【第一巻 完結】一閃断空のバーサーカーナイト
第20話 十番隊の戦い
敵が近づき、リーフ隊長が先行して叩き、数を減らしたところを小隊メンバーがビームライフルで削る。余った敵は八M級の防衛網が弾幕を張って全滅させていく。
「大隊長によって戦術は変わるんだな……」
ラスターが感心したように呟きながら、近くの敵を排除して行く。
シズハラ隊長の場合は、後ろに陣取って、狙撃によって援助し、取りこぼた敵を二丁拳銃スタイルによって一掃する。
ガレス隊長の場合は、前線に赴き、ビーム兵器の鉄球によって敵を抉り飛ばすと、取りこぼしを気にする事なく、別の場所へと向かう。
狙撃がやりやすいように、立ち回りを考えなくてはならないシズハラ大隊長。
散り散りの敵を撃ち倒し、場合によっては後方援護に入らねばならないガレス二番隊隊長。
どちらかと言えば、ラスターは後者の方が楽に感じる――なんたって考えることが少ない。
敵を処理していたラスターに、フランが鋭く叫ぶ。
「あなた! 通信範囲絞りすぎ! pの7に敵よ! えっと……下側!」
下側の方で迫り来るワームビーストに対して、ガレス隊長は別の方向へと向かっており、周りのものが援護として向かう中、棒立ちのラスターに叱咤が飛んでくる。
通信範囲をある程度広げて、報告を聞いていればわかるのを、無視していれば当然である。
だが――報告は聞いてはいないが、気づいていない訳ではない。
「上から……bの2あたりにも敵が来てるんですがどうします」
「えっ?」
「ちょっと距離ありますけど……」
率先切って急ぐほどではないが、下の三十体あまりに対して、過剰戦力で迎え撃とうとしているように見える。
それどころか、そちらにかまけていると上側の対処が遅れる。
百体に襲われても大丈夫であるという理屈は、シェルターの中に避難した人の話である。
コロニーと戦場を行き来する兵士からすれば、コロニーが襲われる位置次第では、五体もいれば十分恐怖である。
(とは言え、この位置なら放置すべきなのか?)
闇雲に近くにいる敵を狙うべきでもないが、倒すべき順序がどちらにあるのか、判断しあぐねる。ているとリーフ隊長の驚く声がする。
「マジだ……」
レーザーを走らせていたリーフは、微かに捉えたワームビーストの反応に、思わず声を漏らす。
十番隊の守備範囲からは外れているが、補助は必要な範囲でもある。
「ラスター、フラン、我々は座標b2の敵を処理する」
「了解」
「りょ、了解!」
そして、三機は上側に向けてブーストを吹かせる。
「どうかしたんです?」
近くにいた八M級のReXの操縦者の不思議そうな声が通信機から響く。
「ワームが二十体以上接近している」
「えっ!?」
他のメンバーは逆の方向へ、二番隊の隊長機も別の場所で応戦している。
「二人とも、援護してくれ。行ってくる!」
そういうと同時に、リーフ隊長は敵陣へと飛んでいく。
近づいたと言っても、ラスターが最初に邂逅したような、すれ違う距離ではなく、すぐに逃げられる距離を確保しながら、自身の射程圏内に捉える。
その後ろから、ラスターは追いかけると、ワームビースト十体に赤色の光――レーザーポインターで照準に捉えていることに気づく。
すると同時に、細く、そして長い十本の光がワームビーストを貫き、くるくると動きながら焼いていくと、別の敵にも襲い掛かり、五体ほど焼いていく。
「雑魚処理行くわよ!」
楽しそうな声でフランが言うと、ビームを撃ちまくる。
普通は数発ぐらいは当てなければ倒せないワームビーストは、当たると同時に死骸へと変わっていく。
「当てるなぁ……」
フランの命中率はざっと九割。
近ければAI補正のおかげで、ラスターですら九割を狙う事も不可能ではないが、これほど距離があると五割超えれば御の字である。
よれよれと近づく、当てられる距離のワームビーストに狙って撃つと、ふわりと躱される。
「……疲弊した状態へのアルゴリズムはないってわけか」
補助に頼りすぎた弊害に反省して、再度狙いを定めると、ビームが一本――そしてもう一本降り注ぎ、スカッ、スカッと二発とも外す。
「……すまん、しんどくてな」
先程の操縦はかなり疲弊するのであろう。隊長にまで選ばれておいて、そこそこ近い距離で、外してしまった事を申し訳なさそうに謝る。
それでも、ラスターは気を取り直し、相手に狙いを定めて……
次は下から飛んできたビームがワームの体を貫いていく。
「へっ! ラスター大丈夫だったか?」
下側の応援に行っていたケニスがこちらにやってきて助けてくれたようだ。――まぁ? もうここまでくれば当てれましたけどね!
