俺【死神】になりました ~喧嘩もしたことない俺の、選べる職業が【死神】だった!?~

伝説の孫の手

第54話 死神の大鎌

 日が明けて九日目の朝になった。昨日報告した贄の石や、自らを犠牲に大量のスケルトンを召喚するスケルトシャーマンなどに対しての対策をとるために警備部隊の人たちは朝から忙しくしている。

 そんな中、浮いている俺としてはやることがない。

 俺の職業的にも実戦で魔物を倒すのが一番効率がいいし、俺の実力だと昨日リッチに勝利していることもあって大丈夫だろうということで、一人行動をする許可を叔父さんから得ている。

 万が一の時も全速力でその場を離れるなど、何かと一人の方が俺自身の安全度は高い。周りの偵察も兼ねつつ経験値稼ぎ兼、鎌状態の死神の短剣。この状態だと死神の大鎌だな。その死神の大鎌の扱いになれることに今日は時間を割こうと思う。

 みんなと朝食をとった後、俺は近くの警備隊の人に外に出て魔物を狩ってくる旨を伝えて、そのまま外に繰り出した。

 父さんや母さん、叔父さんといった皆が忙しくしている中。自由行動していることに若干の後ろめたさを感じながら、どうせ自由に動くならしっかりと役に立とうと思い。気持ちを新たに魔物の殲滅に繰り出す。

 考えたら単独行動は、ほとんど初めてだ。一度屋敷の時に午前中だけ一人で行動したことがあるが、すぐにダンジョン探索など、基本誰かと行動していた。俺の戦闘スタイルや職業のことを考えると、今後単独行動が増えるだろうな。

 そんなことを考えながら、俺は【KUROGAMI】の支配領域の周りを巡回するようにぐるっと一周する。

 移動しながら新しい鎌状態の死神の大鎌を振り回し、感覚をつかもうとする。

 重さを感じないというアドバンテージにより、かなりの速度で振ることができるが、その威力に耐えられない鎌。その鎌の耐えられる速度を探しつつ鎌を振るという行為に慣れる。

 だんだんとコツをつかんできたが、どうしても長物ということで、距離感がいまだにつかみ切れていない。やはり実践を重ねるしかないようだ。

 そんなことを思いながらぐるっと一周し、元の位置に戻ってきた。しっかりと周辺の警備は怠っていないようで、支配領域の付近には魔物の気配はなかった。なのでもっと離れてみようと思う。

 道中鎌をくるくると回したりしてみたがまだ慣れていないので、手からすっぽ抜け慌てるということが何度かあったが、かっこいいし振り回すだけで切れるほど鎌が鋭くなったら効果的なので、暇なときに周りを見ながら練習しようと思う。

 そんな一人だから出来る試みを楽しみながら少し支配領域から離れると、ついに魔物たちが見えてきた。

 今回目撃した魔物はゾンビだ。ハイビルの一階をうろうろとしており、その数はざっと7,8体だ。

 ビルの一回エントランス部分で、そこそこの広さがあるので鎌での戦闘には向いているだろう。鑑定の練習と、この前みたいに変なアイテムやイレギュラーがないように、ちょっとでも気になると鑑定をするようにしていたが。今回の群れはただのゾンビの様だ。

 なので俺は堂々と正面の開きっぱなしの自動ドアから中に入り、鎌を構えて戦闘態勢をとる。

 奥の方でふらついているゾンビたちはこちらにまだ気づいていないようなので、先制攻撃をかますことにする。

 鎌を右手に持ち、全速力で近づいた俺は、一番近くにいたゾンビに向かって鎌を振りかざす。この時あまり力を入れすぎないように注意しつつ、しっかりと刃の部分を当てることに注意した。

 大鎌の刃に襲われたゾンビは、そのまま上半身と下半身に両断され、その場でうごめくしかできなくなった。その一撃を皮切りにこのエントランスにいたゾンビたちがこちらめがけて突っ込んでくる。

