EX級アーティファクト化した介護用ガイノイドと行く未来異星世界遺跡探索~君と添い遂げるために~

青空顎門

027 街の管理者

 店の外に出ると、既に日が落ちて薄暗くなっていた。
 道路脇に立っているガス灯のような形状の街灯が謎の光を放っている。
 ガラス容器の中に、フィラメントや発光ダイオードらしきものは見て取れない。
 代わりに、光り輝きながら浮かぶ光球が収まっている。
 恐らく、あれらも全て出土品PTデバイスの類なのだろう。
 おかげで繁華街の如く明るいが、時間帯のせいか人通りは一層少なくなっている。
 表通りも人影はまばらだ。
 そんな中を、先導するクリルの後に続いて歩いていく。

「あそこだ」

 途中、立ちどまって告げた彼女の視線の先には中世ヨーロッパ風の荘厳な屋敷。
 権力者の住居であることは説明がなくとも一目瞭然だ。

「許可なく侵入しようとすると防犯機能が起動する。気をつけることだ」
「いや、不法侵入なんてするつもりないですよ」

 小市民的には、住む世界の違う権力者には可能な限り近づきたくないぐらいだ。
 無理に押し入るつもりはない。

「ならばいいがな」

 対して、クリルは意味深長な声色で呟くと再び歩き出した。
 発言の意図は分からないが、慌ててアテラと並んで後を追いかける。
 やがて敷地を囲う壁に至り、それに沿って回り込むと大きな門が見えてきた。
 その前に立った瞬間、鉄格子の扉が重々しい音と共に独りでに開いていく。
 端末を認証し、ロックを解除しているのだろう。

「下手に動くと閉じ込められる可能性がある故、遅れずについてこい」
「わ、分かりました」

 口振りからすると、クリルはこの屋敷を訪れたことがあるようだ。
 勝手知ったる様子で迷いなく進んでいく。
 エントランスを抜けて二階へ。
 廊下を通って奥へ奥へ。
 どうやら扉の一つ一つが自動制御されているらしい。
 近づくと勝手に開錠されて招き入れるようにドアが開く。
 見た目が古風な洋館であるせいでSFのはずが、若干ホラーの雰囲気だ。
 そんな印象を抱きながらマグが歩いていくと、最奥の扉に行き当たった。

「粗相のないようにな」

 そこでクリルが振り返って忠告する。
 この中に件の街の管理者がいるのだろう。
 マグは気を引き締めながら頷いた。

「うむ。では……」

 再びクリルが前を向くと、待ち構えていたように最後の扉もオートで開いていく。
 そうして視界に映ったのは、白一色の無機質な広い部屋だった。
 中心にはシンプルな机があり、天板にはパソコンらしき大きな端末が置いてある。
 マグとアテラはそんな空間へとクリルの後に続いて足を踏み入れた。
 それから少し机に近づいたところで。

「やあ、初めまして。新たな稀人達。ようこそ、私の街へ」

 その奥側、端末の影から透き通った女性的な声が響いてきた。
 聞き心地はいいが、余りに透明感があり過ぎて逆に違和感を抱かざるを得ない。
 明らかに自然の産物ではない。

「私がここ、秩序の街・多迷宮都市ラヴィリアの管理者たるメタだ。よろしく」

 事実。立ち上がって姿を現したのは、アテラとはまた異なる姿形の機人。
 人間を模した、極めて精巧な少女型のガイノイドだった。

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