残り五体のワームビーストが近づき、疲れてポンコツと化したリーフ隊長は、大きく距離を取る。
問題なく倒せる――はずであった。
二発も外したリーフ隊長のせい……だけでなく、ヨレヨレの雑魚相手に外しすぎたラスターも悪かった。
想像よりも機敏に動くワームビーストにラスター達は戸惑い、さらにビームを外してしまう。
今の数発程度ぐらいは、既に問題ないのだが、これまでに撃ったビームの残り滓で成長してのけたワームビーストは彼らを襲う。
「くっそ、当たらない」
新たに力を蓄えたワームビースト相手に、後方へ退避しながら、威力の下げたビームを振り回す。
他の二人は、近くに来たワームビーストを撃ち倒しており、ラスターだけが倒せていない。
そして、そんなラスター目掛けて、エネルギー弾を放ちながら、ワームビーストは迫り来る。
それは、近づくと言うこと――つまり、命中率も上がるわけである。
「ここだ!」
連射モードに切り替えたラスターは、数発外しながらも、なんとか敵にビームを浴びせ続けることに成功する。
そして――
「きゃー」
「フラン!」
残りの二体は両方ともフランの元へ。
ケニスとの距離が未だ遠く、他二人もその場から離れたため、フランが囮となってしまっていた。
ワームビーストに襲われたフランは、全力で距離を取ろうと一直線に逃げるが、一度張り付いた二体のワームビーストは離れない。
幾人もの相手を葬った、鎌のような前足を振り回し、ReXの装甲は削られていく。
もがくようにしながら苦しむフランを助けるべく、ラスターはビームライフルを撃ちまくる。
しかし、悲しいぐらいに当たらない――というか当たらなすぎる。
「なんか……無駄に動かね?」
フランが――ではなく自分が。
評価項目においての安定性――つまり、姿勢制御の評価は低くとも、ラスターは苦手としていない。
それでも、なぜか撃つたびに姿勢にずれが生じる。
未熟な腕が悪いと言えばそれまでだが、だとしても、例え失敗したところで、AIによる照準の補助を考えれば、この距離では当たらずとも、ビームが明後日の方向に飛んでいくのはおかしい。
コックピットに響くフランの悲鳴に、焦燥感を駆られるが、ラスターの腕では何度やっても掠りすらしない。
「いや、逆か!? 補正のせいか!」
照準の自動補正は、敵に当たるようにするためだけでなく、味方に当たらないようにするためでもあると、ようやく気づく。
「くそっ! だったら!」
ブーストを吹かして、フランの元へと飛んでいく。
「やめろ! 左から来るぞ!」
フランの悲鳴と一緒に、リーフ隊長が無鉄砲に突っ込むラスターへ危機を告げる。
なりふり構わない突撃は、ちょうど左に来ていたワームビーストから見れば格好の的である。
ラスターは再度、連写モードに切り替えて、左から攻めてくるワームビーストに弾を叩き込むと、そのまま左に移動して、死骸となったワームビーストと接触する。
「ラスター!」
リーフ隊長の叫ぶ声が聞こえるが、問題はない。
実際の所、触れた瞬間に無理やり引いたレバーの所為で、態勢が崩れたように見えるだけである。
だが、本題がここからである。
ラスターはコックピットの左にあるメンテ用の蓋を開くと、そこからケーブルを一本引き抜く。メインバッテリーとの接続が切れたReXはほんの数秒後に、サブバッテリーへと移行する。
「これで!」
サブバッテリーでは容量が低いため、一部にしか電気が回されない――AIによる照準の補助も電源が賄われないシステムの一部である。
フランに纏わりつくワームビーストに狙いを定めると、引き金を引いて吹き飛ばす。
「くっ……」
一体は倒したものの、もう一体が倒し切れない。しかし、ワームビーストと距離ができたフランは、残りの敵を振り切ろうと加速させる。
そして、ラスターは二発目、三発目と撃つが、補助がない所為で、追いかける敵に根本的に当たられない。
