テイマーと錬金術の職業で冒険したい!

青空鰹

錬金術ギルドに訪問! 何か拉致っぽいような気が……

 マナさんの後ろから現れたサシャさんは、無言のままマナさんの肩に手を置いた。

 「ヒィッ ︎」

 しかも肩を掴まれたマナさんは恐怖を感じ取ったのか、短い悲鳴を上げながら尾っぽを縮こまらせる。

 「ご機嫌ようカイリ様。ルル様達も」

 「こ、こんにちわぁ……」

 「クゥン……」

 ルルも怯えながらサシャさんに挨拶をすると、俺の後ろへと隠れてしまった。返事をしなかったプル太郎は、サシャさんが余りに怖いので頭の上で小刻みに震えている。

 「ど、どうしてここにいるので御座いましょうかぁっ?」

 マナさん、言葉遣いがおかしくなっていますよ。てか、市場を見に来たのなら、そんなに怯えた表情をしなくてもいいんじゃない?

 「アナタがいつまでも帰って来ないから、心配になって探しに来たのです」

 「いつまでも?」

 そう言いながらマナさんを見つめると顔を逸らした。

 「やっぱり俺に嘘言ってた?」

 「嘘は言ってない、これから帰るところだったから……」

 「でも、サシャさんが帰りが遅いって言ってたよね?」

 「マーケティングに時間が掛かっただけだから、気にしないで」

 ああ、嘘を吐いているって理解出来るわ、これ。

 「さぁマナ。邸宅に帰りますよ」

 「ちょっ、ちょっと待ってサシャ!」

 マナさんはそう言うとサシャさんの手を振り解き、俺の手を掴んで来た。

 「私、カイリのことが心配だから、このまま付いて行くことにするよ!」

 「えっ ︎ なn……ムグッ ︎」

 何で? と言う前にマナさんに口を塞がれてしまった。しかも耳元に口を近付けて小声で話し掛けて来た。

 「ここで私を助けてくれれば、何か奢ってあげる」

 え? それ本当? なら助けようかなぁ?

 と思ったのだけれどもサシャさんの圧が凄いので、その考えはすぐに消え失せてしまった。

 「……いいでしょう。マナ、カイリさんの護衛をしてあげなさい」

 「ほ、本当にいいの?」

 「ええ、旦那様の恩人であるカイリ様のこと御守りしてあげて下さいね。もし、カイリ様の身に何かあれば……」

 サシャさんは目を大きく開き、マナさんに顔をグイッと近付ける。

 「アナタの責任になるので注意して下さいね」

 「わ、分かったよ。サシャ」

 「それでは、私は失礼致します」

 ペコリと頭を下げた後、背を向けて歩き出したので俺はホッと胸を撫で下ろした。

 「た……助かったよ、カイリィ〜!」

 マナさんはそう言うと俺に抱き付いて来た。

 「助かったって……元はと言えば仕事をサボっていたマナさんが原因でしょ?」

 「だからサボってはいないって。ただマーケティングに時間が掛かっていただけで……」

 目が泳いでいるよ、目が。言い訳を探しているんじゃないのか?

 「その次いでに、ウィンドウショッピングとかやってないですか?」

 「やってない! 断じてやってないっ ︎」

 睨みながら言うので、何か怪しいと感じてしまう。

 「……まぁいいや。これから錬金術ギルドに向かうんで、サシャさんに言われた通り、護衛よろしく」

 「分かったよ! プル太郎を抱き上げてもいい?」

 「プル太郎が嫌って言わなければ、抱っこして構わない」

 プルンッ!

