亡国の黒騎士と呼ばれた男の旅路は闇の女王と共に
第77話 王国の裏切り者
新たに仲間が増えたところで次なる目標を掲げたが、そのために俺たちが目指すのは左側の最前線だ。
幸いなことに冒険者たちの多くは近接、中距離戦を得意としていたので、その者らを外周に並べて複数の細い三角形が出来るよう部隊の人員を配置した。
味方同士の感覚を広く保ち、全力で駆けることが出来る突破に有利な鋭角くさび型陣形。
これで一直線に目的の場所を目指す。
だがその道程はこちらが思っている以上に順調だった。
その理由は、初手でデリザイトとレクトニオが起こした混乱以降、戦線が形成されたからだろう。
運河から岩壁に至るまで続く兵士による長い列。
こんなものが行く手を塞いでいれば、当然ながら機動力が乏しい大きな隊ほど通過しにくくなる。
だから進攻の途中で相手にしているのは、王国軍の目を盗んで間を縫ってきたような小規模な集団だ。
おかげで今の戦力ならば小細工なしに正面からぶつかっても撃破できる。
こうして強化された頼もしい部隊のおかげで随分とゆとりが出来たことだし、今のうちに皆の現状を整理しておくとするか。
まずマリメアとスズトラは部隊の輪に入ってはいないが、常に直視できるくらいの距離で自由に行動している。
というより、彼女らの場合は縛りつけて連携させる方が間違いと言えよう。
ティターニア様はクレフやドゥエインが率いる本隊に帯同していて、シェーラたち「コルウス」は、各メンバーが様々な箇所に点在しつつ戦闘の支援をしているはず。
「はず」という曖昧な言葉を使ったのは、彼女らの姿をはっきりと捉えられていないからだ。
ここまで来る途中に何度か繰り広げた戦闘において共通することだが、ある程度の数による混戦になった時、敵の背後にゆらっとした影のようなものが現れた。
初めに見た時は何か仕掛けてくるのかと警戒したが、直後に相手は急所を裂かれて絶命してしまったのだ。
すると地面を赤く染めながら倒れ込む兵士に目を奪われた一瞬のうちに、直前に見た影は何処かへ消えてしまっていた。
この一連の流れが自分の中のアサシンのイメージそのものだったから、そう仮定したのだが。
安直だけどこちらにとって有益であるなら、とりあえず正解でも不正解でもよしとしておこう。
さて残りはデリザイトとレクトニオとキャローナか。
3人とも目立つけど目視では簡単に見つけられそうにもないのが難点だ。
戦場で長いこと目移りさせれば、大いなる危険を伴う恐れがあるからな。
「もしかして仲間の動向を知りたいのか? だったら俺が確認してやるよ。どんな奴だ?」
すぐ後ろについていたスコットの申し出は意味が分からないものだったが、とりあえず魔族と金属のゴーレムとセイバートゥース隊のことを伝えてみる。
するとそれを聞いた本人は、腰の道具入れから小さな笛を取り出して吹き始めた。
長い音と短い音を組み合わせて、まるで何かの合図のように。
そして徐ろに自分の手で左目を覆ったかと思えば、次に口を開くまでにそれほど時間を費やすことはなかった。
「よし、分かったぞ。T-フレームの部隊は今まさに後方から上がってきている。おそらく本腰を入れる前に補給や再調整で拠点へ戻ってたんだろう。それと奇妙なゴーレムは戦線の中央で足止めを食らってるな。相手は……鉄の豚のリーダー、金剛級冒険者じゃねぇか。いつの間にこんな前まで移動してきたんだ? んで、最後に魔族の方だけど、こいつは既に一部の友軍と共に敵陣で戦っている。両軍がぶつかって戦線が形成されるよりも早く風穴をこじ開けたようだ。とにかく、この魔族を止めるか最前線へ加勢しに行くかの判断の迷いが、敵さんの足を鈍らせている感じか」
全ての説明を終えた後に、スコットは眉をひそめた。
つい俺が疑いの眼差しを向けてしまったせいだろう。
だって何やら意味深な仕草を始めたと思ったら、ほんの僅かな時間で指定した仲間の位置を特定するなんて。
