俺【死神】になりました ~喧嘩もしたことない俺の、選べる職業が【死神】だった!?~

伝説の孫の手

第33話 決着ゴブリンナイト

 ゴブリンナイトの掛け声で奴らが一斉に動き出した。それにいち早く反応したのはケビンだ。

「坊ちゃん、あいつの相手は任せて下せえ」

 そういって、ゴブリンナイトに向かっていく。それにつられて俺たちも行動に移す。

 小田さんと加藤さんがその場で二子さんを守るように陣取り、二子さんは魔物たちに向けて魔法を放つ体制をとる。

 魔物たちの配置は、真ん中にゴブリンナイトが陣取り、その左右にホブ1、ソードマン1,ソルジャー2、アーチャー1、シャーマン1ずつの構成だ。

 それぞれバランスよく配置されており、それだけでもかなりの脅威であることに変わりはない。その中でも最も警戒しなくてはいけないのが、アーチャーとシャーマンの遠距離攻撃持ちのゴブリンだ。

 まずは奴らを何とかしなくてはいけない。なのでおれはまず向かって右側の集団に向かって走る。厄介なことに、アーチャーとシャーマンは集団の奥に陣取っており、前にいるソルジャーらを突破しないといけない。

 そこで俺は持ち前の高い速度のステータスを生かして、全速力で奴らの後ろまで回り込む。

 俺の動きに対応しようとソルジャーらが方向を変えるが奴らの動きをぶっちぎり、そのまま後方のアーチャーめがけて突っ込んでいく。

 その俺の突撃を防ごうと、アーチャーの近くにいたソードマンとホブゴブリンらが立ちはだかるが、その二体の間を一瞬ですり抜け突破する。その時と通り過ぎざまにソードマンの腕と、ホブゴブリンの足を切り裂くことで奴らの戦力を低下させる。

 そうしてついにアーチャーのところまで到達した。そこに待ち構えていたアーチャーとシャーマンの二体がほとんど同時に攻撃してきた。

 アーチャーは力強く引いていた弦をはなし弓を放ってくる、その動きをしっかりと観察していたので、発射の瞬間に射線から外れることで回避し、その後シャーマンが魔法を放とうとしてきた時にはシャーマンと俺の間にアーチャーが来るように移動していたので、狙いが定まらずむしろ仲間のアーチャーに命中した。

「ギャア」

 そういって仲間のフレンドリーファイアを受けたアーチャーが攻撃にひるみ、間違えて仲間に当ててしまった事で動揺したシャーマンに向かって一瞬で近づき、そのままやつの喉を引き裂いた。そしてその勢いを殺さないまま後ろを振り返り、アーチャーの背中から奴の心臓を突き刺した。

 ここまでを一連の動作で一気に行い、周りを見渡してみる。

 ケビンはゴブリンナイト戦っており、激しい攻防が繰り広げられているが、まだ大丈夫そうだ。二子さんたちはというと、反対側のゴブリンの集団と戦っており、何とか持っているが、アーチャーの弓やシャーマンの魔法が飛んでくるたびに、かなり戦いにくそうにしている。まだ小田さんでは魔法を受け止めることは厳しいし。遠距離攻撃は連携されるとかなり強力だからだ。

 そこで俺はこっちの集団にいる残りのソルジャーらは一旦置いといて、反対側のアーチャーらを先に倒すことにした。

 襲い掛かってきたゴブリンソードマンたちの攻撃に対して、思いっきり走り出すことで相手にせず。そのままゴブリンアーチャーに向かって攻撃を繰り出す。

 今回は二子さんたちを狙っており、こちらに全く気付いていなかったので簡単だった。斜め後ろから近づき、そのままの勢いでアーチャーの首を切り裂き、そのまま今度はシャーマンに襲い掛かる。意識外からの攻撃でアーチャーがやられたことより、一瞬思考が停止しているシャーマンの顔面に短剣を突き刺し。そのままシャーマンは動かなくなった。

 そうすると魔物たちの遠距離攻撃持ちは始末できた異なる。これでひとまず懸念材料は除去できた。二子さんたちもこれによって危なげなく勝つことができるだろう。

 そうしていると、先ほど無視されていた、初めに対応していたアーチャーらがいたほうのソルジャーたちがこちらに合流してきて、周りを囲まれてしまった。

 俺の周囲にはぜんぶでホブゴブリン二体、ソードマン二体、ソルジャー二体が、こちらの様子をうかがっている。しかしこんな状況でも今の俺には問題に映らなかった。まず最初に一体のソードマンが切りかかってきたが、その剣を避けると同時に一歩踏み込み、そのまま心臓を一突きした。