「これ以上は、バッテリーが……」
銃への給電はReXから行われるが、それは撃つタイミングではない。
ラグを減らすために事前にある程度までは貯めているのだが、サブバッテリーでは給電も行われないので、バカスカ撃てば一瞬で電池切れになる。
「……何を?」
二番隊隊長――ガレスの乗った機体が、フランの機体に向けて、鉄球を向ける。
「間引き……か?」
人間はワームビーストの餌になる――だからこそ、喰われそうになるぐらいなら……殺してしまえの考え。
「やめろおお!」
叫ぶラスターの意見は虚しく、鉄球から放たれたビームが、フランの機体に当たる。
「フラン! ……ん?」
フランが乗った機体からワームビーストは引き剥がされたものの、バッテリー部分は露出しており、事切れたように動かない。
つまりは、最悪の状態である。このままでは、無惨に食い殺される運命が待ち受けている。
「いや、そう言うことか!」
多分、隊長機には、照準補助が付いておらず、そして何より、ガレス隊長の戦い方は、多量のビームを無差別にぶっ放すと言う性質上、一発一発の威力は低い。
木っ端微塵の破壊による間引きではなく、低い威力での攻撃で、動きを止めるのが目的である。
動かないフラン機に、ワームビーストは動力部に向かって、エネルギーを吸収しに這い寄っていく。
「そこだ!」
動きが読みやすくなったワームビーストにラスターは狙い撃つ。
スカッ――
フランに当てるヘマは犯さなかったものの、狙いを見抜くのが一足遅いラスターは、慌てて撃ったビームをあっけなく外してしまう。
だが、二発目を撃つよりも早く、三本のビームがワームビーストを点にして交わり、敵を撃破する。
誰かわからない一人――多分、二番隊の誰かであろう機体と、ケニスにリーフ隊長の三人は、ものの見事に命中させて、ワームビーストを撃ち倒す。
ラスターは一息つくと、メンテ用の蓋を開けて、無理やり引っこ抜いたケーブルを差していく。
ぶぅううんと音を立てて再起動すると、暗くなっていたコックピットに光が灯り、通信機に通信が入るようになった。
「大隊長によって戦術は変わるんだな……」
ラスターが感心したように呟きながら、近くの敵を排除して行く。
シズハラ隊長の場合は、後ろに陣取って、狙撃によって援助し、取りこぼた敵を二丁拳銃スタイルによって一掃する。
ガレス隊長の場合は、前線に赴き、ビーム兵器の鉄球によって敵を抉り飛ばすと、取りこぼしを気にする事なく、別の場所へと向かう。
狙撃がやりやすいように、立ち回りを考えなくてはならないシズハラ大隊長。
散り散りの敵を撃ち倒し、場合によっては後方援護に入らねばならないガレス二番隊隊長。
どちらかと言えば、ラスターは後者の方が楽に感じる――なんたって考えることが少ない。
敵を処理していたラスターに、フランが鋭く叫ぶ。
「あなた! 通信範囲絞りすぎ! pの7に敵よ! えっと……下側!」
下側の方で迫り来るワームビーストに対して、ガレス隊長は別の方向へと向かっており、周りのものが援護として向かう中、棒立ちのラスターに叱咤が飛んでくる。
通信範囲をある程度広げて、報告を聞いていればわかるのを、無視していれば当然である。
だが――報告は聞いてはいないが、気づいていない訳ではない。
「上から……bの2あたりにも敵が来てるんですがどうします」
「えっ?」
「ちょっと距離ありますけど……」
率先切って急ぐほどではないが、下の三十体あまりに対して、過剰戦力で迎え撃とうとしているように見える。
それどころか、そちらにかまけていると上側の対処が遅れる。
百体に襲われても大丈夫であるという理屈は、シェルターの中に避難した人の話である。
コロニーと戦場を行き来する兵士からすれば、コロニーが襲われる位置次第では、五体もいれば十分恐怖である。
(とは言え、この位置なら放置すべきなのか?)
