両親に殺された俺は異世界に転生して覚醒する~未来の俺は世界最強になっていたのでちょっと故郷を滅ぼすことにしました~
推理
「見事なまでに粉々だな」
アルテアが粉々に砕け散った魔道具の破片を手に取った。美しい稜線を描く額に深い皺が刻まれている。
「一応聞いておくけど、経年劣化によって自然に壊れた可能性はあると思うか?」
「あり得ません」
ターニャが厳しく断じる。
氷のような不変の美貌にわずかに険しさが混じっている。
「理由は?」
「この魔道具はアーカディア様が造られたものです。多くの魔道具の性能はそれを造ったものの実力に比例します。すぐ破損するなどあり得ないでしょう」
「だよな」
聞くだけ聞いてみただけだというようにアルテアが同意する。
竜はこの世界において伝承に伝わる始祖吸血鬼や神狼と並ぶ最強種の一角とされている。その竜種であるアーカディアが造ったものがこうも容易に壊れるとは思えなかった。
「……魔獣?」
白髪の少女が首を傾げて、まだあり得る可能性をぽつり。
「それもないだろうな」
今度はアルテアが即座に否定。
「手前味噌な話だが、ここには俺が隠蔽の魔法をかけていた。魔獣に見破れるとも思えないし、魔獣なら魔道具を壊した後にわざわざ埋め直すなんていう小細工はしないだろう」
掘り返した木の根元に目をやりながら滔々と話す。
その説明を聞いてイーリスが小さな唸り声を上げて考え込むような素振りを見せた。
何か重要なことに気づいたのかもしれない。
そう思ったアルテアはイーリスに問いかける。
「どうした、何か気づいたか?」
「てまえ……み……?って、なに」
予想外にどうでもいい質問に力が抜けて思わずがくっと前のめりなるアルテア。
それでも真剣に少女の問いかけに答える。
「手前味噌というのは、まあ、自分で自分を褒める時や自分のことを自慢する時に使う言葉だ」
「……なるほど」
いかにも納得したように少女がこくんと大きく頷いて、アルテアの方にずいっと体を寄せる。まるで小動物さながらの俊敏さでアルテアの懐に潜り込み、さっと手を持ち上げて彼の頭の上へぽんと置いて撫で始める。密着しているせいで少女の体温を直に感じた。
「……何をしてるんだ」
突然の奇行に僅かに動揺しつつもそれをおくびにも出さず目の前の少女に問う。
「褒めてる……」
簡潔かつ明快な回答。だが意図はわからない。
「なんで?」
「テマエミソは、自分で褒める。アルは、褒められたい。から……私が褒める」
「なるほど」
今度はアルテアが大きく頷く。
何かを放棄したような若干投げやりな声。
「ありがとう。俺はとても満足したよ、充分だ」
「そう?いつでも、言って……ね?」
感謝を告げるとイーリスが名残惜しそうにしながらそっと手を退けて身を引いた。
それまで感じていた体の温もりも一緒に去っていったが、不思議と頭にだけはまだ温もりが残っているような気がした。
何気なく自分の手を頭に乗せる。余韻を確かめるような手つきでポンポンと数回自分の頭を叩いた。
「もしや、まだ物足りないのでは?」
横からからかうような声が飛んでくる。
不敵な笑みを浮かべるターニャを見て、しまったとばかりに顔をしかめるアルテア。
イーリスが俄然やる気に満ちる様子。
「……足りない?」
「いや、充分だ」
アルテアはぴしゃりと言って咳払いを挟む。
「話を戻そう」
緩んだ空気を引き締めるためのやや厳かな声音で宣言する。
「魔道具が壊れた。自壊ではなく、何者かに破壊されていたんだ。そして破壊したあとに小細工をしていることからその何者かは魔獣の類ではなく、ある程度の知能を持った存在ということになる」
「そうなると可能性が高いのは人間ですね。まあ当然と言えば当然の結論ですが……」
最初からわかってはいたが認めたくなかった。そんな様子でターニャが言った。
それはアルテアも同じ気持ちだった。
村人にしろ外部の者にしろ、悪意を持った人物が近くに潜んでいるというのは気分が良くない。仮にそれが自分たちによく知るもにだったとすれば尚更だ。
「壊して……意味ある……の?」
少女の不思議そうな面持ち。
思わず何でも教えてあげたくなりそうな程の可憐さだった。
「探そうと思えばいくらでも探せるな。例えば……実は村が嫌いだから騒ぎを起こして、めちゃくちゃにしたいとか。騒ぎを起こしてその間に魔鉱石を盗み出すつもりだとかな。この村……というか王国じたいが少し特殊だから他にも理由は色々思いつくけどど、何にせよ動機はこの際どうでもいい。まずは犯人を捕まえることだ」
「どうやって見つける?」
最もな疑問を抱くイーリスにターニャが鷹揚に答える。
まるで生徒がわからないところを優しく教える先生のよう。
「痕跡を探しましょう。足跡、魔力の残滓、髪の毛、その他の残留物。何かしらの痕跡が残っているはずです」
