チョロさんがやばすぎた件

「みんな逃げろ！」
　ノボルが叫ぶと同時に今まで野次を飛ばしていた村人たちはいっせいに走り出した。

「どうだ傘男。俺の力はお前らなんかと」
「ナオキお前も逃げろ！」
「えっ？」

　空へと舞い上がった闇竜はナオキを頭からすっぽりと覆ってしまった。
「ナオキー！　あっ……剣の勇者が死んだ。もう……終わりだ」

　ノボルは膝をつきこの世の絶望のような顔をして鼻水と涙でひどい顔になっている。腰が砕けてしまったのか、立とうとしても立ち上がれず不気味な動きをしている。

　とりあえず火竜の時のように傘でぶっ叩いてみるか。
　この傘闇への耐性とかもあるのか？

　まぁやってみないとわからない。ただ、これはこのまま放置しておいていいものではない。

　術者を飲み込んだってことは術者を電池みたいにしようするってことだろうし。
「テルさん、なんですかこの禍々しい魔力」
「ナオキが闇魔法使った。とりあえず傘でぶっ叩いてみるわ。どこまでつうじるかわからないけど。イブキはニクスたち連れて逃げて」

「テルさんおいて逃げないですよ。私も戦いますよ」
『僕も戦いますよ。あんな黒いトカゲには負けません』
「ピヨヨヨヨン」

　黒いトカゲって。かなりでかいけどな。
　闇竜はうずくまって立てなくなっているノボルに標準をあわせたようでノボルへ接近していく。

　俺はノボルの前にたち傘を広げ闇竜の衝撃を受け止める。
　傘は……無事のようだ。俺はそのまま闇竜を押し返す。
　実態がない魔法のようだが、押し返すのに結構力がいる。

　どうしたものか。
　闇竜が一度距離をおき、身体を上下にうねらせると闇竜の下にあった草が枯れていく。
　生命力を奪っているのか、それとも毒のようなものか。

「なんだよ。あの危険魔法。勇者が使っていい魔法じゃないだろ」

「あれは光魔法じゃなければ倒せない。前の時には兵士の腕を一本持っていったところで光魔法の使い手が止めたが、光魔法の使い手は貴重なんだ。こっこんな村に光魔法の使いてなんていない」

　ノボルは震えながらそう言うと一目散に逃げ出した。
「おいっノボルこのまま放置して逃げるな！」

　ノボルは振り返ることはなかった。
　まずはフルスイングしてみるか。

　傘を一度たたみ、闇竜をにフルスイングで殴りかかるが、闇竜はさらっとかわす。
　予想外に知性があるのか。それとも傘を警戒しているのだろうか。

　今度は小刻みにフェンシングのように傘を突き刺すように当てにいく。
　傘は闇竜の身体に当たるごとに闇竜の一部が削られていく。

『生活魔法　闇竜を覚えました』

　こんな危険な魔法覚えたくないよ。
　だが、今度は闇竜は避けるのをやめ突進してきた。

　紙一重のところでかわすが、服の一部が一瞬で闇にのまれる。
　俺の大事な装備に何してくれるんだ！

　もう一度フルスイングしようとしたところで闇竜が読んでいただのかもう一度突進してくる。この位置は避けられない。両手をクロスしてガードをするが、

『テルさん危ないです』
　チョロさんが俺のことを担ぎ上げ闇竜から距離をとる。

『よくもテルさんを危ない目にあわせてくれたな！　雷撃の怒り』
　チョロさんが闇竜に対して雷の魔法を放った。

　目の前には爆音と激しい閃光があたりを包み込む。
　小さな闇竜に対してあまりに巨大な雷だ。これかなりのオーバーキルじゃないか。

　って……チョロさん全然チョロくないじゃないか。
　あんな魔法使われたら一発で死ぬぞ。

　光がおさまるとそこには闇竜の姿はなくナオキが倒れていた。

『テルさんはやっぱり強いですね』
「いやいやいや」

　当たり前のように俺がやったかのように言ってるけど君だからね。
　チョロさんじゃなくてチョロ様って呼んだ方がいいだろうか。
　この羊やばすぎる。