EX級アーティファクト化した介護用ガイノイドと行く未来異星世界遺跡探索~君と添い遂げるために~
033 初日の終わり
クリルと別れ、端末の指示に従って訪れた稀人のための宿泊施設。
そこで割り当てられた個室にて。
「疲れたな」
安いビジネスホテル並みに狭い空間に置かれたベッドに腰かけたマグは、息を長く吐き出すようにしながら呟いた。
メタに言われた通り、張り詰めていたものが緩んで一気に疲労が溢れ出たようだ。
宿泊施設の雰囲気は街並みに合致したファンタジー的な旅の宿屋。
一階には深夜まで営業している食事処も併設しており、既に夕食も取っている。
内容は特筆することもないパン主体の普通過ぎる洋食で、拍子抜けしてしまった。
もっとも、稀人用の無料食料支援サービスを利用可能な安価な飲食店。
さすがに特殊で豪華なものがラインナップされているはずもないが。
働いて金銭を得られたら、未来の異星特有の食を探してもいいかもしれない。
「旦那様、ベッドにうつ伏せになって下さい。マッサージいたします」
「ああ。悪いな、アテラ」
「いえ、介護用ガイノイドの本分ですから」
気取ったようにディスプレイに【( ー`дー´)キリッ】と文字を表示させるアテラ。
しかし、声色はマグの役に立てることこそが至上の喜びと言うように明るい。
画面に浮かんだ文字の背景も緑色に淡く光っている。
そんな彼女が相手だからこそ、マグは遠慮せずに言われた通りにした。
「加減は如何ですか?」
「丁度いいよ」
熟練の按摩もかくやという技術に、凝った体が解きほぐされていく。
元々はネットワークを介して得た知識の再現に過ぎなかった。
だが、何度も実践してきたことで既に彼女自身のスキルとして昇華されている。
疲労が明日まで残ることはないだろう。
「旦那様、無理はなさらないで下さいね。遺跡探索は危険なようですから」
「…………悪いな。アテラの意見も聞かずに」
「いえ。私は旦那様の意思と選択を尊重し、それが叶うように尽力するのみです」
当たり前の事実としてアテラは落ち着いた口調で告げる。
そこに迷いは一切ない。
ただ、それとマグを心配する気持ちは別の話というだけだ。
「ありがとな」
「礼には及びません。それが私の存在意義ですから」
再び澄ましたように応じるアテラだが、声色は一層のこと嬉しそうだ。
ディスプレイの緑色もより鮮やかになっているのが照り返しで分かる。
マグに対する献身が彼女にとって当然であれ、感謝の気持ちは忘れてはならない。
「まあ、でも…………全く見込みのない奴に勧めたりはしないだろうしな」
マッサージを受けながら端末を操作し、空中ディスプレイを開く。
それからマグは、更新されたらしい自分とアテラの情報を表示させた。
マグ・アド・マキナ
種族 :旧人
人格 :やや異質(治安を乱すものではない)
パワー :E
スピード :E
戦闘レベル :E-
超越現象タイプ:干渉・他
判定 :戦闘不可(先史兵装にて武装した場合は可能)
備考 :超越現象は対象の状態を任意の時点に戻すもの。
アテラ・エクス・マキナ
種族 :機人(アーティファクトランク:EX)
人格 :可(所有者の管理を要する)
パワー :D
スピード :D+(【アクセラレーター】使用時:EX)
戦闘レベル :C+
超越現象タイプ:干渉・自
判定 :戦闘可(先史兵装にて武装した場合は推奨)
備考 :超越現象は機械装置の吸収と機能の習得。
得られた機能によっては戦闘適性が大幅に上昇する可能性有。
断片の保有は確認できず。
流し見しただけでも変化している部分がいくつかある。
中でも目立つのは戦闘面でのアテラの評価が随分上昇していることか。
間違いなく先史兵装【アクセラレーター】のおかげだろう。
一方、断片とやらについては相変わらず説明がないままだ。
アテラが端末から検索しても何一つ情報を得られないらしい謎の単語。
色々あってタイミングを逃したが、その内誰かに聞いてみた方がよさそうだ。
……それはともかくとして。
「俺はやっぱり先史兵装が不可欠、か」
この文面だけだと本当に探索を担えるのか少し心配になる。
しかし、街の管理者たる者、人を使い捨てにするような無駄はしないはずだ。
ブラック企業の経営者や無能な暴君ならいざ知らず、余りに非合理的過ぎる。
己の望みを叶えんと欲するならば、メタの言葉を信じる以外にない。
危険性も全て伝聞のみの今、後は自分自身の準備次第と思考を切り上げるべきだ。
「……いずれにしても明日、諸々情報を収集するとしよう」
「はい。であれば、旦那様。そろそろ、お休みになられた方がよろしいかと」
「そうだな」
異なる環境に順応するまでは何を置いても気力と体力が必要だ。
早めに寝た方がいい。
だからマグはアテラの言葉に頷き、ベッドに仰向けになった。
すると、待ち構えていたかのようにすぐさま睡魔がやってくる。
「では、お休みなさいませ。旦那様」
そしてマグはアテラに見守られながら眠りに落ち……。
