俺【死神】になりました ~喧嘩もしたことない俺の、選べる職業が【死神】だった!?~

伝説の孫の手

第51話 形態変化

  リッチを倒し、一息ついてステータスを確認するとレベルも上がっていたが、まさかの死神の短剣にアビリティが出現した。

 とりあえず【物品鑑定】で鑑定してみる。

「【物品鑑定】」

 そうすると、今までの説明とは内容が少し異なっていた。

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【死神の短剣】:
職業【死神】専用武器、世にも珍しい成長する武器であり、また生き物を傷つけることによって自己修復する。
レアリティは最高ランクの神級だが、今の段階では中級レベルの力しか持たない。今後所有者とともに成長することで真価を発揮する。
成長し【形態変化フォルムチェンジ】が可能になった。現在可能な形態は短剣、鎌。

レベル7

攻撃力30

【ステータス加算】

 M  P:+(基礎ステータス×0.1×武器レベル)

 攻撃力:+(基礎ステータス×0.4×武器レベル)

 耐久力:+(基礎ステータス×0×武器レベル)

 速 度:+(基礎ステータス×0.4×武器レベル)

 知 力:+(基礎ステータス×0.1×武器レベル)

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 レベルとともに攻撃力の値が上がり、中級レベルの力を持つに代わっているが、ここでも【形態変化フォルムチェンジ】が可能ということになっている。

 この説明文を読む限りだと【形態変化フォルムチェンジ】で短剣から鎌に変形できるみたいだ。

 今現状の死神の短剣は、真っ黒な謎金属でできており、本当に何の装飾もされていないシンプルな形状をしている。

 唯一の装飾は、持ち手のそこに髑髏のマークが存在することぐらいだが、まあ名前の通りの見た目だろう。長さは刃渡り30cmほどで、俺の手にぴったりの大きさである。

 そんな大きさの短剣が鎌になっても、まず体積が足りないのではないかと思うんだが……

 とりあえず使ってみよう。

「【形態変化フォルムチェンジ】」

 そう短剣を握りながら言ったところ、急に短剣が光り、そのまま全長2mほどの鎌に変わった。

「うわっ!!!」

 急に大きくなったのでびっくりして落としそうになったが、鎌に代わるときもずっと光の状態のまま触っている感覚はあり、持ち手の大きさは変わらなかった。

 そうすると、近くにいた二人も驚きながら。

「なんですかそれ!?」

 と食い気味に聞いてきたが、俺もよくわかってないので、

「なんだか武器が変形できるようになったんだよね……」

 とだけ伝えた。その後も数分間質問攻めにされて、やっと納得してくれたようで、

「専用武器ですか、いわゆるマジックアイテムというようなものがあるということは知っていましたが、まさか目にすることがあるとは、でも何度見ても不思議ですよね、重さとかも変わんないんですよね?」

 そう言ってきた青山さんに対し、

「そうだね、もともと短剣の時点で重さは感じなかったんだけど、この大きさでも何も重さを感じないっていうのは変な感じだね。」

 今まで言っていなかったが、この短剣は持っていても全く重さを感じないんだ。だからといって攻撃が軽くなるということはないんだけど。

 そうすると、

「持ってみてもいいですか?」

 と田中さんが効いてきた、確かに誰にも渡したことがなかったので興味もあった、なので渡してみることにした。

「いいよ」

 そういって、田中さんの手に短剣を渡そうと思い置いたところ、驚くべき現象が起きた。なんと短剣がそのまま田中さんの手をすり抜け地面に落ちたのだ!

「!!」

 みんなして驚き、固まったところに「ゴンッ」という固いものが落ちた音がして、短剣が地面に落ちた。拾ってみると俺は普通に拾える。死神専用の武器ということはこういうことの様だ。

「誰かに渡したのは初めてだったけど、こんな感じになるんだね。田中さんが大丈夫?」

 そう聞くと、

「はい、私は大丈夫ですが……目では見えていたのに、何の感覚もなく通り過ぎました。今までで一番ふしぎです。」

 といっていた。おそらく攻撃以外の方法で、別の者に触れると何も影響を与えないのかもしれない。

 これが俺が攻撃しようとして投げつけたときには当たるのか、刃の部分からなら触れられるのか、攻撃の意思が問題なら、攻撃するつもりのなかった事故的なものでは今回みたいにすり抜けるのかなど、多くの疑問点はあるが、戦闘においては今のところ困っていないので問題ないだろう。

