俺【死神】になりました ~喧嘩もしたことない俺の、選べる職業が【死神】だった!?~

伝説の孫の手

第63話 ボスを倒せ

 魔物たちが作っている円の中心、そこに陣取り周囲を守られている、明らかに怪しいその魔物は俺が向かっていることに気づき、周囲の魔物に指示を出した。

 その指示に従い、一斉に俺へと集まる魔物たちの視線を振り切り、俺はその奥にいるそいつを目指す。

 その魔物は、大きさは普通のスケルトンと変わらず、違いといえば骨の色が灰色なことと、右手に大きな杖を持ち、左手にこぶし大の赤い石を持っている。

 【魔物鑑定】した結果がこれだ。
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 名前:なし
 種族:アッシュスケルトン
 レベル:18
 【ステータス】
  M  P:100
  攻撃力:50
  耐久力:61
魔法耐久力:110
  速 度:80
  知 力:108
 【所持スキル】
 低級闇魔術
 中級闇魔術
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 アッシュスケルトンという名前のそいつは、それ単体でも十分強力な魔物だ。おそらく今ここにいる人の中でも、奴と戦って勝てるものは少ないだろう。

 しかし今の俺にとって、奴を倒すことはそこまで難しいことではない。

 それほどまでに、先のスカルセンチピート戦でのレベルアップは大きいのだ。

 しかし今の永続的にスケルトンたちが復活している状態は良くないし、このレベルの魔物が今ここにいるこの数を生贄にして、贄の石を使ったらどこまで強い魔物が現れるのか想像できない。

 なので一秒でも早く、奴の持つ石を破壊するか、奴自身を倒す必要があると思われる。

 そんな中、一応奴の持つ石も鑑定しておこうと思い、【物品鑑定】を行うと面白い鑑定結果が表示された。

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死霊石しりょうせき

多くの生き物が殺された土地で、アンデット系の魔物が、その怨念などを集めて生み出すマジックアイテム。
その効果は、この石を持ったアンデット系の魔物が行う、闇魔術の効果を上昇させる。
その上昇率は、この石が生み出されるときに集まった怨念の量に比例ずる。
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 と出た。この鑑定結果から、奴が持っているのは贄の石ではなく怨霊石という別のアイテムで、今の復活現象はこのアイテムで強化されたアッシュスケルトンの闇魔術が起こしているということがわかった。

 ということは、贄の石を使用されて強力な魔物が召喚される心配はしなくてもよさそうだ。

 しかしこの大規模な復活や、おそらくそれ以外の闇魔術も強化されているということが予測され、戦闘での勝利は単純なステータスだけでは考えられないということだ。

 そんなことを考えながらも、着々アッシュスケルトンまでの距離を縮めていき、その間のスケルトンたちを鎌で薙ぎ払っていく。

 時折飛んでくる、スケルトシャーマンなどの放つ魔法なども、時に避け、時に近くのスケルトンを投げつけることで相殺し、進んでいく。

 そうしてアッシュスケルトンとの距離が十分縮まり、もうそろそろ俺の攻撃が届くというような距離になったところで、今まで指示だけで攻撃してこなかったアッシュスケルトンが、俺に向かって攻撃を開始した。

 右手に持つ大きな杖をこちらに向けながら、何かを叫んだアッシュスケルトン。

 その叫びに呼応するかのように奴の周囲を守りながら、こちらに向かってきていたスケルトソードマンなどの魔物たちが、一瞬赤い光に包まれたかと思うと、先程とは別人のような速度でこちらに迫ってくる。

 おそらく周囲の魔物にバフをかけたのだろう。そして、そのあと今度はなぞの黒い光のようなものをこちらに飛ばしてくるアッシュスケルトン。

 おそらく強化されたためか、その大きさは直径一メートルはあるかというほど大きく、大きくよけないとよけきれないほどだ。
 
 一旦、奴との距離を取りつつ、その魔術による攻撃をかわしたが、その魔術が当たった地点から起きた衝撃の大きさに背筋が凍る。

 仲間のスケルトンなどにフレンドリーファイアしたアッシュスケルトンの魔法だったが、それにラッキーなど思う暇もなく、頭によぎるのはこれに当たっていた場合のことだ。

 防御力は高くない俺は、この攻撃を一回でも食らった場合ただでは済まないことが、容易に想像できたからだ。

 大きな衝撃音と、アスファルトがえぐれていることから、考えられるあの魔術の威力におののきながらも、体は動かし続けないといけない。

 今もなお、バフをかけられたスケルトソードマンたちに攻撃を仕掛けられているからだ。

 強化されたスケルトソードマンの攻撃だが、今の俺の速度ではよけるのは簡単。

 しかし数が多いこと、いつアッシュスケルトンの魔術が飛んでくるかわからない事を考えると、その余裕も持つことができず、常に周りを警戒しながらも、なるべく早く魔物たちをさばいていかなくてはならない。