 プル太郎も「仕方ないなぁ……」と言わんばかりにマナさんに抱っこされる。

 「う〜ん! やっぱりプル太郎の身体はモチモチしてて気持ちいいねぇ!」

 なんたって自慢の子だかなっ ︎

 心でそう思った後に錬金術ギルドへと向かう為、歩き出した。

 「ところでカイリ。錬金術ギルドに行くってことは、ポーションを納品するってことだよね?」

 「そうだね」

 「じゃあ、ウチらの商会にポーションを卸して貰えるん?」

 「まぁそういう契約をしているから、作ったポーションは全部バルグさんの元に行くと思うよ」

 俺がそう言うと、マナさんは首を傾げた。

 「全部? 一部じゃなくて?」

 「いや、だってさぁ。今の俺はMPがMAXの時でも10個ぐらいしか作れないんだよ。それで分けるってどうやればいいんだよ?」

 平等に分けるのは人数次第で可能だけれども、バルグさんは優先権を持っているから、下手したらバルグさんが買い占る形になるのは目に見えている。

 「ああ〜……錬金術ギルドも馬鹿じゃないから、そこら辺は上手くやってくれる筈。だからカイリは錬金術ギルドに従っていればいいよ」

 「……うん。そうする」

 マナさんの言う通り、この世界のことが全く知らない。だから信用出来るバルグさん達に任せちゃった方が身の為かもしれない。

 その後、マナさんがプル太郎を面白そうにプニプニして姿を、ちょこちょこ見ながら錬金術ギルドにやって来た。

 「フンフゥ〜ン……」

 「あの……マナさん。そろそろプル太郎を返してくれないですか?」

 「プル太郎を可愛がっている私に嫉妬したの?」

 「いや、違います。プル太郎が俺の元に帰って来たそうなんです」

 その証拠に「着いたんだから、もういいでしょ!」と言いたそうな感じで、プル太郎が身体をクネクネさせてマナさんから離れようとしている。

 「ああ、そうなの。ありがとうね、プル太郎」

 プル太郎は、にゅるんとマナさんの腕から出ると俺の頭の上に乗った。

 やっぱりプル太郎は俺の頭の上が好きなんだな。

 プル太郎が戻って来たのを確認すると錬金術ギルドの中へと入って行った瞬間、2階からサニーさんが駆け降りて俺の元にやって来た!

 「待っていたわよ、カイリ! 準備出来てるから、私のアトリエに案内するわね!」

 ちょっ ︎ 腕を組んで来るなんて、絶対逃さない感半端ない ︎

 「クゥン……」

 あ、しかもルルが構って欲しそうな顔で俺を見つめて来る。

 「えっとぉ……アトリエに着いたら構ってあげるから、我慢してくれ」

 「キャンッ!」

 ルルが「分かったよ!」と言いたそうな鳴き声を上げる。

 うん、ルルはいい子だ。

 「それよりもぉ〜〜〜っ! 早くアトリエに行くわよぉっ ︎」

 サニーさんはそう言うと俺を2階へと引っ張って行く。

 「無理矢理な人だなぁ〜……」

 マナさんの言う通りだよ。

 そんなこんなでサニーさんが用意したアトリエに連れ込まれ、現在椅子に座って膝の上にルルを乗せて撫でてあげている。

 「それで、そのテーブルに乗せているアイテムは何なんですか?」

 薬草とは違う草が2種類と水が置いる。しかもサニーさんが俺の質問を待っていました! と言わんばかりに顔を近付けて来た!

 「よくぞ聞いてくれました! こっちが魔力ポーション(小)に必要な三日月草で、こっちに持っているのが解毒薬を作るのに必要な解毒草よ!」

 「そ、そうですか……」

 念の為にサニーさんが持っている草を鑑定目で確認する。

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 三日月草
 月の光で光合成をする草。魔力を帯びているので、食べれば魔力がほんの少しだけ回復する。
 味は吐き気を催すほど不味いので、非常時以外食さない方がよい。

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 ーーーーー

 解毒草
 毒状態を緩和してくれる草。解毒の効果が薄いので、5つほどの束にして使わないと効果が現れない。
 もの凄く苦いので、毒状態の時以外使わない方がよい。

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 フ〜ン……2つとも薬にしないと効果が薄いのか。

 「2つとも不味いんだ」

 「そうだよ。サシャに食べさせられた時は、もう吐き掛けた……」

 サシャさんに食べさせられた?

 「マナさん。もしかして今回みたいにサボりの罰で……」

 「そ、そんなことよりも早くマナポーションと解毒薬を作ってあげなよ!」

 あ……誤魔化した。

 「彼女の言う通りよ! 早くアイテムを作ってちょうだい!」

 サニーさんが涙目で訴え掛けて来る! そんなに作って欲しいのかよ!

 「分かりましたから、そんな顔をしないで下さい! 念の為、万物の書でレシピ通りなのか調べさせて貰いますね!」

 そう言った後、万物の書を取り出して調べ始めた……あ、ルルが暇そうに欠伸してる。ゴメン、後で遊んであげるから大人しくしててくれ。

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