EX級アーティファクト化した介護用ガイノイドと行く未来異星世界遺跡探索~君と添い遂げるために~
016 先延ばし
「アテラさんに紹介できるものは……申し訳ありませんが、現状ではありません。先程申しました心身共に厳しい仕事以外には」
「……何故ですか?」
「超越現象が不確定なのもありますが、現行の能力では需要がありませんので」
「え? 俺よりも身体能力が優れているのに?」
アテラの問いに対するレセの返答を受け、マグは一先ずリストにあった謎の仕事について質問するのは後回しにして尋ねた。
「はい。身体強化系の超越現象持ちと比べると明確に劣っていますので。Dランク前後では最低レベルの身体強化にも及びませんし、数も飽和しています」
レセの率直な説明に、思わず眉間にしわを寄せる。
マグからすれば段違いに思えた運動性能も、ここでは基準以下に過ぎないらしい。
「では、その仕事でも構いません」
「……いやいや、待て待て」
考える間にサラッとアテラが告げ、虚をつかれて一瞬反応が遅れる。
マグは慌てて彼女を制止し、頭部ディスプレイを見詰めながら言葉を続けた。
「アテラにそんなことはさせられない」
「ですが、伴侶として何もしない訳には……」
「だからって一人だけハードな仕事をするのは違うだろう。それは最後の手段だ」
苦楽を分かち合ってこそのパートナーというものだろう。
とは言え、わざわざ困難な道を歩むのは別の方法を模索してからでいい。
「レセさん。この仕事の詳細を教えて下さいますか?」
マグはリストからあの怪しい仕事を選択し、レセに空中ディスプレイを見せた。
すると、彼女は僅かに驚いたように一瞬目を見開き、それから表情を戻した。
「……そこは余り期待しない方がいいですよ。多くの修復系超越現象持ちが面接を受けていますが、彼女のところで雇って貰えた者は一人としていませんので」
「えっと、そうなんですか?」
「詳細をご覧下さい。通常修復不可能な物品の修復が条件となっています。……ですので、この場では本来ならリストアップされないはずなのですが」
呟くように後半部分をつけ足すレセ。
少し気勢が削がれてしまった感もあるが、僅かなりとも脈があると判断されたからこそリストアップされたと期待してもバチは当たるまい。
何ごとも挑んでみなければ、始まるものも始まらないのだから。
「いずれにせよ、すぐ決定しなければならない訳ではありません。まだアテラさんの超越現象も詳細が不明ですし、支援を受けながら検証を行うのがよろしいかと」
「……確かに、焦って決めてもいいことはないですね」
急いてはことを仕損じるとも言う。
今この瞬間は、一ヶ月も猶予があると認識した方がいい場面かもしれない。
「お二人の能力に関する情報は端末を通して自動で更新されます。次回以降はそれに基づいて新たにリストアップした職場を提示いたしますので」
「分かりました。では、今日のところは、この方を訪ねて……その後はレセさんのおっしゃる通り能力の検証を行おうと思います」
「承知いたしました。では、先方へはこちらから連絡しておきます」
「ありがとうございます。失礼します」「失礼します」
アテラと二人頭を下げ、窓口を離れる。
色々と考えなければならないことはあるが、まずは件の仕事を確かめてからだ。
「とりあえず行こうか、アテラ」
「はい。旦那様」
職業斡旋所を出ようと出口へと向かう。すると――。
「ちょっとお待ちを」
二人の前に壮年の男性が立ち塞がるように現れた。
彼は如何にも軽薄そうな営業スマイルを浮かべながら口を開く。
「その機人を売る気はありませんか?」
「……何故ですか?」
「超越現象が不確定なのもありますが、現行の能力では需要がありませんので」
「え? 俺よりも身体能力が優れているのに?」
アテラの問いに対するレセの返答を受け、マグは一先ずリストにあった謎の仕事について質問するのは後回しにして尋ねた。
「はい。身体強化系の超越現象持ちと比べると明確に劣っていますので。Dランク前後では最低レベルの身体強化にも及びませんし、数も飽和しています」
レセの率直な説明に、思わず眉間にしわを寄せる。
マグからすれば段違いに思えた運動性能も、ここでは基準以下に過ぎないらしい。
「では、その仕事でも構いません」
「……いやいや、待て待て」
考える間にサラッとアテラが告げ、虚をつかれて一瞬反応が遅れる。
マグは慌てて彼女を制止し、頭部ディスプレイを見詰めながら言葉を続けた。
「アテラにそんなことはさせられない」
「ですが、伴侶として何もしない訳には……」
「だからって一人だけハードな仕事をするのは違うだろう。それは最後の手段だ」
苦楽を分かち合ってこそのパートナーというものだろう。
とは言え、わざわざ困難な道を歩むのは別の方法を模索してからでいい。
「レセさん。この仕事の詳細を教えて下さいますか?」
マグはリストからあの怪しい仕事を選択し、レセに空中ディスプレイを見せた。
すると、彼女は僅かに驚いたように一瞬目を見開き、それから表情を戻した。
「……そこは余り期待しない方がいいですよ。多くの修復系超越現象持ちが面接を受けていますが、彼女のところで雇って貰えた者は一人としていませんので」
「えっと、そうなんですか?」
「詳細をご覧下さい。通常修復不可能な物品の修復が条件となっています。……ですので、この場では本来ならリストアップされないはずなのですが」
呟くように後半部分をつけ足すレセ。
少し気勢が削がれてしまった感もあるが、僅かなりとも脈があると判断されたからこそリストアップされたと期待してもバチは当たるまい。
何ごとも挑んでみなければ、始まるものも始まらないのだから。
「いずれにせよ、すぐ決定しなければならない訳ではありません。まだアテラさんの超越現象も詳細が不明ですし、支援を受けながら検証を行うのがよろしいかと」
「……確かに、焦って決めてもいいことはないですね」
急いてはことを仕損じるとも言う。
今この瞬間は、一ヶ月も猶予があると認識した方がいい場面かもしれない。
「お二人の能力に関する情報は端末を通して自動で更新されます。次回以降はそれに基づいて新たにリストアップした職場を提示いたしますので」
「分かりました。では、今日のところは、この方を訪ねて……その後はレセさんのおっしゃる通り能力の検証を行おうと思います」
「承知いたしました。では、先方へはこちらから連絡しておきます」
「ありがとうございます。失礼します」「失礼します」
アテラと二人頭を下げ、窓口を離れる。
色々と考えなければならないことはあるが、まずは件の仕事を確かめてからだ。
「とりあえず行こうか、アテラ」
「はい。旦那様」
職業斡旋所を出ようと出口へと向かう。すると――。
「ちょっとお待ちを」
二人の前に壮年の男性が立ち塞がるように現れた。
彼は如何にも軽薄そうな営業スマイルを浮かべながら口を開く。
「その機人を売る気はありませんか?」
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