしてもオレと一緒にいたいと言い張っていた。
説得するのに手間取った。平和条約の件よりも手間取った。どうにか言い聞かせて、2人をロウにあずけることにした。
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