第５６話　遭遇

-シン視点-


　シューネたちと分かれて俺はダザンの部下のテッシを追っていた。


　テッシは勢いよく木製の階段を駆け上がっていく。


　俺も後を追って階段を上ろうとした。


　しかし、それを見てテッシは笑う。


　テッシは階段の一番上の接合部分を外し、階段を落とした。


　俺は階段と共に落下してしまうが、妖力を足に込めつつ着地する。


　その間にもテッシは先に進んでしまった。


　他の道を探している暇はないだろう。


　俺は、最近の自分の鍛錬の成果にかけてみることにした。


　両足に妖力を込め、助走する。


　その後壁に向かって飛び、壁を蹴ってさらに上を目指した。


　俺が両手を伸ばすと、ぎりぎり二階の床に手が届いた。


　俺は二階へ上がり、テッシの後を追う。


　二階には多くの罠が仕掛けてあった。


　俺は、落とし穴に落ちたり糸に引っかかって罠を作動しないように慎重に進まざるを得なかった。


　俺が進んでいる途中、テッシの叫び声がした。


「ダザン団長ー！！！！」


　それでも俺はまだ罠をかいくぐっている途中で、先に進むまでには数分かかった。


　危険地帯を抜けると、俺はテッシを発見する。


　しかし、テッシは何者かに切られており、血を流して倒れていた。


　確かめると、テッシはもう息をしていない。


　俺は、その先の倉庫へ進んだ。


　部屋には鍵があるようだったが、扉は開いていた。


　俺は音を立てないように慎重に倉庫の中へ入った。


　倉庫の中には、何者かが一人いた。


　その何者かは仮面をしており、黒地に金の花のような模様の入ったローブを纏っていた。


　見渡すと骨董品や煌めく宝があるのにも関わらず、その何者かは手で握ることができるほどの小さい青い石を持っていた。


「礼を言うぞ、アマノ・シン」


　男はどうやらこちらに気づいていたようで、いきなり話しかけてきた。


「誰だ？こんなところで何をしている」


　俺の問いかけには応じず、男が壁に手を当てると、突然壁に爆発したような衝撃が走る。


　男はそこから飛び降りて逃げてしまった。


　俺は駆け寄り、壊された壁の下を覗いたが、下には不幸にも和合隊のメンバーはいないようだった。