俺【死神】になりました ~喧嘩もしたことない俺の、選べる職業が【死神】だった!?~

伝説の孫の手

第14話 VSホブゴブリン ~色人side~

ドンッという爆発音の後、おそらく木がなぎ倒される音が聞こえ、戦場が近づいていることがわかる。そのあと「ギャアアア」というゴブリンの雄たけびが響き渡り、またもや何かがぶつかった鈍い音が聞こえてくる。

 どんな怪獣大戦争だよと、音だけで今までの戦闘とは次元が違うことに心の中で悪態をつきながら戦場へと急ぐ。

 「(ケビン無事でいてくれ!)」

 ケビンの無事を祈りながら、この後の戦いについて考える。

 これを説明するにはさっきの戦闘の後、ポーションによって回復したところまで話を戻す必要がある…。


(数分前)

「マジか…」

 ポーションによって、驚異的な速度で傷が回復した俺はその場で呆然としていた。

 周りにはまだ先ほどの戦闘相手であったゴブリンたちの死体が転がっているが、それの処理を考えるのも億劫なほど疲労がたまっていたのだ。

 ポーションによって肉体的疲労は回復したが、精神的疲労はまだまだ存在する。本当ならばすぐにでもケビンのもとに駆け付け、もし苦戦しているようなら手を貸さなくてはいけないところなのだがなかなか立ち上がる気持ちになれない。

 とりあえず一呼吸置くために、今回の戦闘によってレベルなどが上がっていないか確かめるために、ステータスボードを確認する。ゲームとは違ってレベルアップとともに通知やBGMが流れたりしないので、こまめに確認しないとどうなっているのか把握できないのだ。

 確認したステータスがこれだ。

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 名前:黒神 色人クロガミ シキト
 種族:人族
 職業:死神
 ジョブレベル:0
 必要経験値:27/100
 【ステータス】
 M  P:10+10×0.9×0+(10×0.1×1)=11/11
 攻撃力:8+8×1.2×0+(8×0.4×1)  =11
 耐久力:8+8×0.5×0+(8×0×1)   =8
 速 度:11+11×1.2×0+(11×0.4×1)=15 
 知 力:10+10×0.8×0+(10×0.1×1)=11
 【所持スキル】
 暗殺術 レベル 1 【属性付与(毒) 1MP】
 鑑定  レベル 1 【物品鑑定 1MP】
 【所持SP】
 1,027,767P
 【装備品】
 死神の短剣 レベル 1
 【その他】
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 経験値の溜まる速度が遅いな…。職業の特性から生き物を殺害したときのみ経験値がたまるので、戦闘行為でもたまる戦士や剣士と違って、明確に数が関係している。

 このままだとレベルが上がるまでの今までの三倍倒す必要があるのか、それともより強いものはより多く経験値を手に入るのか。まだ謎だ。

 しかしここで朗報があった、俺の中でより強化されやすい武器やスキルのレベルなのだが、暗殺術がレベル1になってアビリティ【属性付与(毒)】が使えるようになっていた!

 この【属性付与(毒)】なのだが1MPを使用して攻撃に毒属性を付与することができるようだ。この毒はいわゆる魔法的な毒らしく、効果は(麻痺・継続ダメージ・視力低下・MP消費)の4種類から選べるようだ。

 魔法的な毒なので重ねがけも可能で、相手の生命力が強いと抵抗されるなどもあるらしいのだが、耐性がつくとか、抗体ができるみたいな物ではないようだ。

 その辺の詳しいところは今のところあまり気にしなくてもいいが、大事なところは、麻痺や視力低下で相手にデバフをかけて戦闘を有利にしたり、継続ダメージによって耐える戦いでも殺害が可能になってくるということだ。

 MP消費もこの先スキルなんかを使ってくる相手に対しても有効だろうし、かなり強力なスキルが手に入った。ちなみに与えた毒は時間経過で消えるらしい。その時間は個体の抵抗力などで一定ではないので測れない。

 強力なスキルも手に入り、少し精神的にも回復してきたところで、ケビンたちの方からうっすらではあるが、まだ戦闘中であろう音が聞こえてくる。

 こうしちゃいられない!気合を入れて立ち上がり、音のする方へ走り出した。






 そうして冒頭へつながるのだ。戦場に戻ってきてみると満身創痍のケビンが何とか立ち上がったとこだった。

 まずい、まずそう感じた。俺の知っているケビンはここまでやられるほどやわではない、ということはこの化け物はケビンを上回る強さということだ。

 とにかくまずはケビンが回復する時間を稼がねば、おそらくケビンの簡易アイテムボックスの中にはみんなに配布したポーション(低級)が使い切っていなければ残っているはず。

 ポーション(中級)の効果を確認した俺からすると、低級でも完全回復とはいかなくても、かなりましになると予想できる。

 まずは少しでもケビンに回復してもらわないと、新しいアビリティを使っても俺一人ではおそらく勝つことはできない。

「ケビン大丈夫か!?、いったんここは俺が奴の気を引き付けるからポーションを飲んで回復してくれ!!」

 そういうとまだこちらに背を向けている奴に向かって死神の短剣で切りかかる。

「【属性付与(毒)】」

 ケビンはうなずいて、視界の端で簡易アイテムボックスを開いたのが見えたので、走ってきたそのままの勢いで新アビリティ【属性付与(毒)】をくらわせる、とっさに振り向いて防御姿勢をとった奴はさすがだが、今回はダメージは少なくても攻撃が当たれば成功だ。