闇雲に近くにいる敵を狙うべきでもないが、倒すべき順序がどちらにあるのか、判断しあぐねる。ているとリーフ隊長の驚く声がする。
「マジだ……」
レーザーを走らせていたリーフは、微かに捉えたワームビーストの反応に、思わず声を漏らす。
十番隊の守備範囲からは外れているが、補助は必要な範囲でもある。
「ラスター、フラン、我々は座標b2の敵を処理する」
「了解」
「りょ、了解!」
そして、三機は上側に向けてブーストを吹かせる。
「どうかしたんです?」
近くにいた八M級のReXの操縦者の不思議そうな声が通信機から響く。
「ワームが二十体以上接近している」
「えっ!?」
他のメンバーは逆の方向へ、二番隊の隊長機も別の場所で応戦している。
「二人とも、援護してくれ。行ってくる!」
そういうと同時に、リーフ隊長は敵陣へと飛んでいく。
近づいたと言っても、ラスターが最初に邂逅したような、すれ違う距離ではなく、すぐに逃げられる距離を確保しながら、自身の射程圏内に捉える。
その後ろから、ラスターは追いかけると、ワームビースト十体に赤色の光――レーザーポインターで照準に捉えていることに気づく。
すると同時に、細く、そして長い十本の光がワームビーストを貫き、くるくると動きながら焼いていくと、別の敵にも襲い掛かり、五体ほど焼いていく。
「雑魚処理行くわよ!」
楽しそうな声でフランが言うと、ビームを撃ちまくる。
普通は数発ぐらいは当てなければ倒せないワームビーストは、当たると同時に死骸へと変わっていく。
「当てるなぁ……」
フランの命中率はざっと九割。
近ければAI補正のおかげで、ラスターですら九割を狙う事も不可能ではないが、これほど距離があると五割超えれば御の字である。
よれよれと近づく、当てられる距離のワームビーストに狙って撃つと、ふわりと躱される。
「……疲弊した状態へのアルゴリズムはないってわけか」
補助に頼りすぎた弊害に反省して、再度狙いを定めると、ビームが一本――そしてもう一本降り注ぎ、スカッ、スカッと二発とも外す。
「……すまん、しんどくてな」
先程の操縦はかなり疲弊するのであろう。隊長にまで選ばれておいて、そこそこ近い距離で、外してしまった事を申し訳なさそうに謝る。
それでも、ラスターは気を取り直し、相手に狙いを定めて……
次は下から飛んできたビームがワームの体を貫いていく。
「へっ! ラスター大丈夫だったか?」
下側の応援に行っていたケニスがこちらにやってきて助けてくれたようだ。――まぁ? もうここまでくれば当てれましたけどね!
残り五体のワームビーストが近づき、疲れてポンコツと化したリーフ隊長は、大きく距離を取る。
問題なく倒せる――はずであった。
二発も外したリーフ隊長のせい……だけでなく、ヨレヨレの雑魚相手に外しすぎたラスターも悪かった。
想像よりも機敏に動くワームビーストにラスター達は戸惑い、さらにビームを外してしまう。
今の数発程度ぐらいは、既に問題ないのだが、これまでに撃ったビームの残り滓で成長してのけたワームビーストは彼らを襲う。
「くっそ、当たらない」
新たに力を蓄えたワームビースト相手に、後方へ退避しながら、威力の下げたビームを振り回す。
他の二人は、近くに来たワームビーストを撃ち倒しており、ラスターだけが倒せていない。
そして、そんなラスター目掛けて、エネルギー弾を放ちながら、ワームビーストは迫り来る。
それは、近づくと言うこと――つまり、命中率も上がるわけである。
「ここだ!」
連射モードに切り替えたラスターは、数発外しながらも、なんとか敵にビームを浴びせ続けることに成功する。
そして――
「きゃー」
「フラン!」
残りの二体は両方ともフランの元へ。
ケニスとの距離が未だ遠く、他二人もその場から離れたため、フランが囮となってしまっていた。
ワームビーストに襲われたフランは、全力で距離を取ろうと一直線に逃げるが、一度張り付いた二体のワームビーストは離れない。
幾人もの相手を葬った、鎌のような前足を振り回し、ReXの装甲は削られていく。
もがくようにしながら苦しむフランを助けるべく、ラスターはビームライフルを撃ちまくる。
しかし、悲しいぐらいに当たらない――というか当たらなすぎる。
「なんか……無駄に動かね?」
フランが――ではなく自分が。
評価項目においての安定性――つまり、姿勢制御の評価は低くとも、ラスターは苦手としていない。
