天地の落とし穴~異世界たちが覚醒し、人類は激動の時代へ~

天地新生

第49話 霊眼解放

-シン視点-


 俺とアキラは、決勝戦が始まる前に観客席に着くことができた。


 俺たちが席に座った頃にちょうど試合が始まろうとしていた。


 ジーネストという男は屈強な体をしていて、背はハクキューと同じくらいだった。


「それでは決勝戦、ハクキュー選手対ジーネスト選手、始め!」


 試合が開始するがハクキューはじっとしている。


 対するジーネストを見ると、額の辺りに妖力を集中している。


 確かにハクキューは最初額を狙ってきたが、そんなことをして意味があるのだろうか。


 さらに、驚いたことにジーネストは両目を閉じた。


「何をしているんだ?ジーネストは」


「あれはおそらく妖怪に伝わる妖術の中の秘術だよ。多分、見ていれば分かると思う」


 先に動いたのはハクキューだった。


 観客席から改めて見ると、足先に妖力を込めて移動を瞬間的に速くしていることが分かった。


 ハクキューは腹部を狙って構えている。


 そこで、ジーネストが目を開けると同時に全身に妖力が込められる。


 ハクキューの右ストレートがジーネストの腹に命中するが妖力でガードしているためかジーネストは攻撃を耐えた。


 さらに返しに左手でハクキューの右手を掴み、空中に持ち上げる。


 空中で身動きがとれないハクキューをジーネストは右手で殴った。


 ハクキューはそれでも左手でガードした。


 ジーネストはそのままハクキューを床に叩きつける。


 ハクキューは両足で見事に着地し、右手を振りほどいてジーネストから距離をとった。


 この攻防は一見互角のように見えた。


 しかし、ハクキューの右手からは血が出ていた。


 ジーネストが左手でハクキューの右手を握っている時にできた傷だろう。


「何なんだ、妖術の中の秘術って」


「一部の妖怪だけが使える霊眼解放という妖術だよ。一定時間の間、妖力の総量が増える上に全身に妖力を込めることができる」


「総量が増えて全身に妖力を?ずるいな、その技」


 全身に妖力を込めることができるということは妖力を込める読み合いと駆け引きに参加する必要がなくなるだけではない。


 今の戦闘の中でハクキューが傷を負ったように、二か所同時に妖力を込めた強力な攻撃を仕掛けることができる。


 握るだけで血が出たのは総量が増えたために生半可な妖力ではなかったからだろう。


 ハクキューでさえ傷を負わされたのが納得できる。


 霊眼解放という技を使ってくる妖怪相手に、ハクキューも防戦を強いられるのではないのだろうか。


 しかし、時間制限があるのであればハクキューにも勝ち筋はあるはずだ。


 ジーネストもそれを分かってか、すぐにハクキューに仕掛けた。

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