 しかし、今回は短剣の時とは異なり、迎え撃つことができる。俺はその場で腰を深くし、やってくるゾンビたちに対して、縦横無尽に鎌を振りまわす。

 ただつっこんでくるしか能のないゾンビたちは、俺の鎌のちょうどいい的だ。今回はリーチもあったのでそこまで急がずに、一体一体しっかりと切り裂く。まだ使いこなせていないので、途中何度も刃こぼれをしながら強引に切り裂いたが、死神の短剣の能力で刃こぼれもすぐ直る。

 数分後には俺の周辺には体を切り裂かれ、上半身だけになったゾンビと、すでに頭を破壊され動かなくなったゾンビだけが残った。上半身だけのゾンビは尚もこちらに襲い掛かってきたが、それはしっかりと蹴り飛ばすことで対処し、一体一体しっかりととどめを刺した。

 最後の一体を倒したときには「これでラスト」と独り言を言いながら、終始こちらのワンサイドゲームに終わった今回の戦いは、結果としてかなりいいのではないかと思う。そして今回戦ってみて思ったのはこと戦闘に関しては鎌の方が強いということだ。

 狭い室内や、誰にも気づかれないような隠密行動でもない限り、今後戦闘では鎌を使うことが多くなるだろう。そして地味にうれしかったのは、鎌で倒した場合、短剣よりも距離があるためあまり汚れないところだ。

 いつもだと返り血などが結構かかり、あとで拭くのは変わりないのだが、シンプルに気持ちのいいものではないので、それが抑えられるというだけでも俺としてはプラスだ。

 そんな感じで戦闘の振り返りをしつつ、ゾンビたちを換金し、次の魔物を探しに行く。

 次も比較的早く見つかった。橋の上にぞろぞろとゾンビたちが10体ほど蠢いていた。

 そのゾンビたちに向かおうと思ったその時、そのゾンビの中で一体だけちょっと雰囲気が異なっていたので【魔物鑑定】を行ったところ、

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 名前:なし
 種族:グール
 レベル:13
 【ステータス】
  M  P:35
  攻撃力:40
  耐久力:28
魔法耐久力:32
  速 度:48
  知 力:8
 【所持スキル】
 悪食
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 と出た。恐らくゾンビの上位種だろう。いつもゾンビは意味もなくふらふらしているのにも関わらず、こいつだけ立ったまま微動だにしていなかったので気になったのだが、やはりただのゾンビじゃなかった。

 一応上位種なので警戒しつつ、贄の石のような未確認の道具などを所持していないのかなど観察したが、それもなさそうなので、そのまま殲滅するとする。

 先ほどと同じ要領で、一気に近づき近くのゾンビを今度は頭から真っ二つに切り裂いた。

 それを皮切りにやってくるゾンビたちを切り裂いていこうと思ったのだが、二体ほどゾンビを切り裂いたところで到着したグールが鋭い爪で切りかかってくる。

 ゾンビはただの動く死体みたいな見た目なのに対し、グールは見た目に関してはあまり違いがないんのだが、行く見るとかなり筋肉質で、爪と犬歯が鋭くなっている。

 そんな鋭い爪による切りかかりに対し、俺は今まで短剣だとなかなかやれなかった、攻撃を受け止めるという方法をとる。

 鎌の柄の部分を両手で持ち、グールの攻撃の軌道上に横向きで置くと、次の瞬間かなりの衝撃が腕に届いた。いつもは避けるか受け流すしかしていなかったので、新鮮なその衝撃に対し、俺のステータスもかなり高くなっているのでしっかりと受け止めることができた。

 そして力任せに弾き飛ばし、たたらを踏んだグールに対してそのまま返す刀で鎌を振りかざす。

 それに対して全く防御できなかったグールを切り裂き、そのまま頭を破壊し息の根を止める。

 ここまでくればこっちのもんだ。次々とゾンビたちを薙ぎ払い、先頭終了だ。

 グール戦での攻撃を跳ね返すという方法、いつもの俺ではしなかったが今後はやっていこうと思う。しかしやはり俺の生きる戦い方は、速度で翻弄する方なので、これは格下に対する殲滅速度を下げるだけな気がする。

 しかしよけるのが間に合わないときに、しっかりと防御できるのは強みなので伸ばしていきたいとも思う。

 まあ、戦法が増えるのはいいことだ、徐々に使い慣れていこう。

 そうして、俺はまだまだ魔物と狩るために移動を始めたのだ。

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