 そうなると今度気になってくるのは重さだ。短剣の時と鎌の時で重さに違いはあるのか。俺が持っても重さを感じずほかの人に持ってもらうことも出来ない。どう検証したものか。

「これの重さを調べたかったんだけど、どうしようか?」

 そう聞くと青山さんが、

「人は持てなくても普通に体重計みたいな要領で量れるんじゃないですか?」

 といっていた。確かにと思い、重さのわかっているものと天秤みたいにして、ざっとでいいので図ってみたら。短剣が約0.5㎏ほどで、鎌は約4㎏ほどであることがわかった。

「これ、鎌の状態だと、およそ4㎏の二メートルの鉄の塊を俺は重さを感じずに触れるってことだろ。それってものすごく強いんじゃないか!?」

 自分で言っていて驚いたが、これだけでもかなり強力だと思う。武器の耐久度的なものが中級レベルなのかもしれないが、死神の短剣は生き物を攻撃すると刃こぼれなども自己修復する。正直言ってぶっ壊れ武器に昇華したと思う。

 短剣は狭い空間での戦闘や、俺が動き回って戦うような戦い方に向いており。鎌はリッチのような大物との戦闘やゴブリンたちみたいな何体かで群れを成す敵に対して向いている。

 鎌の形状はいわゆるイメージする死神の鎌の形で、また短剣から鎌、鎌から短剣に変化するときはMPを消費しない。変形時間も約一秒ほどであまり気にならない。

 試しに鎌の状態で振ってみると、これだけ大きな金属とは思えないほどのスピードで振ることができる。「ヒュンッ」と紐でも振り回したときのような速さで振り回せる。

 威力を確かめるために、近くに生えていた木に向かって鎌を思いっきり振った。

 そうすると思ったように一刀両断というようにはならず、鎌の刃の部分が斜めに当たってしまい。そのまま刃が折れ、刃の三分の2がなくなってしまった。木の方はというと殴られた衝撃でえぐれてはいるがまだつながっている。

 鎌の方はというと、折れた先はそのまま光となって鎌に吸収されたが、折れたままの状態だ。

「え……そんな……」

 あまりの出来事に興奮していた頭は一気に冷め、テンションはがた落ちだ。

「今何が起こったんですか?」

 俺が急に鎌を振ったと思ったら、いきなり刃が折れたことに対して、何が起こったのか理解できずに青山さんが効いてきた。

 そこで俺が考えたことや、やったことを説明すると。

「なるほど、あまりの攻撃力に武器自体の耐久力が追いついていないんですね。もし刃を完全に垂直に立てることができたら、もしかすると切れていたかもしれませんが、今の現状では、本気の振りだと武器自体が耐えられないほどの速さが出てしまうのではないでしょうか。」

 と解説してくれた。なるほど武器を使うにしても使い方ってものがあるようだ。今のレベルでは全速力に武器自体が耐えられないほどの攻撃力が生じてしまい。鎌をうまく使う技量もない状態だとただただ武器に負担がいき、結果として刃が折れてしまうようだ。

 そうなると、いくら軽くて早く振り回せたとしても、限界はあるようだ。だとしても鎌状態は十分強力なので今後使っていこうと思う。

 そこまで考えたところで、今回のイレギュラーについて本部に戻って報告しなくてはいけない。なので今回はここまでにして引き返すことにする。

 その前に、

「武器を修復するために、ゾンビたちを何体か狩ってから帰りたいんだけど……」

 と二人に無理を言って、ゾンビ、スケルトンなどを何体か倒し、死神の短剣が元に戻ったところで本部へと帰還した。

 死神の短剣のせいで忘れかけていたが、あの贄の石の効果と、そこから出てくるリッチの強さ。そして贄の石の説明文に出ていた内容など話さないといけないことがいっぱいある。

 そうして、何とかリッチに勝利し、【形態変化フォルムチェンジ】という新たな力を手に入れた俺たちは無事帰還した。

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