俺【死神】になりました ~喧嘩もしたことない俺の、選べる職業が【死神】だった!?~

伝説の孫の手

第5話 現状把握その⑤

「まず大前提として、食料の問題があると思う。切り詰めたら2週間もつとのことだったけど、衣食住がないがしろにされると生きる気力が失われるからなるべく食料は切り詰めない方針を取りたい。
 といってもない袖は振れないので、足りなくなった場合この屋敷の財産をpに交換して食材は手に入れたいと思う。結構難しいことを言っていると思うんだけど、この行動方針でこの屋敷の食料事情は鈴木さんと慎太郎さん任せたいと思う。いいかな?」

「坊ちゃまがそう言われたならば、お任せください」

「わかりました」

 俺のむちゃぶりを二人は快く引き受けてくれた。細かいところは後々つめないといけないが、とりあえずはこの二人なら任せられる。食料問題はここで終わりにして、今後の方針を決めなければいけないだろう。

「そして今後の方針なんだけど、あの神が言うには今後人類は魔王ないしその配下といった明確な敵に命を狙われ、生き抜くためには対抗しなければならない。
 そのためにも、俺を含んだ戦闘系ジョブについた者と非戦闘系ジョブについたものに分かれて役割分担を行いつつ、各々レベルを上げていく必要があると思う。
 俺たちにスキルなどの超常的な力が使えるなら、相手も使える、もしくはより相手のほうが強力と考えていいと思う」

 みんななんとなくそのことを想像していたようで、真剣な表情で聞いてくれている。

「この屋敷は発電機や太陽光発電も備わっていて、とりあえず電気の供給は問題がないが、外はどうなっているかわからない。
 水道もここは裏の貯水槽から水を使っていて、昔ながらの井戸も存在する。
 拠点としては申し分ないと思う。とりあえずこの屋敷を拠点化し、様子を見て誰かが外に出向き、父さんたちと接触してフレンドの機能を使って連絡を取るのが最もいいと思うのだが、どうだろうか?」

 そう俺の計画をみんなに伝えたところ、うなずいて賛同してくれた。とりあえず今後の行動方針は決まった。連絡手段が絶たれている今、外の状況は気になるところだが、明らかな異常事態。慎重を期すに越したことはない。

 みんなと意識をすり合わせたあと、とりあえず日の出ているうちにこの屋敷の拠点化を進めることにする。

 いきなりの非現実な状況にもかかわらず、この屋敷のみんなは優秀だ。夕方までにこの屋敷を囲っている塀の強化と侵入経路になりそうなところの封鎖を警備最高責任者のケビン主導で行い、この屋敷の中の物の把握と現状使えそうなもののピックアップなどを爺主導で、食事の準備と計画を鈴木さんと慎太郎さんで行ってくれた。

 とりあえずの計画と準備、もろもろが終わり落ち着きを取り戻したころにみんなに集まってもらい、食事を済ませてからもう一度話し合いを始めることにする。

 ちなみに食事はいつもと何ら変わりない料理が出され、とてもおいしかった。この料理を今後も食べていくためにも何とかしてpを稼ぐ方法を模索しないといけないと再認識した。

「とりあえず今できることは済ませたと思う。そこで、昼間の話し合いの場では出てこなかった気づきなどがあったら共有してほしい。何かないかな?」

 
 そう質問すると一人手が上がった。警備員の一人、鍛冶士を選択した田中さんだ。

「自分は鍛冶士の職業に就いたのですが、塀の修繕をしている時に金網の隙間が開いてしまっているところを見つけて修繕したら、終わった後にステータスボードを確認したら経験値を得ていました。
 金属である金網を修繕したから鍛冶をしなくても経験値を得ることができたのだと思います」

「なるほど、経験値を得る方法は限られるけど、その範囲内ならわりと融通が利くんですね。ありがとうございます。ほかに誰かいませんか?」

 次に手を上げたのは家政婦の南さんだ。

「私が就いたのは治癒士の職業なんですけど、その時に手に入ったスキル低級治癒術がレベル0なのにもかかわらず瞑想というアビリティがありました。
 周りに聞いてみたところ、同じく魔術士で手に入るスキル低級魔術にも同じ瞑想というアビリティがあって、使ってみると二人とも経験値を取得しました」