「そうだな、少し手分けして探してみるか。イーリスは俺と行こう」
アルテアが同意して少女の方に足をすすめた矢先。
カッと白い閃光が空気を切り裂いて森のどこかで爆音が響き、灼熱のうねりが三人を襲った。
アルテアが粉々に砕け散った魔道具の破片を手に取った。美しい稜線を描く額に深い皺が刻まれている。
「一応聞いておくけど、経年劣化によって自然に壊れた可能性はあると思うか?」
「あり得ません」
ターニャが厳しく断じる。
氷のような不変の美貌にわずかに険しさが混じっている。
「理由は?」
「この魔道具はアーカディア様が造られたものです。多くの魔道具の性能はそれを造ったものの実力に比例します。すぐ破損するなどあり得ないでしょう」
「だよな」
聞くだけ聞いてみただけだというようにアルテアが同意する。
竜はこの世界において伝承に伝わる始祖吸血鬼や神狼と並ぶ最強種の一角とされている。その竜種であるアーカディアが造ったものがこうも容易に壊れるとは思えなかった。
「……魔獣?」
白髪の少女が首を傾げて、まだあり得る可能性をぽつり。
「それもないだろうな」
今度はアルテアが即座に否定。
「手前味噌な話だが、ここには俺が隠蔽の魔法をかけていた。魔獣に見破れるとも思えないし、魔獣なら魔道具を壊した後にわざわざ埋め直すなんていう小細工はしないだろう」
掘り返した木の根元に目をやりながら滔々と話す。
その説明を聞いてイーリスが小さな唸り声を上げて考え込むような素振りを見せた。
何か重要なことに気づいたのかもしれない。
そう思ったアルテアはイーリスに問いかける。
「どうした、何か気づいたか?」
「てまえ……み……?って、なに」
予想外にどうでもいい質問に力が抜けて思わずがくっと前のめりなるアルテア。
それでも真剣に少女の問いかけに答える。
「手前味噌というのは、まあ、自分で自分を褒める時や自分のことを自慢する時に使う言葉だ」
「……なるほど」
いかにも納得したように少女がこくんと大きく頷いて、アルテアの方にずいっと体を寄せる。まるで小動物さながらの俊敏さでアルテアの懐に潜り込み、さっと手を持ち上げて彼の頭の上へぽんと置いて撫で始める。密着しているせいで少女の体温を直に感じた。
「……何をしてるんだ」
突然の奇行に僅かに動揺しつつもそれをおくびにも出さず目の前の少女に問う。
「褒めてる……」
簡潔かつ明快な回答。だが意図はわからない。
「なんで?」
「テマエミソは、自分で褒める。アルは、褒められたい。から……私が褒める」
「なるほど」
今度はアルテアが大きく頷く。
何かを放棄したような若干投げやりな声。
「ありがとう。俺はとても満足したよ、充分だ」
「そう?いつでも、言って……ね?」
感謝を告げるとイーリスが名残惜しそうにしながらそっと手を退けて身を引いた。
それまで感じていた体の温もりも一緒に去っていったが、不思議と頭にだけはまだ温もりが残っているような気がした。
何気なく自分の手を頭に乗せる。余韻を確かめるような手つきでポンポンと数回自分の頭を叩いた。
「もしや、まだ物足りないのでは?」
横からからかうような声が飛んでくる。
不敵な笑みを浮かべるターニャを見て、しまったとばかりに顔をしかめるアルテア。
イーリスが俄然やる気に満ちる様子。
「……足りない?」
「いや、充分だ」
アルテアはぴしゃりと言って咳払いを挟む。
「話を戻そう」
緩んだ空気を引き締めるためのやや厳かな声音で宣言する。
「魔道具が壊れた。自壊ではなく、何者かに破壊されていたんだ。そして破壊したあとに小細工をしていることからその何者かは魔獣の類ではなく、ある程度の知能を持った存在ということになる」
「そうなると可能性が高いのは人間ですね。まあ当然と言えば当然の結論ですが……」
最初からわかってはいたが認めたくなかった。そんな様子でターニャが言った。
それはアルテアも同じ気持ちだった。
村人にしろ外部の者にしろ、悪意を持った人物が近くに潜んでいるというのは気分が良くない。仮にそれが自分たちによく知るもにだったとすれば尚更だ。
「壊して……意味ある……の?」
少女の不思議そうな面持ち。
思わず何でも教えてあげたくなりそうな程の可憐さだった。
「探そうと思えばいくらでも探せるな。例えば……実は村が嫌いだから騒ぎを起こして、めちゃくちゃにしたいとか。騒ぎを起こしてその間に魔鉱石を盗み出すつもりだとかな。この村……というか王国じたいが少し特殊だから他にも理由は色々思いつくけどど、何にせよ動機はこの際どうでもいい。まずは犯人を捕まえることだ」
「どうやって見つける?」
最もな疑問を抱くイーリスにターニャが鷹揚に答える。
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