天地の落とし穴~異世界たちが覚醒し、人類は激動の時代へ~

天地新生

第41話 力の格差

 俺たちをつけてきた三人組がアキラを囲むと、そのうちの帽子を被った一人が口を開いた。


「妖力を使えるからってあまり調子に乗らない方がいいぞ。特にこの地下街ではなあ!」


 そう言いながら男はアキラに殴り掛かった。


 アキラは男の手を掴むと男の背後に回って動きを封じた。


 他の二人に背後を取られないように帽子の男を盾にする動きだろう。


 その後帽子の男をフードの男の方に飛ばし、その隙に残りの一人に殴り掛かった。


 妖力が込められていたのが見て分かり、殴られた男は吹っ飛んだ。


 その間にフードの男はナイフを構え、帽子の男と共にアキラを取り囲む。


 その後、帽子の男とナイフを持ったフードの男が同時に攻撃した。


 アキラは帽子の男の攻撃を避けて左腕で肘打ちをし、そのまま右手を左の袖の辺りに入れる。


 右手を袖の中から抜くと、驚いたことに右手には刀が握られていた。


 刀でフードの男のナイフを弾くと、刀の切っ先をフードの男の顔に向けた。


 フードの男は腰を抜かしてその場に尻餅をつく。


「参ったよ、まさか選手の仲間もこれほど強いなんてな」


 アキラは下がるフードの男にじりじりと距離を詰め、質問を投げかけた。


「お前たちの目的は何だ?」


「そこの選手にちょっと怪我をしてもらおうと思っただけのことだよ。俺たちは、妖力を使うよそ者が気に食わないんだよ」


「妖力も使えないのによく挑もうと思ったな。いくら三人がかりでも、俺に怪我を負わせることはできなかったと思うぞ」


 俺がアキラたちに近寄って声をかける。


「敵わないかもしれないとしても何もせずにはいられなかった。スラークの仇をとりたかっただけのことだよ」


 スラークというのは俺が二回戦で倒した相手のことだろう。


 負けた腹いせにこんなことをしてくるものだとは思っていなかったが。


「先月の闘技大会に出場していたデインは知っているか?」


「聞き覚えはあるが知らないな」


「行方不明になった出場者については何か知っているか?」


「選手の仲間が試合外で喧嘩をすることはよくある。しかし選手が行方不明になるというのは聞いたことがないな」


「妖怪の仕業だと思うか?」


「分からないが選手が行方不明になるほどのことなら単純な話ではないだろう。だが、妖怪の目的はよく分からないことも多い」


 結局、行方不明となっているデインについての手がかりは見つからないまま、俺たちは現場を後にした。


「妖力を使っていると、いろいろと風当たりが強いな」


「妖怪に対するマイナスのイメージも含まれてるだろうね。妖力には敵わないという現実もきついんだろうけど」


 和合隊内でも感じたが、どうしても埋まらない力の差という形が妖力によって出てきてしまっている。


 それによって、表に出せないフラストレーションが溜まっているのだろう。


 それがこうした形で危険な行動につながってしまうというのが問題なのだが。

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