天地の落とし穴~異世界たちが覚醒し、人類は激動の時代へ~

天地新生

第8話 イノムント

 見かけに惑わされたが、どうやらこのインプは敵らしい。


 俺は剣を握りしめ、敵に向かって切りかかる。


「やれやれ、血の気が盛んですねえ!カオスウェーブ!」


 イノムントは隠し持っていた自分の背丈ほどの杖を取り出し、魔法を詠唱した。


 空中で身動きがとれなかった俺は、黒い衝撃派を剣で受けて後ろに飛ばされた。


「ハンズバインド!」


 イノムントから紫色の大きな手がこちらに向かって飛んでくる。


 俺は横に避けたが、その紫色の手は追尾してきた。


 俺は、無視してイノムントの方へ走った。


「カオスウェーブ!」


 イノムントが最初と同じ魔法を詠唱した。


 俺は今度は体制を低くして攻撃をかわしながら敵に近づき、横に飛びながら剣を振り下ろした。


 俺は剣に込めた魔力を炎に変え、火炎斬を放つ。


 剣を振り下ろす途中で、バリアのようなものに当たったが、そのまま破ることに成功した。


 俺の剣が、敵の首を切り裂いた。


 敵の頭部は飛んでいき、胴体部分は前に倒れた。


「シンさん、お怪我はありませんか!?」


 アカリが声を出しながら駆け寄ってきた。


「まさか魔族まで倒してしまうなんて!さすがです」


「魔法を詠唱して使ってくるから、戦いやすかったよ。敵の前に発生したバリアは何なのか分かる?」


「あれはおそらく魔力障壁です。武器に込めるのとはまた違う魔力の使い方ですね。シンさんの火炎斬の威力には耐えきれなかったようですが」


 魔力の使い方にはいろいろあるようだ。


 俺たちがゆっくりと会話をしていると、突然足元に大穴が開いた。


「シンさん、危ない!!」


 アカリがこちらに飛びついてきて、二人とも大穴に飲み込まれていく。


「シンくん!!アカリ!!」


 キースの声が遠くに聞こえると同時に穴は閉じた。







 その頃、シンたちの戦いの現場では、イノムントの頭部が転がり続けていた。


「これはアンビリバボー!ワタクシの魔力障壁をいとも容易く叩き割ってしまうとは!」


 イノムントの頭部がしゃべると、首より下の部分から、胴体が生え始めた。


 目まぐるしい速度で胴体は成長し、どこからか取り出したローブを羽織る。


「これは、なかなかの有力候補ですねえ、また様子を見に来るとしますか!」


 イノムントは、シンたちが大穴に飲み込まれたことを、この時点ではまだ知らないのであった……。

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