EX級アーティファクト化した介護用ガイノイドと行く未来異星世界遺跡探索~君と添い遂げるために~
014 職業斡旋所
通行人達の好奇の目を黙殺しながらやってきた職業斡旋所。
一般向けということもあってか外観に突飛なところはない。
全く面白みのない、如何にも役所という雰囲気だ。
「職業斡旋所って、つまるところハローワークだよな」
「公共事業のようですし、そう呼んで差し支えないかと」
「……まあ、ファンタジー味もSF味も薄れるけどな」
益体もないことを言いつつ、両開きのガラス扉を開けて早速建物に入る。
内部は外観よりも更に役所然としていた。
床はリノリウム風で、いくつもの窓口と待合席が整然と並んでいるのが見える。
椅子は皮張りで座り心地がよさそうだ。
「あそこに腕輪をかざして整理番号を取得するようです」
端末を介して利用方法を検索したのだろう。
アテラは言いながら、入口すぐに設置されていた装置を指差した。
見た感じ、手をかざし易い高さの黒い角柱だ。
マグは彼女に言われるまま、その上面に腕輪を近づけた。
すると、空中ディスプレイが出現し、番号が表示される。
かと思えば、即座に特定の窓口に向かうよう指示する文面へと変わった。
「転移し立ての稀人は優先されるみたいですね」
「成程」
疑問を先回りするように告げたアテラの答えに納得して頷く。
そうしていると、背後に人が並ぶ気配を感じた。
別の利用者が来たのだろう。
マグはそう判断し、アテラと共にその場を離れて指定された窓口を目指した。
すると、そこには既に営業スマイル全開な女性が待ち構えていて――。
「ようこそ。秩序の街・多迷宮都市ラヴィリアの職業斡旋所へ。本日は私、レセ・スタービットが対応させていただきます。よろしくお願いいたします」
彼女はそう言うと慇懃に頭を下げてきた。
今の価値観は分からないが、マグの時代では美人と言って差し支えない容姿だ。
ファンタジー風の制服はパリッとしていて、有能そうな雰囲気も醸し出している。
もし指名することが可能なら相談者が殺到しそうだ。しかし……。
「マグ・アド・マキナです。よろしくお願いします」
そんな美女にマグは淡々と応じ、アテラと並んで席に着いた。
人形偏愛のケがあるマグにとって、生身の女性は恋愛的な興味の対象ではない。
性別など関係なく、対等な人間としてニュートラルに対応するのみだ。
門番の時とは違って丁寧語なのは、混乱が収まってきたからに他ならない。
「……まずは稀人の処遇についてお伝えいたします」
マグの薄い反応に納得がいかない表情を浮かべつつも対応を始めるレセ。
外見で釣って、ある程度この街にとって都合のいいように誘導しようという意図でもあったのかもしれない。
ともあれ、レセの説明が開始される。
「転移をなさったばかりの稀人は金銭をお持ちでありません。元いた時代の貨幣を所持している場合はありますが、この街では使用できませんので」
マグの所持品は最期の瞬間に身に着けていた服ぐらいのもの。
アテラもあの場面では財布になど触れてもいない。
当時のお金が使えようが使えまいが、一文なしなのは変わらない。
「すぐに働き先が見つかったとしても生活はできないでしょうから、一ヶ月程度の食事と住居の支援は行います。それまでに生活基盤を整えて下さい」
割と手厚い保護にも思える。
だが、悠長にしていたら一ヶ月などあっと言う間だ。
「できなければ?」
「街を出て野垂れ死にするか、心身共に厳しい仕事につくか。二つに一つです」
若干冷たさを感じるレセの返答に気分が沈み込む。
街の外の実態は分からないが、着の身着のまま放り出されて生きていけるとはとても思えない。だからと言って、ブラック企業は正直もう勘弁願いたい。
マグは自身の過去を顧みながら、早く真っ当な職につこうと強く思った。
一般向けということもあってか外観に突飛なところはない。
全く面白みのない、如何にも役所という雰囲気だ。
「職業斡旋所って、つまるところハローワークだよな」
「公共事業のようですし、そう呼んで差し支えないかと」
「……まあ、ファンタジー味もSF味も薄れるけどな」
益体もないことを言いつつ、両開きのガラス扉を開けて早速建物に入る。
内部は外観よりも更に役所然としていた。
床はリノリウム風で、いくつもの窓口と待合席が整然と並んでいるのが見える。
椅子は皮張りで座り心地がよさそうだ。
「あそこに腕輪をかざして整理番号を取得するようです」
端末を介して利用方法を検索したのだろう。
アテラは言いながら、入口すぐに設置されていた装置を指差した。
見た感じ、手をかざし易い高さの黒い角柱だ。
マグは彼女に言われるまま、その上面に腕輪を近づけた。
すると、空中ディスプレイが出現し、番号が表示される。
かと思えば、即座に特定の窓口に向かうよう指示する文面へと変わった。
「転移し立ての稀人は優先されるみたいですね」
「成程」
疑問を先回りするように告げたアテラの答えに納得して頷く。
そうしていると、背後に人が並ぶ気配を感じた。
別の利用者が来たのだろう。
マグはそう判断し、アテラと共にその場を離れて指定された窓口を目指した。
すると、そこには既に営業スマイル全開な女性が待ち構えていて――。
「ようこそ。秩序の街・多迷宮都市ラヴィリアの職業斡旋所へ。本日は私、レセ・スタービットが対応させていただきます。よろしくお願いいたします」
彼女はそう言うと慇懃に頭を下げてきた。
今の価値観は分からないが、マグの時代では美人と言って差し支えない容姿だ。
ファンタジー風の制服はパリッとしていて、有能そうな雰囲気も醸し出している。
もし指名することが可能なら相談者が殺到しそうだ。しかし……。
「マグ・アド・マキナです。よろしくお願いします」
そんな美女にマグは淡々と応じ、アテラと並んで席に着いた。
人形偏愛のケがあるマグにとって、生身の女性は恋愛的な興味の対象ではない。
性別など関係なく、対等な人間としてニュートラルに対応するのみだ。
門番の時とは違って丁寧語なのは、混乱が収まってきたからに他ならない。
「……まずは稀人の処遇についてお伝えいたします」
マグの薄い反応に納得がいかない表情を浮かべつつも対応を始めるレセ。
外見で釣って、ある程度この街にとって都合のいいように誘導しようという意図でもあったのかもしれない。
ともあれ、レセの説明が開始される。
「転移をなさったばかりの稀人は金銭をお持ちでありません。元いた時代の貨幣を所持している場合はありますが、この街では使用できませんので」
マグの所持品は最期の瞬間に身に着けていた服ぐらいのもの。
アテラもあの場面では財布になど触れてもいない。
当時のお金が使えようが使えまいが、一文なしなのは変わらない。
「すぐに働き先が見つかったとしても生活はできないでしょうから、一ヶ月程度の食事と住居の支援は行います。それまでに生活基盤を整えて下さい」
割と手厚い保護にも思える。
だが、悠長にしていたら一ヶ月などあっと言う間だ。
「できなければ?」
「街を出て野垂れ死にするか、心身共に厳しい仕事につくか。二つに一つです」
若干冷たさを感じるレセの返答に気分が沈み込む。
街の外の実態は分からないが、着の身着のまま放り出されて生きていけるとはとても思えない。だからと言って、ブラック企業は正直もう勘弁願いたい。
マグは自身の過去を顧みながら、早く真っ当な職につこうと強く思った。
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