家事代行に来てくれるお兄さんがカッコよくて辛い

スマイレン

1話

 熟睡していた真夜は午前11時に鳴り響いた着信音に呼び起こされた。
 母がいきなり電話してくるなんて、何かあったのではないかと身構えていたが、予想はある意味当たっていた。母にとって、それは重大事件だったのだ。

 自分から電話をかけるのはいつぶりだろう。
 会社に勤めていた頃、電話はいつも側でうなり声をあげる魔物でしかなかった。
 真夜は手のひらにすっぽりと収まる携帯電話にふうっと過去の記憶を吐き出して、母が教えてくれた番号を入力した。
 チラシの裏に控えた数字は真夜にしか解読できない字で書かれていた。
 その数字を何度も指でたどり間違いがないか確かめる。
 不思議な感覚だった。
 番号を打ち込み受話器をあげる。
 それだけの作業でその人物と繋がることができるのに、たった1つでも間違えれば全くの別人と繋がるのだ。
  はい、折原です。
 受話器から飛んできた声が、真夜の錆びついた口をこじ開けた。

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