俺【死神】になりました ~喧嘩もしたことない俺の、選べる職業が【死神】だった!?~

伝説の孫の手

第49話 vsリッチ

 贄の石というアイテムによって突如として現れた、リッチという強敵。その強さは今までで最恐の敵といえるだろう。

 ここでもう一度奴のステータスを見てみると、
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 名前:なし
 種族:リッチ
 レベル:22
 【ステータス】
  M  P:130
  攻撃力:70
  耐久力:74
魔法耐久力:150
  速 度:100
  知 力:153
 【所持スキル】
 低級闇魔術
 中級闇魔術
 鎌術
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 となっており、気を付けるべきは高い知力から放たれる強力な魔法と、鎌術という近接格闘も可能なところ、そしてこの中では太刀打ちできるのが俺ぐらいの速度の高さだ。

 今こうしている間も、奴のオーラに飲まれて動けなくなっている。

「色人さん、ここは私と青山で何とか時間を稼ぐので、本部に戻って鷹人さんを呼んできてください。」

「そうですね、もう色人さんしか頼れないのでよろしくお願いします。」

 とそう二人が言ってきた。二人の表情から死んでも俺を逃がすという意思が感じ取れる。

 確かに、俺がここで逃げて、本部の叔父さんを連れてくることができれば可能性はある。しかしその場合、かなりの確率で二人は助からないだろう。それほどに奴は強力だ。そんなこと俺は許容できない。

「そういうわけにはいきません。みんなで戦ってなんとしても生き残りますよ!」

 俺がそういって、姿勢を低くし戦闘態勢に入ると二人は、

「そんな、それでは皆殺しです。なんとしても色人さんだけは助からないと!」

「そうです。田中の言うとおりです。考え直してください!」

 といって食い下がってくる。警察官という職業のせいか、皆を守るための自己犠牲の考え方が染みついているのだろう。

 それはとても立派だが、今この場所に関しては適していない。俺が助かっても二人が助からなくては意味がないのだ。二人は今後この世界でもっといろんな命を救うことのできる才能があり。その才能を使う相手は俺みたいな戦える人ではなく、避難民のような戦えない人のためにあるべきだ。

 それに俺だってただで負けるつもりはないし、なんなら勝つつもりだ。俺が二人を見捨てることを許容できない限り、腹をくくってもらうしかない。

「いや俺の意見は買えません。自己犠牲は結構ですが、ここでは生き残ってもらいます。これは上官命令です。一応ギルド的には役職を持っている俺の方が上官になりますよね。今はどうやってあの化け物を倒すか考えてください」

 そういって二人の意見を一蹴すると、あきらめたのか二人は反論することなく戦闘態勢に入った。

 今現状こいつに勝つ唯一の方法は俺の速度を生かす方法だ。まず速度が足りないと攻撃を当てることはできない。それに奴の魔法耐久力は高いが、普通の耐久力は俺でも攻撃が通るくらいなので、スキを見て俺が奴の胸の赤い石を破壊するのが一番勝つ確率が高いだろう。

