俺【死神】になりました ~喧嘩もしたことない俺の、選べる職業が【死神】だった!?~

伝説の孫の手

第61話 ついに始まる

 第一、第三、そして俺と叔父さん、清水さん。総勢41名でビルの前に集まり、ぞろぞろと駅に向かい歩き出す。

 武器を持った集団が固まって歩く光景は、ちょっと前まではありえない異常な光景だ。しかし今の世界ではこれは当たり前の日常になりつつある。

 ちょっと前までは、これからの戦闘を考えてピリピリしていたが、叔父さんの鼓舞のお陰で今は和やかなムードが流れている。

 俺は第三のみんなについて歩いているのた。田中さんと青山さんは第一の人たちなので、今周りにいるのはそこまで親しい人ではない。面識はあるが、話したことはほとんどないような人ばかりだ。

 そんな中、隊長の河本さんが話しかけてくれた。

「色人君、緊張しているかい? 戦力的には大丈夫だと思うけど、あまり面識がない人ばかりだと思うから、そこは心配かなっと思って」

 そうやって話しかけてくれた河本さんに、俺は、

「いや、大丈夫ですよ。でもこれを機に皆さんとも交流を深めたいと思ってはいますが」

 と答えた。河本さんは隊長たちの中では唯一、魔法職を取得しており、第三警備隊はどちらかというと魔法色の強い部隊だ。

 河本さん自体も、屈強な警備隊の中では華奢な方で、身長は170㎝ないくらい、眼鏡をかけており、いわゆる頭脳派といったところで、職業は中級職の土系魔術師だ。

 会議で何度か一緒になった程度で、あまり話したことはなかったが、とてもいい人なのがにじみ出ている。

「そうだね。これからもよろしくといった意味では、今回うちの班に入ってくれたのはよかったかもしれない。色人君には期待しているから、今日はよろしく頼むよ」

 そういってくれたので、こちらも会釈をして「よろしくお願いします」と返事をした。

 そんなやり取りもあり、終始和やかなムードで駅の近くまでやってきたが、そろそろ気を引き締めなくてはならない。

 先頭集団が魔物の姿を発見し、一斉に止まる。ここで最後の作戦共有だ。

 俺と叔父さん、清水さんに第一第三の隊長の5人が集まり、最後の確認を行う。

「色人さんと鷹人警視監の二人には、まず先陣を切っていただき、それにつづいて第一第三の近接職持ちが戦闘を行います。
 清水さんには遠くからとにかく魔物の数を減らすことに力を入れていただきたい。
 まずは攻撃開始位置に移動し、準備が整ったら鷹人警視監の突撃を合図ということでよろしいでしょうか?」

 亜門さんが作戦をもう一度説明してくれて、こちらも納得しているためうなずく。誰も反対しないため、それぞれ亜門さんと河本さんは自分の隊員に作戦を伝えるために移動しだした。

 清水さんは「では」と軽く会釈だけして自分の持ち場に移動しだしたため、その場には俺と叔父さんだけが残っている状態だ。そうすると叔父さんが話しかけてきた。

「どうだ、色人。緊張しているか? まあ、お前が今まで経験してきた戦闘に比べたら今回は大したことがないだろう。でも一つだけ言っておくぞ。
 もし今回こちら側に死人が出たとしてもそれはお前のせいじゃない。
 俺もお前も固有職という、普通の人よりも強い職業を持っているが、なんでもできるわけじゃない。
 もちろんできないこともある。
 今回の作戦の責任者は俺だ、何かあったときは俺の責任だし、お前は自分の仕事をしっかりこなしてくれればいい」

 その時の叔父さんの目はいつになく真剣で、そして優しい目をしていた。いつもふざけているような叔父さんだったが、その偉大さを感じずにはいられない。

「うん、わかったよ。俺は俺のできることをやる。せっかく強い力を手に入れたんだ、この力を使って一体でも多くの魔物を倒してやるよ」

 そう返事をすると、叔父さんはいつものいたずら坊主のような表情に戻り、

「じゃあ、勝負しよう。どちらが多く魔物を倒せるか。多く倒した方がそうだな、一つだけ相手に対してどんなお願いをしてもいいってのはどうだ? 負けた方はそのお願いをできる限り聞いてあげるということで」

