勇者として神からもらった武器が傘だった俺は一人追い出された。えっ?なにこの傘軽く見積もって最高じゃん

ノベルバユーザー521142

お祭りの後に……

「それでは最後にあちらをご覧ください」
 演劇が終わり、空から光魔法を使った光雪のようなものが村に降り注いでくる。
 光魔法を使える人間は少ないとの話だが祭り用に来ていたらしい。

 これなら俺らがいなくてもナオキの闇竜もおさえてもらえたに違いない。
『生活魔法 光を覚えました』
 おっどうやら光魔法が傘に当たったおかげで光魔法も覚えられたようだ。 
 これで次ナオキの闇竜も、もっと簡単に倒せるだろう。

 光魔法は村中に降り続き幻想的な姿を見せている。
 なんとも言えないその光はなんとも言えない不思議な気分になってくる。

 イブキに情景を説明してやると
「いつか、テルさんと一緒に同じ景色を見て感動をわかちあいたいです」
 なんて言ってくれた。

 俺もできるだけはやくイブキの目をなおしてやりたいと思う。
 イブキが俺の横に座りながら空を見上げている。

 イブキの横にはチョロさんがいてその頭の上にはニクスがいる。
 チョロさんは俺の方を見て頷くと

『あっ』
 とちょっとわざとらしく声をあげイブキを俺の方へ押してくる。
「えっ?」
 体勢を崩されたイブキを支えながら抱きしめる。イブキの鼓動が高鳴っているがよくわかる。

 チョロさんわざとやりやがったな。まったく変な気を使いやがって。
 チョロさんの頭をニクスがなでている。
 あいつらいつの間にそんなに仲良くなったんだよ。

「テルさ……ん」
「おっとごめん」

 非常に気まずい。

「チョロさん気を付けて」
『ごめんなさい』

 チョロさんはイブキに頭を下げるも、俺の方を見てウインクを飛ばしてきた。
 チョロさんチョロくない。この子結構考えてそうだぞ。

 俺とイブキはそのまま肩を寄せあいながら空を眺めていた。
 平和にお祭りが終わり、宿に戻ろうとすると村の外れから怒声が聞こえてくる。

「お前は何回言ったらわかるんだよ。本当使えないな」
「ごっごめんなさい。次はもう失敗しないようにします」

「失敗しないようにしますじゃねぇよ。何回同じこと言ってるんだよ」
 そこには恰幅のいい男が地べたに座りながら頭をさげている女の子の頭を地面にぐりぐりと押し付けている。あれはいくらなんでもやりすぎだろ。

「おっさん、それはやりすぎだろ」
「なんだ小僧、お前には関係ないだろ。俺はこのクズを躾てやっているんだ」

 おっさんはニタニタと笑いながらさらに力をこめる。
「やめろって言ったんだ」

 部外者が口をだしていいものではないかも知れないがか弱い女の子がいたぶられているのを黙ってみていることはできない。

「こいつはパーティのなかでお荷物で言われたこともできないクズなんだよ」
「だからと言ってそこまでやる必要ないだろ?」

「何言ってるんだ? こいつには才能がないのに面倒をみてやってるんだ。それだけで十分だろ」

 よく見ると女の子の口から血が流れている。
 俺は男の足を払いのけポーションをだして飲ませてやる。

「大丈夫か?」
「こんな奴にポーションを飲ませてやるなんて馬鹿なのか? いやお前が面倒見てやればいい」
「はぁ? どういうことだよ?」

「こいつはな何の才能もないのに無駄に生きているから俺が面倒をみてやっていたんだが、そんなにおせっかいしたいならお前が面倒をみればいい。リサじゃあな。お前とはここでお別れた」

「あっ……」
 男はそのままどこかへ去ってしまった。

 女の子は赤い髪に大きな瞳をしてとても可愛い女の子だが、着ている服はボロボロで身体中に埃やアカがついており肌は黒く汚れていた。指先まで真っ黒になっている。
 彼女は不安そうな目で俺たちをみる。

 俺が顔の汚れをとってあげようと手をかけようとするとビックとさらに怯えたように身体を硬直させつぶやく。

「殴らないで」
「大丈夫だよ。いったいどうしたの?」

「私……何もできなくて……」
 パーティーを組んでいたからといっていくらなんでもあれはやりすぎだ。

 リサに話を聞くと彼女たちはこの村にはたまたま寄った冒険者だという。
 先ほどの男ボブロンたちのパーティにいれてもらってからずっと冒険をしていたということだった。

 出身はずっと遠くの地域で家族も近くにいないためずっと荷物持ちをしていたが、今日はボブロンたちの機嫌が悪く急に理不尽な理由で殴られ謝らさせたとのことだった。

 常に暴力がひどく理不尽な理由でいじめられていたとのことだ。
 パーティーをかえようと思ったりもしたが荷物持ちしかできないリサを雇ってくれる人はいなかったらしい。

 それにパーティを探していることを知ったボブロンたちにはさらにいじめられたということだった。

 ちなみに今日怒られた理由は光魔法が綺麗なのにリサが楽しそうにしていたのが気に障ったらしい。

 もはやいちゃもんだった。
 今回はボブロンが別れを言いだしてくれたのでパーティを抜けるのに特に許可はいらないがこれからどうしたらいいかわからないとのことだった。

「イブキどうしたらいいと思う?」
 一応イブキにも確認をしておく。

「えっ? もちろん助けたらいいと思いますよ。このまま放置することはできないですし」
「だよな」

 いじめられている人間を全部助けるなんてことはできないけどあまりに理不尽すぎる。
「リサが良ければ一緒にいくかい?」
「私本当に何もできないですよ」

「大丈夫だよ。なにもできない人なんていないから。あうかあわないかの問題」
「テルさん、イブキさん」

 リサはなぜか泣き出してしまったがイブキが優しく抱きしめなだめてくれた。

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