ただそれっぽいことを言ってるだけなんじゃないのか? なんて目をしていたのかもしれない。
「ほら、あれだよあれ」
勝手な容疑をかけられた冒険者は、そう言って上空を指さした。
誘導されて見上げてみれば、そこには旋回しつつこの部隊についてくる1羽の鳥が。
「あいつは俺が手懐けた鷲なんだが、互いに魔力を繋げることで視界を共有したんだ。偵察や捜索においてはこれ以上なく便利な能力だぜ。もっとも専門職のクリーチャーハンドラーと比較すれば生き物を使って出来ることは少ないけどな」
なるほど。
ヴァロックス海域の調査を除けば、これまでスカウトと組む機会がなかったから初めて知ったな。
ハンター系のスキルを得意とする冒険者をパーティにひとりは入れたがる理由がよく分かった。
戦闘において情報は何物にも代えがたい武器になるのだから。
「あぁ、それと……だな。ついでに嫌なもんも見ちまったんだけど、聞く心構えは出来てるか?」
そんな言われ方をしたら非常に怖いのだが。
ただタイミングを引き伸ばしたからといって状況が好転するわけでもないんだし、寧ろ早く知れた方がその分だけ考える時間も作れるというものか。
「実は俺らが進んでいる先の敵陣側に『皇帝の獅子』がいる。そしてその右斜め後方には戦場をあちこち動き回る聖魔導士の姿もあった。ふたりとも有名人だから顔を見ただけですぐに分かったぜ」
確かにそれは気軽に受け止められない報告だな。
完全に想定外の事態だ。
王国軍の斥候が作成した敵の配置図を開戦前に記憶しておいたが、各レギオンは左右と中央に分かれて中衛のラインを守っていたはずだ。
皇帝の獅子だけでなく鉄の豚も然り。
おそらく金剛級冒険者というのは実力と実績を評価されているだけに、雇われの身でありながらある程度の勝手を許されているのだろう。
いや、寧ろ軍という統制された組織に当てはめようとすると、かえって歯車が円滑に回らなくなるのか。
どうやら俺はそこらへんを完全に見誤っていた。
「どうする? 今からでも進路の変更をするか?」
それはダメだ。
たとえ自分たちが接触を回避できたとしても、結局のところレギオンをどうにか対処しないと作戦の意味はない。
ならまずは相手を知ることからだ。
そうでなければ考えをまとめられないからな。
「なぁ、スコット。『皇帝の獅子』のことで何か知ってることがあれば概要を教えてくれないか」
「そうは言ってもな。白金級の冒険者から見ても金剛級は別格ってくらいの存在なんだから、面識なんて全くない俺じゃ大したことは教えられないぜ」
「かまわない。今はほんの些細な情報でも貴重だからな」
「えっと、イベスタル王国の出身で名前はアルバーン=イラディエル。自分を絶対的な支配者だと思ってる傲慢な奴だけど、圧倒的な力への狂信者だったり、勝ち馬に乗っかりたい奴だったり、とにかく他のレギオンと比べても配下の規模が段違いなんだ。確か歩兵大隊と同じ位とか。アルバーン個人も等級に見合った才腕を持ってるが、何よりも脅威なのが数という明快な力と言われている」
不運にも最も厄介な相手みたいだ。
これから王国軍が実行に移す策において肝となるのは速さとタイミングなのだから、障害を迅速に排除することが何より重要なのに。
そこまで状況が変化しているなら圧倒的な火力での即時殲滅が必要になってくるが、この中でそれが可能なのは……
俺は視線を傍にいる闇の女王に向けると、すぐに首を振って頭の中に浮かんだ考えを振り払う。
スクレナのことは選択肢から除外しろ。
いると思うからこそ、すぐに近道をしようとするんだ。
目の前に並べられた欠片をもっとよく見なければ。
ひとつを手に取ったところで意味はなくとも、それらを繋ぎ合わせればきっと1枚の絵が完成するはず。
傲慢な男、絶対的な支配者、大隊規模のレギオン、徘徊する聖魔導士、スピード勝負――
頭の中で何度もこれらを組んではバラしてを繰り返した後、唐突にそのほとんどがカチッと噛み合う音が聞こえた気がした。