 近づいたはいいものの、このままだとじり貧だと思い、俺は一種の賭けに出た。

 その賭けとは、多少無理やりにでもこの場を進み、早くアッシュスケルトンを倒してしまうということだ。

 もしこの賭けに失敗して、アッシュスケルトンのもとにたどり着いたが、倒すのに時間がかかるなどといった事態に見舞われた場合、待っているのは後ろから迫ってくるスケルトソードマンたちと、アッシュスケルトンに挟まれるという最悪の結果だ。

 しかし賭けに勝った場合は、最大の障害を排除した後に残された魔物たちは、余裕をもって倒せる相手だけなので、その後の戦いは格段に楽になるだろう。

 今までも何度も賭けに勝ってきた自信と、最悪スピードに物をいわせ失敗しても離脱可能だろうという考えのもと、この作戦を実行に打ちすことにした。

 「【切れ味強化】、【スラッシュ】」

 先ほど集団を一掃したのと同様に、【切れ味強化】を使用して攻撃力を上げた状態で、今度はすかさず【スラッシュ】を使い、周りにいたスケルトソードマンたちを一掃した俺は、出来上がったスペースに魔物たちが入ってくる前に、アッシュスケルトンへ向かって走り出す。

 俺が向かってきたことに反応し、先ほどと同様の黒い光をこちらに飛ばしてこようとするアッシュスケルトン。

 奴に向かって距離を詰めている現状、そんな奴の攻撃が飛んできた場合、よけることができない。

 こうなった場合、奴の攻撃と俺の攻撃どっちが早いかの勝負になる。

 俺が奴に攻撃して倒してしまうか、それとも奴の魔術が飛んできて、回避できずにダメージを食らうか、そんな生か死かの二択というわけだ。

 そうして今にも奴の魔術が完成し、こちらに跳んでこようかというその瞬間、間一髪のタイミングで俺の鎌の先端が奴の胴体をとらえた。

 「【属性付与(毒)】」

 全速力で走っていたが、ギリギリ致命傷を与えるには距離が足りないと判断した俺は、とっさの判断で鎌の端を片手でつかみ、リーチを最大限に伸ばした状態で麻痺毒を与えることを選択した。

 そしてその判断は成功し、やつの胴体にかすめるように鎌の先端が当たり、アビリティの力で約一秒間アッシュスケルトンを麻痺により硬直させることに成功した。

 麻痺により硬直したことで、魔術はまだ発射されておらず、そして今の俺にとって一秒という時間は奴を倒すのに十分すぎる時間だ。

 攻撃を届かせるために浅く持っていた鎌をしっかりと持ち直し、すかさず死霊石を持っている腕をねることで、奴の魔術が強化せれないようにした後で、そのままの勢いで両手を使い奴を頭から真っ二つにするつもりで鎌を振り下ろす。

 「【スラッシュ】」

 とどめの一撃を確実に与えるためにアビリティを使用し、アッシュスケルトンの体を真っ二つにすることに成功した俺は、先ほど刎ね飛ばした奴の腕から死霊石を回収し、簡易アイテムボックスに収納した。

 これでこの戦い中にまた強化された魔術を受ける心配はなくなり、魔物側のアイテムという貴重な研究材料も手に入れた。

 残りはただ数が多いだけの雑魚ばかりなので、復活することもなくなった今、この戦いは終息へと向かっていくだろう。

 さすがに疲れが出始めたが、まだまだ辺りには魔物が存在するし、叔父さんとの勝負もあるので、人息つく暇なく魔物の殲滅を開始する。

 しかし気持ちは先ほどと変わって晴れやかだ。

 こうして朧台駅での大規模戦闘は終わりへと向かっていき、この後は特にイレギュラーもなく着実に終息していった。

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