 そんなとき、なんと奴が話し出した。

「カカカ、ナンダオレニ、カツツモリデイルノカ?」

 そういいながら右手で鎌を回し、不気味に笑うリッチ。まさかしゃべるほどの知能を持ち合わせているとは。

 そう思ったが、話すことで隙が生まれないかと思い話しかけてみる。

「なんだ、話せるのか?そうだよお前を倒すつもりだ。できれば抵抗しないでほしいのだけどね……」

 そういうと、リッチは面白そうに、

「ニンゲンフゼイガ、オモシロイコトヲイウ。オレヲタノシマセテクレ!!」

 そういって、いきなり突っ込んできた。

 くそ、全く隙が見えないし。今の会話から話し合いはできないだろう。

「二人はおれのサポートをお願い!」

「「わかりました!」」

 そう手短に作戦を決めつつ、鎌を振りかざしてきた奴の攻撃をしゃがむことでよける。

 かなりの速度と攻撃力だ。今までの敵とは段違いの威力に、頭の上を鎌がとおりすぎるときに感じるプレッシャーが段違いだ。

 その後、連続で振り回された鎌の攻撃をすべて躱していたが、全くといっていいほど攻撃を与える隙が無い。

 その後奴の大ぶりの攻撃をかわした瞬間に、後ろに向かって大きく飛びのき。距離をとった。

 そうすると今度は鎌を持っていないほうの手をこちらに向けて、魔術を放ってきた。

「【ナイトパレード】」

 そうすると、今度は奴の後ろに真っ黒な扉が出現し、そこからスケルトンやゾンビが出てきた。その数10匹ほど匹ほど。今度はその10匹にバフの魔術をかけ、またこちらに突っ込んできた。

 合体した上にまたまた仲間を召喚するのかよと、悪態をつきたいところだが、スケルトンたちの相手は田中さんたちに任せて、俺は目の前のリッチに専念する。

 尚も鎌で攻撃してくるリッチに対して、こちらからも攻撃を仕掛けなくては勝つことはできないが、その隙が無い。

 その後も奴の動きを観察しながら攻撃をかわしていたところ、だんだんとパターンなどが見えてきた。

 ゲームなどとは違って、必ず決まった動きをするというほどではないが、それでも癖みたいなものでよくする動きがある。そこを利用して反撃に出るとしよう。

 鎌の攻撃中は魔術を放てないようなので、鎌にだけ集中しながらよけつづける。そうしてタイミングを見計らっていると狙った動きをしてくれた。

 奴は左から右に鎌を振り払った後。その鎌を一回転させ持ちやすい形に持ち直す癖がある。なので左から右への振り払いが行われた直後に、今度はこちらから急接近した。

 「ナッ」っと驚きの声を上げたリッチに対して、そのまま胸の石を破壊しようと試みたが、そこまでのスキはなく。とっさの体制で振るわれた鎌の攻撃が襲い掛かってきた。

 その攻撃に対して今度は攻撃を避けるのではなく受け流すことにする。

 あまり腰の入っていないリッチの攻撃に対して、しかりと軌道を読み、その力の方向に対して同じ向きに力を加えてやることで、軌道をずらして体制も崩すことができた。

 体勢を崩したが、奴はその体制のまま、左の手で殴ってくる動きをしていたので、懐に入るのはあきらめ、左のストレートを躱しそのまま奴の左斜め後ろに位置をずらした。

 今この瞬間だけ、奴は完全に無防備であり、チャンスはここしかない。

 そう思い、その位置から奴の胸の石を破壊するように短剣を差し込む。

 そうすると、リッチの心臓部に短剣が到達し、奴の胸の石に突き刺さった。

 ただのスケルトンだったら、その時点で石は砕け散り、バラバラになっていたのだが。短剣が刺さった石はまだ形保っており、ひび割れ今にも壊れそうだが、まだ壊れていない。

 短剣を刺した後に、すぐその場を離れた俺は。まだ死にそうにないリッチの姿を怪訝そうに見ていると。

「ニンゲンガ、ナマイキニモ、オレサマニ、キズヲツケオッテ、ユルサン!!」

 と怒り狂った感じで叫んだ。

 奴の叫びに呼応して、奴を中心に風が吹き荒れ、埃が舞う。その後奴は自らに強化を掛け出した。

「コレデトドメヲサシテヤル!【ダークオーラ】【ブラックフォグ】」

 【ダークオーラ】は恐らく闇のオーラを纏ったことから、バフ的な効果で。【ブラックフォグ】は黒い煙が奴の周りに現れたことから、目隠し的な意味だろうと予測する。この雲に何か毒的なものが入っているとまずいので、なるべく吸わないようにしよう。

 ちらっと見ると、田中さんたちはまだ戦っていて、若干苦戦していそうだが何とか勝てるだろう。

 こちらも少しでも攻撃を食らうとダメなのは同じだが、それは今までも同じこと。さっき攻撃を当てれたことから考えても、勝つ可能性はある。

 奴が強化されたことによる影響がどれだけあるかわからないが、冷静にやることをやるだけだ。

「シネ!!」

 そういって強化された奴が突っ込んでくる。第二ラウンド開始だ!

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