全ての条件を満たそうとするならば、たぶんこれが最も確実かもしれない。
実行するにはまず前提として必要なことがあるのだが、これは魔術に精通しているスクレナに質問してみるのが手っ取り早いか。
「なぁ、マリメアが使う魔力感知と同じような能力って、魔術士は持ってたりするのか?」
「そうだな……術者から放たれて間もない魔力の残影のようなものであるなら、形のないものでも視覚でとらえることは可能だ。マリメアのものに比べれば近しいとも言えぬ技能ではあるが、魔術を学ぶ者なら基礎として身につけていることだ」
それだけ分かれば次の段階に移行できるな。
その為にはスコット、お前にもうひと仕事してもらうぞ。
「おう、なんだ? うん……あぁ……えっ!?」
俺の頼みが全くの予想外だったのだろう。
聞いた本人は驚きの声と共に戸惑いの表情を見せた。
「いや、だって……それ本気なのか?」
もちろん突拍子もないことを言ってるのは承知している。
でもこれ自体は難しい要求ではないはずだし、何より下地としてすごく重要になってくるんだ。
「まぁ、今の指揮権はエルトにあるし、やれと言われりゃやるけどさ。余計に危なくなっても知らないぜ」
まだ疑念を拭えない様子ではあるものの、どうやらスコットは実行に移してくれそうだな。
連携をとるのに他のみんなにも説明をしなければならないが、人数が多くないだけに伝えるのも楽だからその点は助かった。
それにマリメアとスズトラにも声をかけておかないと。
今回限りは2人の協力が不可欠なのだから。
そういうわけでふと周囲を見回してみた時だった。
思考を巡らせることに集中していたせいで今更となったが、随分と光景が変わっていることに気がついた。
道中でも散々目にしてきたはずなのに、それでも地面に横たわる兵士の数がより一層多い。
しかも重苦しい空気に加えて、充満する血の臭い。
そして見えてきたのは密集するヒトによって作られた、平原を分断するほどに長い壁だ。
デリザイトたちにかなり遅れを取ったが、ようやく到達することが出来た。
ここが最前線と見て間違いないだろう。
それにしても、本当の激戦とはこういうものか。
これまでの両軍は基本的に散隊戦を強いられていた。
なぜなら同じ部隊でも複数のグループに分散して進軍しなければ、もし魔力砲が直撃した場合により被害が大きくなるからだ。
だからこそ、いざ接敵した時には分隊や小隊との戦闘が多く、最大でも先程スクレナが一掃した中隊であった。
それもその1回きり。
だがここに至っては部隊という括りなど全く意味をなさない。
とにかくひたすらに対面する敵と刃を交え、打ち倒したら息付く暇もなく次の相手が現れるという繰り返し。
きっと気が狂うという状態に陥る暇さえないくらいに、意識の全ては目の前のものだけに集中されていることだろう。
そんな無法地帯とも言える場所に、いよいよ俺たちも加勢する。
ここで2人の闘将という大きな力が加われば、左端の均衡は早く崩せるかもしれない。
だけどそれではダメなんだ。
この作戦を完遂しようとするならば、全ての列が足並みを揃えることが大切になってくる。
それを理解している王国兵たちは、攻めあぐねている箇所や、逆に押されている箇所へ次々と援護に駆けつける。
その様子を見て開戦直後に感じたことが改めて頭に浮かんだ。
確かにドゥエインが言っていた通り、王国は兵器の研究と発展において他国よりも遅れを取っている。
しかし言い換えるなら、己が力と技を磨くしかない環境が、歩兵戦や騎兵戦のスペシャリストを多く育ててきた。
デリザイトたちの牽制が帝国兵の結集を妨げているだけでなく、個々の戦闘力と団結力の差が少しずつ敵を後退させていく。
その間に俺は自分の立ち位置の反対側となる運河の方に目を向けた。
するとこちらが目的の地点へにじみ寄るごとに、帝国陣営の左翼側、すなわち運河のある方には戦力の厚みが増してくる。
やっぱりそうだったか……
自分の中の疑惑がようやく確信に変わったというのに、心は晴れやかになるどころか翳りゆく。