 心臓を貫かれたソードマンは、まだもがこうと剣を振り回そうとしていたので、その腕を思いっきり蹴とばして無力化した。

 そのソードマンを皮切りに皆一斉に攻撃してきたが、その場にとどまるのではなく、こちらからも切りかかることで一対多で戦闘を行うことを避け、一対一を何回も行うようにすることで、先頭を有利に進めていく。

 速度はこちらが圧倒的に早いので、攻撃をかわしてはそのまま致命傷を与えることを繰り返し、奴らの殲滅に成功する。

 そのころには二子さんたちも戦闘を終えており、残るはゴブリンナイトのみだ。

 ケビンとゴブリンナイトの攻防はかなり激しかった。まずゴブリンナイトが剣を振るうと、ソードマンとは比べ物にならないくらいに背の剣筋は鋭く早い、そしてケビンの反撃もしっかりと反対の手に持っている盾で守られている。

 ゴブリンナイトが身に着けている全身鎧もかなり丈夫なようで、ケビンの攻撃力をもってしても多少へこますぐらいが精いっぱいの様だ。

 しかしケビンも負けておらず、ゴブリンナイトの攻撃をことごとくよけたり、受け流したりしていて、先頭は少し膠着状態の様だ。
 
 しかし奴の仲間はすでにいなくなっているが、こちらには仲間がいる。

 ゴブリンソルジャーらとの戦闘が終わった二子さんたちが助けに入った。

「助太刀します、【ファイアランス】!」

 そういって横合いから二子さんの【ファイアランス】が炸裂する。二子さんの声を聴き、バックステップでその場を離れたケビンに対して、その場に残されたゴブリンソルジャーに対して長さ約1mの炎の槍が炸裂する。

 とっさに盾で体を守り、オーラを纏ったことでスキルも併用したと思われるゴブリンナイトだが、【ファイアランス】の直撃を食らってただでは済まない。

 攻撃を受け切っても防御の体制のままたたずんで生きたゴブリンナイトに対して、ケビンがそのまま襲い掛かった。

「【爆裂拳】」

 【ファイアランス】のダメージにより盾にもひびが入り、爆発によって煙を上げながらの状態で、今度はケビンの【爆裂拳】を直撃したゴブリンナイト。今度はその場にとどまることはできず、勢いそのまま後ろに吹っ飛んだ。

 ここまで食らったらもう虫の息だ。最後のいいところはもらうとしよう。ケビンの【爆裂拳】で盾も砕け散っており、衝撃によって兜も外れてしまっているゴブリンナイトに近づき、勢いよく首をはねた。

 そしてゴブリンナイトの首が転がるのと同時に、広場奥の宝箱が光、アイテムが出現した。

「ふぅ、何とか勝てたね」

 そういうと皆一様に疲れたような顔をしている。今回はまず数も過去最大だったし、なんといってもゴブリンナイトというホブゴブリンなんかのさらに上位の魔物が出てきた。それに対して勝利したがさすがにこの戦いは重すぎたな。

「さすがにやばかったですね、正直二子さんの【ファイアランス】がなかったら、なかなかスキルも発動できませんでした。そもそも奴の技量も高かったので、スキルを放つ隙が見当たらなかったんですよね。」

 ケビンも今回はかなり苦戦していたようだ、ゴブリンナイト、奴レベルの魔物に対してはまだ力不足なのかも知れない。今回勝てたので実力的には倒せない相手ではないのかもしれないが、余裕をもって倒すにはもう少しレベルも上げないといけないな。

 そしてゴブリンたちの特性なのか、とにかく数が多い、多数の敵を一度に攻撃できる範囲攻撃みたいなのを誰も持っていない現状、少し戦いずらくなっているのが現状だ。

 この中で一番多数相手が得意なのは俺だろう、持ち前の速さを生かして一体一体の戦闘時間を極小にして周囲殲滅を行うことができる。しかしまだ俺の速度では数が多くすぎると対応しきれないところができてしまう。それは俺たちの今後の課題だろう。

「それにしても、やっぱり二子さんの【ファイアランス】の威力はすごいね、遠距離であの威力を出せるのかかなりありがたいし、今回の戦いもあれがあったおかげで勝てたところもあるしね。」

 そういうと二子さんはちょっと困ったように、

「確かに威力は高いですが、MPの消費が激しいので連発はできないのがネックですが…」

 だとしても、十分な戦力だ。今後助けられることも多いだろう。

 とわいえ今回は勝利できたので、よかった。

 とりあえず宝箱から出たアイテムを回収して少し休憩しよう。

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