テイマーと錬金術の職業で冒険したい!
親バカって言葉はこのことでは?
 バルグさん達と食事を楽しみながら色々と話したが、ジルド帝国の偽造大銀貨の話になったら、バルグさんはフォークとナイフをテーブルに置いて考え込むような顔になった。
 「ジルド帝国の景気が低迷していると聞いていましたが、まさか偽造大銀貨が出回るほどとは……」
 「門番さんと武具屋さんも、同じことを言ってましたよ。その帝国のことは知らないんですが、前はまともだったんですか?」
 「ええ、前任の帝王様はしっかりとしていた方でしたから」
 「前任?」
 「え? もしかしてカイリさんは、1ヶ月前に帝王が変わったことを知らないのですか?」
 「ええまぁ……そういうことには疎いですから」
 嘘です。この世界に来て間もないから、知らないことだらけなんです。
 「……まぁ、私の商会はジルド帝国とは買付けに来た人しか商売しておりませんから、偽造銀貨を受け取る心配はないでしょう」
 「そうね。でもジルド通貨で取り引きしたいって言う人がいるから、そこを考えないと。ねぇ〜、カイトくん」
 「そうだね。しばらくの間は、ジルド通貨で取り引きしないようにしようか。アイリもそう思うでしょう?」
 そう言いながらミレイさんのお腹を見つめる2人の姿に、ちょっと呆れてしまう。
 まだ産まれていないのに名前で呼ぶなんて……このまま行くと、親バカになるんじゃないか?
 そんなことを思っていたら肩をポンポンと叩かれたので、そっちに顔を向けてみたら、プル太郎の触手がブンブン左右に揺れていた。
 「ん? もしかして、この料理を分けて欲しいのか?」
 俺がそう言うと、今度は触手を縦に振った。俺が言った言葉は合っていたみたいだ。
 お腹が減っていたのか? でも、ルルと一緒に魔物用のフードを食べていたよな?
 そのルルの顔を向けて見ると食べ終えて暇を持て余していたのか、メイドさんと遊んでいる。
 「足りなかったのかな? 食べていいよ」
 ステーキを切って差し出すと、触手で触手で絡め取って自分の体内へと入れた。
 プルンッ ︎ プルンッ ︎
 どうやら美味しかったみたいで、飛び跳ねて喜んでいる。
 「カイリちゃん。プル太郎ちゃんは喜んでいるの? それとも、お口に合わなかった?」
 「プル太郎の気持ちは何となくしか分かりませんが、多分ステーキが美味しくて飛び跳ねているんだと思います」
 現にもう一個欲しいのか、また触手を伸ばして来ている。
 「もう一個欲しいんだな。ちょっと待ってくれ」
 俺がそう言ったら、否定するように触手を横に振った。
 「えっ? 違う? もしかして、他のものを食べたいのか?」
 俺の問いにプル太郎は、「うん!」と言うように触手を縦に振った。
 他のも味見してみたいのか?
 そんなことを思っていたら、触手がにょぉ〜んと伸びてパンのところで止まった。
 ああなるほど。パンも食べてみたいんだな。
 「分かった。ちょっと待っててくれ」
 そう言ってパンを千切りプル太郎に差し出したら、またしても絡め取って体内へと入れたのだが……。
 ……あれ? 今度は飛び跳ねないぞ。もしかして、口に合わなかったのか? それともパンが美味しくなかったのか?
 そんなことを思いながらパンを食べてみたら、普通に美味しかった。
 「気に入らなかった?」
 俺がそう聞くと、プル太郎は「そんなことないよ」と言うように、触手を横に振った。そして俺の膝に飛び移って来た。
 「お、おう!」
 プル太郎の行動にちょっと驚いたけど、ルルのように甘えて来る訳じゃないから、このまま食事を続けよう。
 「クゥ〜ン……」
 「……ん?」
 今度はルルが俺に甘えたそうにしている。
 かっ、可愛い奴めぇ!
