天地の落とし穴~異世界たちが覚醒し、人類は激動の時代へ~

天地新生

第32話 二番隊隊長

 夜の間、俺は深い眠りについているようだった。


 俺が起きた頃には、同じ部屋の隊員はもう部屋を出ていた。


 朝には挨拶をしておきたいと思っていたが、どうにもタイミングが合わなかったようだ。


 俺は食堂で朝食を済ませ、三番隊隊舎に向かった。


 三番隊隊舎に入ると、受付のレルフが話しかけてきた。


「シンさん、ガルク隊長から伝言です。話はつけておいたから、今日は二番隊隊舎に向かえとのこと。地図は、ここにあります」


 ガルクの話によれば、二番隊隊舎はこの建物とは別の場所にあるらしい。


 俺が地図を受け取ると、レルフはにっこりと笑顔で手を振った。


「お気をつけていってらっしゃいませ!」


 俺はレルフに手を振って三番隊隊舎を出た。


 二番隊隊舎は、街のはずれの森の中にあるようで、少し歩いた。


 他の隊員に場所が分かりにくいようにしているのだろう。


 森の中は市街に比べて随分と静かだった。


 俺が森の中を歩いていると、突然、木の後ろから木剣が振られてきた。


 俺は、半歩後ろに下がりながら木剣を避ける。


 よく見ると、俺が入隊試験の時に戦ったからくり人形と同じような人形が置かれていたみたいだった。


 なぜこんな場所にからくり人形が置かれているのかと疑問に思っていると、木の上から声がした。


「人の気配のない一撃をかわすとは、お主、なかなかやるではないか」


 木の上から、背の低いお爺さんが飛び降りてきた。


「なぜこんな場所にからくり人形があるんですか?」


「時々歓迎していない隊員がやってくるのでな。そいつらを追い払うためよ。お主のような新人を試すためでもあるがな」


 そのお爺さんは、俺をじろじろ見ながらぐるりと回った。


「お主、からくり人形の存在には気づいておらんかったようだな。しかし良い反応だ。あえて言うなら、人の気配を感じぬ時こそ敵がいると思うことだ」


「いずれ危険な場所に行くかもしれませんから、そういうアドバイスはありがたいです」


「何、本当に生死に関わるときには、誰もいないときでも霊視をすればいいだけのことよ」


 俺は試しに、からくり人形の方を見て霊視をしてみた。


 確かに言われた通り、辺りには他にも数体、からくり人形が配置されているのが見えた。


「霊視って便利そうですけど、開戦の合図にもなってしまうから難しいですよね」


「霊視は妖力を込めた武器の種類と位置、どの武器にどれだけの準備をしているかを把握する手段だからな。それに、妖怪かどうかを見分ける最終手段でもある。特に妖怪が霊視されることを嫌うのはそのためよ」


「ご教授いただきありがとうございます。あなたが、二番隊隊長なのですか?」


「いかにも。儂が二番隊隊長、ガジマよ。お主はアマノ・シンで間違いないな?」


「はい、今日からよろしくお願いします」


「それでは儂はこの先の隊舎に戻る。お主はゆっくりと来るがよい。もうからくり人形は攻撃せんから安心せい」


 そう言うと、ガジマは木の上に飛び上がり、凄まじい速さで木の上を飛びながら移動していった。

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