「治癒士は魔法系の職業だったんですね。そもそも魔法を使えなくてどうやって経験値を得るのか疑問だったんですが、これで何とかなりそうですね。
 魔法系の職業の人は、時間があるときに積極的に瞑想を行って経験値を取得してください」

 次に商人を選んだ慎太郎さんが話し出した。

「商人のSPショップに補正がかかるという意味が分かりました。試しに一万円札を交換してみようとしたところ101pになりました。交換の時にpが1%上昇するようです。」

 買取1%上昇だと!! いきなり爆弾発言が飛び出した。この中で商人を選んだのは慎太郎さんだけなのだが、これをうまく使えば少しでも多くのpを取得できる。

「それはとてつもないね。その話を聞けてよかった。
 この屋敷の中でp化してもいいものを集めておいたからあとで手伝ってください。とりあえず現金や高価な物で、非常事態なら交換してもいいだろうという物を結構集めておいたから」

「わかりました」

 待ってみたが、それ以上に新しい報告はなさそうだ。

「じゃあ今後の方針を話し合おう。とりあえず現状pの稼ぎ方がわからない。何かを売ってpにするのだろうが、今ある物を売るには限界がある。何かしら方法はあるはずだ。
 あくまで予想だけど、倒した魔物の素材が売れたり、職人系ジョブの人が作った物を売るとpが素材より増えたりといったことはありえそうだ。また、慎太郎さんの発言から、買取は商人を通したほうがいいだろう。
 こんな感じでpを稼いで支出と収入のバランスをとれるようにしよう。それまではみんなの持っているポイントを一つにまとめて、食料やその他の消耗品に充てようと思う。みんなで生き残るにはこれが一番効率がいいと思うのだけど、どうだろうか?」

「坊ちゃま、わたくしたちは皆ついていきますぞ」

 爺の発言を皮切りにみんな賛成の意を表してくれた。とてもうれしかったが、それと同時にみんなの命を預かるプレッシャーも感じ、覚悟を決めてこの方針で進めることにした。

 まず現状では支出しかなく、収入源は財産を変換するしかないので慎太郎さんに手伝ってもらってどんどんpに変換していくことにする。

 現金、宝石、美術品、時計、交換してみると思ったほど価値は低くなっていなかったが、どんどん消えていく様を見ているとさすがに感覚が麻痺してくる。ほとんどが父さんや母さん、そして亡くなった祖父の私物だったが、あの人たちの性格から物に執着がないので大丈夫だろう。しかしただの料理長である慎太郎さんは、どんどん青ざめていって正直かなり申し訳なかった。

 結果として交換して手に入れたポイントの総数は2,137,475pにも上り、慎太郎さんのおかげで約20000pほど多く手に入れることができた。

 これを全部食料としたいところだが、まだ見ぬ魔物の脅威に備えて、みんなに武器、防具、アイテムなどを配らなければいけないとなると、軽く見た価格設定から見るとそこまで多いとは言えないのかもしれない。

 しかしこうやってpを手に入れることができるのとできないのとでは生存難易度が変わってくると思う。うちはお金や高価な物があったからいいが、一般の家庭なんかだとかなりのハードモードなのは間違いない。なるべく早い段階で一般の人の保護も視野に入れる必要があるだろうな。もちろん自分たちが最優先だが。

 その後みんなで話し合いを再開し、SPショップでいろいろと買っていくことにする。

 余談であるが、いきなりの高額買取によって怒涛の勢いで経験値を稼いだ慎太郎さんは、一気にジョブレベルの上限に達し、中級ジョブの調理師に転職し、そのままレベルが15というマネーレベリングとでも呼ぶべき方法でこの屋敷での最高レベルの座を手に入れた。


コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品