 と勝負を仕掛けてきた。これでこそ俺の知っている叔父さんだ。

「その勝負乗った、叔父さんとの一対一では完敗だったけど、対魔物戦に関しては自信があるよ。今から何お願いしようか考えとこっと」

「言うな、このっ」

 そういって俺の髪の毛をぐしゃぐしゃにして、叔父さんは高笑いをしながら自分の持ち場に向かっていった。

 俺も不謹慎かもしれないが、叔父さんのお陰でわくわくしてきた。そして気持ち高らかに第三の人たちの先頭に立ち、そこにいる皆さんに挨拶をする。

「よろしくお願いします」

 そうすると、そこにいる皆さんも挨拶を返してくれたので、もう戦闘が始まるため世間話とはいかないが、

「俺が皆さんの道を開けます。なので安心してついてきてください」

 とだけ言い。前を向く。

 自分でも18才の若造が、なんて生意気な口をきいているんだと思うが、こういう場ではちょっとでも威勢を張る方がいいと思い、こういう言い方になった。

 しかし、第三の皆さんは俺の発言にイラつきを覚えるわけでもなく、逆に好意的に思ってもらえ、

「よろしくお願いします!」

 と言ってくれた。

 ここまで信頼してくれているので、裏切るわけにはいかない。そう思い、今まで以上に気合が入る。

 そうこうしているうちに、皆が位置についたようだ。

 先頭にいる俺からは、約100mほど先に魔物たちがいるのが見える。これ以上近づくと経験上気づかれる距離だ。

 ここからだと何体いるのかわからないが、おそらくかなりの数がいることは想像できる。しかしこちらには多くの仲間がいるし、なんといっても叔父さんもいるので負けないだろう。

 それよりも叔父さんよりも多くの魔物を倒し、お願いする権利を勝ち取らなくては。

 俺の気持ちにもう迷いは存在しない。あとは叔父さんの合図で突っ込み、一体でも多く倒すだけだ。

 そうして皆の準備が整い、あとは叔父さんの合図を待つだけになった。

 誰一人声を発しておらず、あたりには静寂が訪れる。そんな中叔父さんの殺気が膨れ上がるのを感じた。

 その殺気におびえたカラスが、周辺のビルから一斉に飛び立ち、あたり一帯にバサバサという羽ばたきと、「カー、カー」という鳴き声が響き渡る。

 その音を合図にしたように、叔父さんが走り出した。作戦開始だ!

 それをいち早く感じ取った俺も、ほとんど一緒のタイミングで飛び出し、それに続いて警備隊のみんなも走り出す。

 距離は約100m、強化されたステータスを持つ俺たちにとって、その距離はほとんど一瞬で詰められる距離である。

 陸上競技のギネス記録を軽く超えている速度で、ほとんどの者が走っており、もはやどっちが化け物なのかわからない。そんな中で最も化け物じみた速度を誇っているのは俺だ。

 先のスカルセンチピート戦で得た経験値により、大幅なレベルアップを経験した俺の速度は、もともとスピード型だったこともあり、他とは一線を画す。

 叔父さんよりも遅れて走り出したにもかかわらず、魔物のもとには俺の方が先に到着した。

 俺の役割は、多くの魔物を蹴散らし、仲間の道を作ること、そして討伐数で叔父さんに勝つことだ。

 なので俺は死神の短剣を大鎌に形態変化フォルムチェンジし、魔物の群れに到着と同時に勢いよく振り回した。

 魔物たちはほとんどがただのスケルトンだ。近くに来てみると数は200体を多く超えているように感じるが、今はそんなことは関係ない。

 俺の大鎌の一振りで4,5体のスケルトンが砕かれ宙を舞う。その様子は無双物のゲームの様で、爽快だ。

 しかし、腕に感じる衝撃が現実だということを感じさせ、このような力任せが通用するのは雑魚だけだということが感じ取れる。

 しかし、まずはここ一帯を荒らし、後続の第三の人たちが戦いやすい状況を作る。そのことだけを考え、鎌を振り回す。

 そうして数にして20体ほどを吹き飛ばし、密集していた魔物たちに隙間を作ったころに後続が到着した。

 ここからが本番だ! 

 そうして俺は大鎌を振り回しながら、魔物の群れの中央を目指し進んでいく。

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