天地の落とし穴~異世界たちが覚醒し、人類は激動の時代へ~

天地新生

第47話 勝つための実力

 ハクキューと俺の実力の差は歴然としていた。


 魂の記憶のおかげでなんとか戦えてはいるが、妖力の練度の差によって俺の方がダメージを受けてしまっている。


 それでも、今のところは魂の記憶を維持するので精一杯だ。


 思えば魂の記憶は昔達人として生きた者の力を借りているわけで、それに匹敵する達人と戦えば苦戦するということは確定していたのだろう。


 この勝負に勝つためには、魂の記憶を超える何かを一瞬でも発揮せねばならないのだと俺は気づいていた。


 俺が取り得るすべての手立てを考えていると、相手の姿がまたしても消えた。


 さっきからの攻防で、魂の記憶は相手の姿を目視していない状態ではうまく発動しないことが分かった。


 俺は、魂の記憶は使わず、視覚以外のあらゆる感覚を使って、相手の位置を補足しようとしていた。


 何度もこのスピードで攻撃を仕掛けられていると、少しずつではあるが、相手の気配を察知できるようになってきていた。


 俺が相手の気配を察知し、俺の左にいることが分かる。


 相手の攻撃方法を見ている余裕はもうない。


 俺は一か八か、相手が左手で殴ってきていることにかけた。


 そして相手を見る間もなく左手で攻撃を受け、右手で攻撃を仕掛ける。


 相手は左手ではなく右手で殴ってきていたが、最早関係ない。


 俺はそのまま相手の腹を狙って妖力を込めた右手で殴った。


 相手は妖力でガードするがまともに攻撃が入る。


 しかし、相手は俺の攻撃に怯むことはなかった。


 相手は左の肘で俺の右腕を上から打ち、俺が態勢を崩した瞬間に右膝で俺の顔を攻撃してきた。


 こうなってしまうともう攻撃を受けるしかない。


 俺は額に妖力を込め、相手の膝蹴りを本気で受け止めた。


 だが、相手の膝蹴りはとてつもない威力で、俺はよろけてしまう。


 相手はそれを狙って両手で連撃を仕掛けてくる。


 この状態から魂の記憶を発動させることはもうできない。


 俺は全力で相手の攻撃を受け止め続けた。


 俺が勝ちうる僅かな可能性にかけて、相手の隙を探す。


 俺は相手の連撃の一つをかわし、カウンターで右手で攻撃した。


 相手は、俺の攻撃を左手で受け止め、右手で俺の腹を攻撃してきた。


 俺は咄嗟に妖力でガードするが、相手は攻撃に妖力を込めてはいなかった。


 相手の本命は、左足の蹴りだった。


 その蹴りはまともに俺の顎に直撃した。


 妖力の読み合い、その経験の差だろうか。


 魂の記憶を発動させていればどうにかなっただろうか。


 いや、おそらくは結局持続させる集中力が切れてしまっていただろう。


 俺の意識は、そこで途絶えた。 

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