 「今は食事をしているから、あとで」
 「キャンッ ︎」
 「今じゃなきゃイヤッ ︎」と言わんばかりに、俺の膝下に両前足を乗っけて来た。多分、プル太郎に嫉妬したんだと思う。
 「あらぁ〜、カイリちゃんは本当に従魔から愛されていますね」
 「そうですね。アイリが産まれたら、私達もペットを飼うことにしましょう。きっといい遊び相手になってくれると思います」
 「そうですね。ところで旦那様は何を飼うのか決まっているのですか?」
 「私達ではフェンリルは流石に飼えないから、犬がいいんじゃないかと思っております」
 「犬! いいですね! カイトくんがワンちゃんと仲良く遊ぶ姿が目に浮かぶわぁ〜」
 「ええ、私もアイリがワンちゃんと戯れる姿が目に浮かびます」
 そう言ってお腹を見つめる2人の姿を見た俺は、ため息を吐くのをグッと堪える。
 この人達は本当に俺の影響を受けているな。
 そんなことを思いつつ夕食を食べ終えると、食事中にずっと構って欲しそうにしていたルルとも遊んであげる。
 「本当に、今日はありがとうございました」
 「いえいえ、お礼を述べるのはこちらの方ですよ」
 「そうです。カイリちゃんのおかげで、この子のことに気付けたのですから」
 ミレイさんはそういうと、お腹を愛おしそうに撫でる。
 「何かあれば我々に仰って下さい。お力になりますよ」
 「はい、それでは」
 「キャンッ!」
 ルルは「じゃあね!」と吠え、プル太郎に関しては伸ばした触手を振って「バイバイ」とアピールしている。
 日が沈んじゃったけど、街頭の明かりがあるから大丈夫だよな。それに……。
 「いやぁ〜、カイリのおかげでいいものを食べられたよぉ〜!」
 戦闘職のマナが宿まで送ってくれるのだから、大丈夫な筈だ。本人は呑気にしているけど。
 「カイリも従魔が増えたんだし、鍛えていけばS級の冒険者になれるんじゃないかなぁ?」
 「それはどうかなぁ?」
 「どうして? 不安なことでもあるの?」
 「いやだって、生産職の俺が冒険者をやるんですよ。普通はあり得ないことでしょ」
 錬金術ギルドでも、珍しそうにしていたしな。
 「いんや、そんなことはないよ。現に冒険者と共に行動する錬金術師は結構いるし、何よりも回復薬や強化薬とかを作ってくれるから重宝されることが多いよ」
 ん? んんん? 一体どういうことだ? 錬金術師で冒険する人は稀って女神様達は稀って言ってた気がするぞ。
 「まぁ、カイリも気の合うパーティーを早く見つけて後衛に専念出来るようにしないとね」
 ……ああ、なるほど。サクラ様達は俺1人で色んなところを回って行くと思っていたんだろうな。
 それは当たりっちゃ当たりだけど、誰かと組める状況なら臨時って形で入れて貰うつもりだ。
 「そうだね。でも先ずは自分のレベルを上げないと意味がなさそう」
 「アハハッ ︎ そうだったね。受付けの連中と依頼を相談すれば、カイリに見合った依頼を選んでくれると思う。
 そうだ! アンジーって子がいないか聞いてみて、私の友人だからきっと力になってくれるよ!」
 「アンジーさん? 分かった。覚えておくよ」
 マナさんがこの様子だから、その人の人柄に不安を感じる。
 「……カイリ、何か変なことを考えてない?」
 「へ? いや別に、変なことなんて全く考えていないぞ」
 「そう。もう宿に着いたから、帰るね! バイバァ〜イ!」
 マナさんはそう言うと、スキップしながら来た道を進んで行く。
 ホント、あの人と喋ると調子狂うなぁ。
 そう思いながら宿へと入って行くと、キツい目でユーダさんが俺を見つめて来る。
 「お帰り、遅かったな」
 「た、ただいま……です」
 「……ミレイの腹に子供が出来ていてよかったな」
 「まぁ……そう、ですね」