濃密の異星での初日は、こうして終わりを告げたのだった。
そこで割り当てられた個室にて。
「疲れたな」
安いビジネスホテル並みに狭い空間に置かれたベッドに腰かけたマグは、息を長く吐き出すようにしながら呟いた。
メタに言われた通り、張り詰めていたものが緩んで一気に疲労が溢れ出たようだ。
宿泊施設の雰囲気は街並みに合致したファンタジー的な旅の宿屋。
一階には深夜まで営業している食事処も併設しており、既に夕食も取っている。
内容は特筆することもないパン主体の普通過ぎる洋食で、拍子抜けしてしまった。
もっとも、稀人用の無料食料支援サービスを利用可能な安価な飲食店。
さすがに特殊で豪華なものがラインナップされているはずもないが。
働いて金銭を得られたら、未来の異星特有の食を探してもいいかもしれない。
「旦那様、ベッドにうつ伏せになって下さい。マッサージいたします」
「ああ。悪いな、アテラ」
「いえ、介護用ガイノイドの本分ですから」
気取ったようにディスプレイに【( ー`дー´)キリッ】と文字を表示させるアテラ。
しかし、声色はマグの役に立てることこそが至上の喜びと言うように明るい。
画面に浮かんだ文字の背景も緑色に淡く光っている。
そんな彼女が相手だからこそ、マグは遠慮せずに言われた通りにした。
「加減は如何ですか?」
「丁度いいよ」
熟練の按摩もかくやという技術に、凝った体が解きほぐされていく。
元々はネットワークを介して得た知識の再現に過ぎなかった。
だが、何度も実践してきたことで既に彼女自身のスキルとして昇華されている。
疲労が明日まで残ることはないだろう。
「旦那様、無理はなさらないで下さいね。遺跡探索は危険なようですから」
「…………悪いな。アテラの意見も聞かずに」
「いえ。私は旦那様の意思と選択を尊重し、それが叶うように尽力するのみです」
当たり前の事実としてアテラは落ち着いた口調で告げる。
そこに迷いは一切ない。
ただ、それとマグを心配する気持ちは別の話というだけだ。
「ありがとな」
「礼には及びません。それが私の存在意義ですから」
再び澄ましたように応じるアテラだが、声色は一層のこと嬉しそうだ。
ディスプレイの緑色もより鮮やかになっているのが照り返しで分かる。
マグに対する献身が彼女にとって当然であれ、感謝の気持ちは忘れてはならない。
「まあ、でも…………全く見込みのない奴に勧めたりはしないだろうしな」
マッサージを受けながら端末を操作し、空中ディスプレイを開く。
それからマグは、更新されたらしい自分とアテラの情報を表示させた。
マグ・アド・マキナ
種族 :旧人
人格 :やや異質(治安を乱すものではない)
パワー :E
スピード :E
戦闘レベル :E-
超越現象タイプ:干渉・他
判定 :戦闘不可(先史兵装にて武装した場合は可能)
備考 :超越現象は対象の状態を任意の時点に戻すもの。
アテラ・エクス・マキナ
種族 :機人(アーティファクトランク:EX)
人格 :可(所有者の管理を要する)
パワー :D
スピード :D+(【アクセラレーター】使用時:EX)
戦闘レベル :C+
超越現象タイプ:干渉・自
判定 :戦闘可(先史兵装にて武装した場合は推奨)
備考 :超越現象は機械装置の吸収と機能の習得。
得られた機能によっては戦闘適性が大幅に上昇する可能性有。
断片の保有は確認できず。
流し見しただけでも変化している部分がいくつかある。
中でも目立つのは戦闘面でのアテラの評価が随分上昇していることか。
間違いなく先史兵装【アクセラレーター】のおかげだろう。
一方、断片とやらについては相変わらず説明がないままだ。
アテラが端末から検索しても何一つ情報を得られないらしい謎の単語。
色々あってタイミングを逃したが、その内誰かに聞いてみた方がよさそうだ。
……それはともかくとして。
「俺はやっぱり先史兵装が不可欠、か」
この文面だけだと本当に探索を担えるのか少し心配になる。
しかし、街の管理者たる者、人を使い捨てにするような無駄はしないはずだ。
ブラック企業の経営者や無能な暴君ならいざ知らず、余りに非合理的過ぎる。
己の望みを叶えんと欲するならば、メタの言葉を信じる以外にない。
危険性も全て伝聞のみの今、後は自分自身の準備次第と思考を切り上げるべきだ。
「……いずれにしても明日、諸々情報を収集するとしよう」
「はい。であれば、旦那様。そろそろ、お休みになられた方がよろしいかと」
「そうだな」
異なる環境に順応するまでは何を置いても気力と体力が必要だ。
早めに寝た方がいい。
だからマグはアテラの言葉に頷き、ベッドに仰向けになった。
すると、待ち構えていたかのようにすぐさま睡魔がやってくる。
「では、お休みなさいませ。旦那様」
そしてマグはアテラに見守られながら眠りに落ち……。
濃密の異星での初日は、こうして終わりを告げたのだった。
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