EX級アーティファクト化した介護用ガイノイドと行く未来異星世界遺跡探索~君と添い遂げるために~

青空顎門

018 力の作用

 マグ達を舐めているのか、あるいは身体能力は然程ではないのか。
 ヒンドランの動きはマグにも認識できる程度の速さだった。
 脅威の程度としても高が知れている。
 何もせずともアテラ一人で対処可能なレベルだっただろう。しかし……。

「俺のアテラに、触るな」

 さすがに堪忍袋の緒が切れ、マグは自らヒンドランの手首を掴み取った。

「くっ、この、離せ! ものを知らぬ稀人が!」

 対して彼は、マグの手を振り払おうとしながら声を荒げる。

「こちらが下手に出ればつけ上がりやがって!」

 もはや口調を取り繕おうともしていない。
 マグを見下しているのがありありと分かる。
 いい鴨としか見ていなかったのだろう。

「そんな旧式の機人に価値があるのは今だけだ! 伝手も何もない稀人が、鉄屑を抱えて生きていけると思っているのか!?」
「お前っ! 言うに事欠いて、鉄屑だとっ!?」

 ヒンドランの暴言に、マグは感情のまま思い切り手に力を込めた。
 次の瞬間、アテラの腕を修復した時と同じような感覚を抱く。
 どうも気持ちの昂ぶりによって超越現象PBPを発動してしまったらしい。
 直後、マグは手首を掴む感触が徐々に変化していっているのを感じた。

「ひっ、な、何だ」

 ヒンドランもまた我が身に起きた異変を感じ取ったのか、恐怖の滲んだ声を出す。
 視線の先。マグに掴まれた彼の右前腕は、いつの間にか子供のように縮んでいた。
 手首は頼りないぐらいに細くなり、しかし、肌は少年のように瑞々しい。
 前腕だけ若返っているとしか思えないような状態だった。
 バランスが余りにおかしく、違和感を抱かざるを得ない。

「や、やめろ。やめてくれ」

 異常な現象を目の当たりにして、ヒンドランは恐れおののき懇願する。
 その反応を見る限り、苦痛の類は全くないようではある。
 しかし、それが逆に恐怖心のみを強烈に掻き立てる要因となっているのだろう。
 実際、傍から見ているだけでも異様で恐ろしい光景だ。
 それだけに、マグは無意識にヒンドランの手を離してしまった。

「ひ、ひいいっ」

 次の瞬間、彼は情けない悲鳴と共に一目散に建物の外へと走り去っていく。
 己の力に戸惑いを抱いていたマグにそれをとめることはできず、ただただ呆然とヒンドランの背中を見送ることしかできなかった。

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