 そして訪れる沈黙に、なんとも言えない空気が漂う。そんな中ユーダさんは部屋鍵を取り出して俺に差し出して来た。
 「……ほらよ、鍵。明日から冒険者として活動するのなら、しっかり身体を休めろよ」
 「あ、はい。部屋に行こうルル」
 「キャンッ!」
 ルルを引き連れて部屋に戻ると、就寝準備を整えてからベッドに寝そべった目を閉じたのだった。
 「ジルド帝国の景気が低迷していると聞いていましたが、まさか偽造大銀貨が出回るほどとは……」
 「門番さんと武具屋さんも、同じことを言ってましたよ。その帝国のことは知らないんですが、前はまともだったんですか?」
 「ええ、前任の帝王様はしっかりとしていた方でしたから」
 「前任?」
 「え? もしかしてカイリさんは、1ヶ月前に帝王が変わったことを知らないのですか?」
 「ええまぁ……そういうことには疎いですから」
 嘘です。この世界に来て間もないから、知らないことだらけなんです。
 「……まぁ、私の商会はジルド帝国とは買付けに来た人しか商売しておりませんから、偽造銀貨を受け取る心配はないでしょう」
 「そうね。でもジルド通貨で取り引きしたいって言う人がいるから、そこを考えないと。ねぇ〜、カイトくん」
 「そうだね。しばらくの間は、ジルド通貨で取り引きしないようにしようか。アイリもそう思うでしょう?」
 そう言いながらミレイさんのお腹を見つめる2人の姿に、ちょっと呆れてしまう。
 まだ産まれていないのに名前で呼ぶなんて……このまま行くと、親バカになるんじゃないか?
 そんなことを思っていたら肩をポンポンと叩かれたので、そっちに顔を向けてみたら、プル太郎の触手がブンブン左右に揺れていた。
 「ん? もしかして、この料理を分けて欲しいのか?」
 俺がそう言うと、今度は触手を縦に振った。俺が言った言葉は合っていたみたいだ。
 お腹が減っていたのか? でも、ルルと一緒に魔物用のフードを食べていたよな?
 そのルルの顔を向けて見ると食べ終えて暇を持て余していたのか、メイドさんと遊んでいる。
 「足りなかったのかな? 食べていいよ」
 ステーキを切って差し出すと、触手で触手で絡め取って自分の体内へと入れた。
 プルンッ ︎ プルンッ ︎
 どうやら美味しかったみたいで、飛び跳ねて喜んでいる。
 「カイリちゃん。プル太郎ちゃんは喜んでいるの? それとも、お口に合わなかった?」
 「プル太郎の気持ちは何となくしか分かりませんが、多分ステーキが美味しくて飛び跳ねているんだと思います」
 現にもう一個欲しいのか、また触手を伸ばして来ている。
 「もう一個欲しいんだな。ちょっと待ってくれ」
 俺がそう言ったら、否定するように触手を横に振った。
 「えっ? 違う? もしかして、他のものを食べたいのか?」
 俺の問いにプル太郎は、「うん!」と言うように触手を縦に振った。
 他のも味見してみたいのか?
 そんなことを思っていたら、触手がにょぉ〜んと伸びてパンのところで止まった。
 ああなるほど。パンも食べてみたいんだな。
 「分かった。ちょっと待っててくれ」
 そう言ってパンを千切りプル太郎に差し出したら、またしても絡め取って体内へと入れたのだが……。
 ……あれ? 今度は飛び跳ねないぞ。もしかして、口に合わなかったのか? それともパンが美味しくなかったのか?
 そんなことを思いながらパンを食べてみたら、普通に美味しかった。
 「気に入らなかった?」
 俺がそう聞くと、プル太郎は「そんなことないよ」と言うように、触手を横に振った。そして俺の膝に飛び移って来た。
 「お、おう!」
 プル太郎の行動にちょっと驚いたけど、ルルのように甘えて来る訳じゃないから、このまま食事を続けよう。
 「クゥ〜ン……」
 「……ん?」
 今度はルルが俺に甘えたそうにしている。
 かっ、可愛い奴めぇ!