 死神の短剣が俺の詠唱とともに青のオーラを纏い、クロスした奴の腕に一筋の切り傷を残した。

「ガッ」

 切りさきながらそのまま奴の横を通り過ぎ、ケビンと奴の間に入り込む。しかしその間奴は一瞬言葉を発しただけで、腕をクロスさせたまま動かない。そう今回使用した【属性付与(毒)】の効果は麻痺だ。

 時間して約2秒ほどだが奴は体の自由を奪われて、その間にケビンはポーションを飲む時間が、俺はケビンと合流する時間が作れた。このアビリティかなり使えるぞ、正直麻痺だけで下手すれば一撃必殺となってもおかしくない。まだほかのダメージや視力低下、MP消費どれをとっても、この麻痺の威力から効果はかなり期待できる。

「マジか…、こんだけ早く傷が治るとさすがに驚きますね。坊ちゃん助かりました、まだ全身傷みますがこれなら戦えます。」

 やはりポーションの回復力に驚いているケビンに少し面白く思ったが、低級では完治とはいかなかったみたいだな。

「それはよかった、正直手負いだとしても、今の俺だけではまだ荷が重いからね。でも二人なら大丈夫だろ、早くこいつを倒して今日はもう寝たいよ…」

「ちげぇねえ」

 二人して軽口を吐きながら意識は目の前の敵に集中している。奴は麻痺から戻ったらしくこちらに振り向き、怒ったような表情で棍棒を振りかぶりながら、突っ込んできて振り下ろした。

 棍棒の動きを二人で左右に分かれながら躱し、俺とケビンで挟み込むような状態となった。

 そこでケビンが、

「坊ちゃん、奴のスキルに注意して下せぇ。口から衝撃波みたいなのを放ってきます。まだ一回しか使われていませんがまだ使えるかもしれません。」

 と警告してきたので、無言でうなずくことで分かったと伝える。

 しかしスキルを使ってくる敵か、先ほどはただのゴブリンにスキルを使われたことで絶体絶命のピンチに陥ってしまった。スキルというものはこちらが使うと強力だが、同じように使われるとこれほど厄介なことはない。

 奴は先ほどまでのケビンとの戦いでかなりのダメージを受けており、ケビンが回復した今、二対一のこちらの方が有利といっても過言ではないだろう。

 スキルに警戒しつつも、早期決着を狙っていこう。

 一番最初に仕掛けたのはケビンだった。一瞬奴の死角に入りその隙に一気に距離を縮め。脇腹にスピードの乗った蹴りをぶちかます。

 ケビンが攻撃に入り、奴の意識がこちらからケビンに向き、反撃に出ようとしたときには俺も距離を縮めいている。

 ケビンが奴の棍棒の振り回しをしゃがむことで回避した隙に、奴の背中に向けてまたしてもアビリティをくらわす。

「【属性付与(毒)】!」

 切りつけたと同時に俺もしゃがみこみ、ケビンと二人で足払いをくらわした。

 タイミング良く足を払われて仰向けに勢いよく倒れ、思いっきり頭を打ち付けたやつの顔めがけてとどめの短剣ぶち込む。

 「これで終わりだ!!!」

 勢いよく顔面目掛けて、死神の短剣の切っ先が向かっていく。それに対し奴もこのままでやらまいと口を大きく広げ、全身に力を入れている。奴の体を赤いオーラが纏っていくのがスローモーションになった世界の中で鮮明に見える。これはスキル発現の兆候!。

 間に合え!と心の中で叫ぶが加速された意識の中で、短剣のスピードはとても遅く感じる。

 短剣が先に奴の命を奪うか、それとも奴の衝撃波のスキルが発動するか。

 このままでは間に合わないと感じだしたその時、奴の纏っていたオーラが霧散し、奴の驚く表情が見えた。

 結果としてスキルは発動せず、短剣の先端が奴の顔を貫き、脳みそを破壊して奴の表情は驚いたままもう変わることはなかった。

「賭けだったけど、俺らの勝ちだ…」

 奴の顔面に刺さったままの短剣を握りながら、絞り出すように、しかしかみしめるように言った。

 布石だったのだが、先ほどの【属性付与(毒)】で選択したのはMP消費だ。これのおかげかは今となっては定かではないが、奴は最後の最後でおそらくMPが足りずスキルが発動しなかったのだろう。

 結果として俺が戦った戦闘時間は短かったが、それでも一歩間違えれば死んでいたのは俺たちだったとわかる。

 まだ初日の夜なのにこんなのばっかだな、ひとまず生き残ったことに心の底から感謝しつつ、俺もケビンも満身創痍で、少しの間一言もしゃべらずに呆然としたのだった。



 そしてここで、やっと長くて大変だった一日は終わりを迎えることができたのだった…

 


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