それでも、なぜか撃つたびに姿勢にずれが生じる。
未熟な腕が悪いと言えばそれまでだが、だとしても、例え失敗したところで、AIによる照準の補助を考えれば、この距離では当たらずとも、ビームが明後日の方向に飛んでいくのはおかしい。
コックピットに響くフランの悲鳴に、焦燥感を駆られるが、ラスターの腕では何度やっても掠りすらしない。
「いや、逆か!? 補正のせいか!」
照準の自動補正は、敵に当たるようにするためだけでなく、味方に当たらないようにするためでもあると、ようやく気づく。
「くそっ! だったら!」
ブーストを吹かして、フランの元へと飛んでいく。
「やめろ! 左から来るぞ!」
フランの悲鳴と一緒に、リーフ隊長が無鉄砲に突っ込むラスターへ危機を告げる。
なりふり構わない突撃は、ちょうど左に来ていたワームビーストから見れば格好の的である。
ラスターは再度、連写モードに切り替えて、左から攻めてくるワームビーストに弾を叩き込むと、そのまま左に移動して、死骸となったワームビーストと接触する。
「ラスター!」
リーフ隊長の叫ぶ声が聞こえるが、問題はない。
実際の所、触れた瞬間に無理やり引いたレバーの所為で、態勢が崩れたように見えるだけである。
だが、本題がここからである。
ラスターはコックピットの左にあるメンテ用の蓋を開くと、そこからケーブルを一本引き抜く。メインバッテリーとの接続が切れたReXはほんの数秒後に、サブバッテリーへと移行する。
「これで!」
サブバッテリーでは容量が低いため、一部にしか電気が回されない――AIによる照準の補助も電源が賄われないシステムの一部である。
フランに纏わりつくワームビーストに狙いを定めると、引き金を引いて吹き飛ばす。
「くっ……」
一体は倒したものの、もう一体が倒し切れない。しかし、ワームビーストと距離ができたフランは、残りの敵を振り切ろうと加速させる。
そして、ラスターは二発目、三発目と撃つが、補助がない所為で、追いかける敵に根本的に当たられない。
「これ以上は、バッテリーが……」
銃への給電はReXから行われるが、それは撃つタイミングではない。
ラグを減らすために事前にある程度までは貯めているのだが、サブバッテリーでは給電も行われないので、バカスカ撃てば一瞬で電池切れになる。
「……何を?」
二番隊隊長――ガレスの乗った機体が、フランの機体に向けて、鉄球を向ける。
「間引き……か?」
人間はワームビーストの餌になる――だからこそ、喰われそうになるぐらいなら……殺してしまえの考え。
「やめろおお!」
叫ぶラスターの意見は虚しく、鉄球から放たれたビームが、フランの機体に当たる。
「フラン! ……ん?」
フランが乗った機体からワームビーストは引き剥がされたものの、バッテリー部分は露出しており、事切れたように動かない。
つまりは、最悪の状態である。このままでは、無惨に食い殺される運命が待ち受けている。
「いや、そう言うことか!」
多分、隊長機には、照準補助が付いておらず、そして何より、ガレス隊長の戦い方は、多量のビームを無差別にぶっ放すと言う性質上、一発一発の威力は低い。
木っ端微塵の破壊による間引きではなく、低い威力での攻撃で、動きを止めるのが目的である。
動かないフラン機に、ワームビーストは動力部に向かって、エネルギーを吸収しに這い寄っていく。
「そこだ!」
動きが読みやすくなったワームビーストにラスターは狙い撃つ。
スカッ――
フランに当てるヘマは犯さなかったものの、狙いを見抜くのが一足遅いラスターは、慌てて撃ったビームをあっけなく外してしまう。
だが、二発目を撃つよりも早く、三本のビームがワームビーストを点にして交わり、敵を撃破する。
誰かわからない一人――多分、二番隊の誰かであろう機体と、ケニスにリーフ隊長の三人は、ものの見事に命中させて、ワームビーストを撃ち倒す。
ラスターは一息つくと、メンテ用の蓋を開けて、無理やり引っこ抜いたケーブルを差していく。
ぶぅううんと音を立てて再起動すると、暗くなっていたコックピットに光が灯り、通信機に通信が入るようになった。
「ファンタジー」の人気作品
書籍化作品
-
-
32
-
-
26950
-
-
140
-
-
4
-
-
111
-
-
52
-
-
29
-
-
75
-
-
2
コメント
Kまる
めちゃめちゃ面白くて語彙力でぶん殴られた気分だった
更新待ってます