 「今は食事をしているから、あとで」
 「キャンッ ︎」
 「今じゃなきゃイヤッ ︎」と言わんばかりに、俺の膝下に両前足を乗っけて来た。多分、プル太郎に嫉妬したんだと思う。
 「あらぁ〜、カイリちゃんは本当に従魔から愛されていますね」
 「そうですね。アイリが産まれたら、私達もペットを飼うことにしましょう。きっといい遊び相手になってくれると思います」
 「そうですね。ところで旦那様は何を飼うのか決まっているのですか?」
 「私達ではフェンリルは流石に飼えないから、犬がいいんじゃないかと思っております」
 「犬! いいですね! カイトくんがワンちゃんと仲良く遊ぶ姿が目に浮かぶわぁ〜」
 「ええ、私もアイリがワンちゃんと戯れる姿が目に浮かびます」
 そう言ってお腹を見つめる2人の姿を見た俺は、ため息を吐くのをグッと堪える。
 この人達は本当に俺の影響を受けているな。
 そんなことを思いつつ夕食を食べ終えると、食事中にずっと構って欲しそうにしていたルルとも遊んであげる。
 「本当に、今日はありがとうございました」
 「いえいえ、お礼を述べるのはこちらの方ですよ」
 「そうです。カイリちゃんのおかげで、この子のことに気付けたのですから」
 ミレイさんはそういうと、お腹を愛おしそうに撫でる。
 「何かあれば我々に仰って下さい。お力になりますよ」
 「はい、それでは」
 「キャンッ!」
 ルルは「じゃあね!」と吠え、プル太郎に関しては伸ばした触手を振って「バイバイ」とアピールしている。
 日が沈んじゃったけど、街頭の明かりがあるから大丈夫だよな。それに……。
 「いやぁ〜、カイリのおかげでいいものを食べられたよぉ〜!」
 戦闘職のマナが宿まで送ってくれるのだから、大丈夫な筈だ。本人は呑気にしているけど。
 「カイリも従魔が増えたんだし、鍛えていけばS級の冒険者になれるんじゃないかなぁ?」
 「それはどうかなぁ?」
 「どうして? 不安なことでもあるの?」
 「いやだって、生産職の俺が冒険者をやるんですよ。普通はあり得ないことでしょ」
 錬金術ギルドでも、珍しそうにしていたしな。
 「いんや、そんなことはないよ。現に冒険者と共に行動する錬金術師は結構いるし、何よりも回復薬や強化薬とかを作ってくれるから重宝されることが多いよ」
 ん? んんん? 一体どういうことだ? 錬金術師で冒険する人は稀って女神様達は稀って言ってた気がするぞ。
 「まぁ、カイリも気の合うパーティーを早く見つけて後衛に専念出来るようにしないとね」
 ……ああ、なるほど。サクラ様達は俺1人で色んなところを回って行くと思っていたんだろうな。
 それは当たりっちゃ当たりだけど、誰かと組める状況なら臨時って形で入れて貰うつもりだ。
 「そうだね。でも先ずは自分のレベルを上げないと意味がなさそう」
 「アハハッ ︎ そうだったね。受付けの連中と依頼を相談すれば、カイリに見合った依頼を選んでくれると思う。
 そうだ! アンジーって子がいないか聞いてみて、私の友人だからきっと力になってくれるよ!」
 「アンジーさん? 分かった。覚えておくよ」
 マナさんがこの様子だから、その人の人柄に不安を感じる。
 「……カイリ、何か変なことを考えてない?」
 「へ? いや別に、変なことなんて全く考えていないぞ」
 「そう。もう宿に着いたから、帰るね! バイバァ〜イ!」
 マナさんはそう言うと、スキップしながら来た道を進んで行く。
 ホント、あの人と喋ると調子狂うなぁ。
 そう思いながら宿へと入って行くと、キツい目でユーダさんが俺を見つめて来る。
 「お帰り、遅かったな」
 「た、ただいま……です」
 「……ミレイの腹に子供が出来ていてよかったな」
 「まぁ……そう、ですね」
 そして訪れる沈黙に、なんとも言えない空気が漂う。そんな中ユーダさんは部屋鍵を取り出して俺に差し出して来た。
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