クレフの気持ちを汲むと尚更にだ。
当然そんな感傷などは関係なく戦況は刻一刻と変化していき、王国軍の両翼と中央からは赤い発煙弾が立ち上る。
そう、これが合図となっているんだ。
最前線で戦っている全員が、作戦を次に移行させるための地点に到達したという。
それからすぐにまた運河の方を確認すると、王都の方から3隻の船が縦列になって向かって来ているのが見えた。
さすが理想のタイミングで動いてくれる。
これで俺たちの狙い通り、作戦を成功させる準備は整った。
この広大な平原の中にある、ほんの僅かな特殊な地形。
王国軍は戦の流れを大きく変えられるとすればここだろうと考えていた。
選択は大きく分けてふたつ。
崩れた岩壁を利用するか、運河を利用するかだ。
結論として事前に出した答えは後者であった。
戦線のさらに延長上となる水の路に船を走らせ、自陣を通り過ぎて敵陣の方へと接舷させる。
その中から搭乗していた援軍の兵士が一斉に飛び出し、側面を突いて一気に駆け上がるという手筈になっていた。
ところが船が停泊した付近の陸地には、既に多数の帝国兵たちが待ち構えている。
まるでこっちに援軍が来ることを初めから知っていたと言わんばかりに。
いや、実際にこちらの作戦は漏れていたのだろう。
王国の裏切り者の手によって。
その人物とは……
首席交渉官のジャーメイン・ビーチャムだ。
俺はずっとあの人に疑いの目を向けていた。
いつからかと言えば、最初に会った時からだった。
いや、正確にはその時はまだ違和感という程度ではあったけど。
その理由としては、クレフから俺が黒騎士だと聞かされた時、ジャーメインは第一声でこう言ったからだ。
『お二人のご高名はかねがね』と。
聞いた感じでは何気ない社交辞令のようだが、普通ならこんな言葉が出てくるのはあり得ない。
なぜなら世間に広まっている黒騎士の目撃談というのは、漆黒の甲冑をまとい、身の丈程の大剣を背負った男であるというもの。
その中には魔術士の女の話など一切出てこないのだ。
つまりこの発言が何を意味するかというと、あの日、あの時点で、ジャーメインは全てを知っていたというわけになる。
目の前にいる銀髪の女性が闇の女王であることも、その人物の特殊な付与魔術によってパートナーと融合した姿が黒騎士であることも。
もし無知のまま俺たちとの邂逅を果たしていれば、こうして初手でしくじることもなかったのに。
皮肉にも完璧に仕事をやり切ろうとする交渉官の入念さが、意図せず自分の首を絞める結果になったみたいだ。
ならばそれらの情報はどこから得たのか。
クレフやドゥエインが俺の正体を知ってもなお、スクレナの方には気づかなかったことから、王国のお偉方にとっては既知の事実ではなかった。
そうなると外部から入手したのだろう。
最も考えられるのは、帝国の宰相ルーチェスやその周辺の人物。
しかしこれだけではあくまで予想の域は脱していない。
そこに来て先日の剣聖による訪問での出来事。
その時のイグレッドは思惑が外れた上に、恥辱にまみれたおかげでかなり殺気立っていた。
そんな相手の去り際に、追い打ちをかけるようジャーメインが放った一言がこうだ。
『我々の決死の覚悟は大河の流れの如く』
素直にそのまま受け止めれば、単に不退転の決意を表明したに過ぎない。
だが煽り立てられる形となったにも関わらず、剣聖はあまりにも大人しすぎるではないか。
だから元より首席交渉官に嫌疑をかけていた点も合わせて、俺はこの言葉には真意があるのではと探ってみることにした。
そうなると王国内での協力者が必要になってくるのだが……
そこでクレフを選択するのは適切ではない。
確かに俺のことを慕ってくれてはいたけれども、ジャーメインは先代の頃から仕えている祖父のような存在とも言っていた。
国を治める立場ではあれど本質はまだ少年なのだし、動揺によって冷静な判断が出来なくなる場合だってあった。
ではパティは?
失礼ながら相手の地位を考慮すれば、貴族の令嬢とはいえ彼女の政治的立場ではまるで弱い。
上から降りてくる情報量だって心許ないのも懸念するところだ。
ならば残るはドゥエインというわけだが、消去法でなくとも打ち明けるなら必然的に彼になるだろう。
大事な局面においてはあまり私情を挟まない性格も然ることながら、山中で出会った際にスクレナが「コウモリ」と言ってスパイの存在をほのめかした時だった。
ドゥエインが反応して立ち止まったのは全容を掴めていなかったまでも、きっと自分の周囲に何かしらの影を感じてはいたのだと思う。
そこで俺は白羽の矢を立てた近衛隊長にそれとなく、「河を利用した重要な戦術があるのでは?」なんて聞いてみた。
すると後に伝えるつもりだったと驚かれてから、輸送と交通に使う運河を用いての奇襲が今回の戦の要なのだと知らされる。
これで予測はより確信へと近づいた。
あれは剣聖への情報提供であり、イグレッドが訪問したもうひとつの目的はそれを受け取るためである。
つまりジャーメインは何かしらの見返りを求めて、自国を売り渡した帝国のスパイだったのだ――
というシンプルな話ならまだマシなんだがな。
どうもこの戦争には何か裏がありそうな気がする。
なぜならもし純粋に帝国のために動いているというのなら、表向きでは尽力しつつも、あの手この手を駆使して俺の参戦を阻止するのが当然だ。
王族から身内のように扱われていたあの老人なら、賢人たちの中でも影響力は頭ひとつ抜けているはず。
あれだけ意見が綺麗に割れていた討論ならば、尚のこと簡単にこじらせることは出来たろうに。
ではジャーメインは一体何をしたかったのか。
これらを踏まえた上で最も可能性があるのは、数で優劣がハッキリしてる両国の戦力差を埋めること。
互いに潰し合わせて消耗させるのが望みだと考えられる。
すなわち帝国との結託すらも、また別の目的のための手段に過ぎなかったということだ。
なんだろう……
今回の戦争、単に取った取られたの国盗り合戦ではないような気がする。
第3の見えない脅威が暗躍しているという気持ち悪さがどうしても拭えない。
いいや、今は忘れるんだ。
いつまでも不明瞭なものに惑わされて、目の前の石につまづいたら元も子もない。
それに分からないのなら後で直接本人に聞けばいいからな。
実はさっきの発煙弾は戦場にいる兵士だけでなく、王都にいる近衛兵に向けて撃った側面もある。
青色なら俺の思い過ごし、赤色ならジャーメインがクロだと知らせるために。
おそらく今頃は身柄を拘束した上で、住居などの強制捜査が始まっていることだろう。
さて、裏切り者の対処についてはあっちに任せるとして、こちらはこちらできっちりと仕事をこなさないと。
この作戦はようやくここからが本番なのだ。
あれから俺とドゥエインは話し合いの末に共通の結論を導き出していた。
情報の漏洩が分かっているのなら、それを逆手に取って秘密裏に戦術を変更すればいいと。
各方面への伝達が直前になるため、もし不備が発生すれば危険を伴うが、そのリスクの分だけの効果は見込めるはず。
それを完遂すべく、王国兵たちはそれぞれに与えられた次の段階へと移る。
弓兵は火の属性矢を到着したばかりの船に向けて一斉に放ち、障壁の生成が可能な魔術士は互いに重ねて展開した。
実はこの船、ハズレどころか大ハズレ。
中に入っているのは援軍の兵士などではない。
短い距離ではあるが自動で航行するように細工されており、表面には油を撒き、密封した容れ物に爆薬を詰めて甲板や船内に置いておいたのだ。
聞いていた内容と大幅に異なることで、混乱して足を止める敵兵たち。
勢いよく燃え広がる炎を見て嫌な気配を感じたのか、中には任務を放棄して引き返す者もいたがもう遅い。
発生した爆轟だけでなく、燃焼した木材の破片が衝撃波によって飛ばされてきたことで、相手の陣地には甚大な被害がもたらされた。
既に王国軍の行動が筒抜けになっているという思い込みがあったからこそ、容易に懐へ船を招き入れ、必要以上に多くの兵士が無警戒に近づいて行ったのだ。
戦場においては禁忌となる気の緩みの報いは、取り返しのつかないほどに重かろう。
だがしかし、これくらいで狼狽されてもらっては困るな。
こちらが演出した舞台は、まだもう一幕あるのだから。
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