勇者として神からもらった武器が傘だった俺は一人追い出された。えっ?なにこの傘軽く見積もって最高じゃん

ノベルバユーザー521142

生活魔法の練習をしてみた。なかなか使い勝手はいいようだ。

 その日の夜。
 お風呂屋が終わってからイブキとニクスに明後日にこの村をでることを告げる。
 賃料が値上がりしたこと、仕事がないこと。
 王都からきて初めての村だったので寂しくないわけではないが仕方がない。

 イブキは最後まで俺の話を聞くと俺の両手を握り上下にブンブンと振り、ゆっくりと大きく
 『私はどこまでもあなたについていきます』
 そう俺にジェスチャーで伝えてくれた。

 俺はさっきまでの不安が嘘のように消え、安心したのか目から涙がこぼれた。
 異世界という中でいろいろなプレッシャーをどこか感じていたようだ。
 どうせならこの異世界をたのしまなきゃいけない。

 ニクスも『ピヨヨ』と鳴き俺にすり寄ってくる。
 本当に可愛い奴だ。
 ポーションだしてやるとニクスは嬉しそうに飲んでいる。

 翌日ニコバアにもお風呂屋が終わる事など伝え今までのお礼を伝える。
「礼を言うのはこっちだよ。あんたの風呂にはいるようになって腰の痛みがなくなってからは昔のようにドラゴンだって倒せそうだよ」
「ドラゴンって……ハハハ」

 多分これが異世界ジョークってやつなんだろう。
 愛想笑いを返しておく。

「でも、本当に寂しくなるね。そうだ、ちょっと待っていておくれ」
 ニコバアは雑貨屋の奥に消えると、バックを持って戻ってきた。

「これはね。魔法のバックでいろいろな物を収納できるバックなんだ。私はもう旅にでることもないからね。良かったら使ってくれ。一応レモロードって言う魔法のバック作りではトップクラスの奴が作ったものだから悪くはないよ」

「これって結構高価なものじゃ」

「物はね、使われなくなったら価値がなくなってしまうんだよ。使ってくれた方がこのバックも喜ぶってもんだ。それにもし使わなくなったら返しに来てくれればいいよ。もちろん壊れてもいいし。またあんたたちがここへ来る理由になるじゃないか」

「わかりました。大切に使わせてもらいます」
「それに、こないだ売りつけたポーションの空き瓶を返品されたら困るからね」

 ニコバアは豪快に笑いながらそう言ってはいたが、目の端に水がたまっていたのは見なかったことにする。

 俺は家に帰り、前に買った空き瓶にポーションを入れる。
 旅の途中で回復薬が必要になった時すぐに使えないのは不便で仕方がない。

 今まで生活魔法:最低ランク下級ポーションだったが使い続けたおかげか中級ランク下級ポーションにランクがあがった。

 効果のほどはよくわからないが、きっと少し回復が良くなったのだろう。
 その後は傘を持って近くの森へ行き生活魔法の練習をする。

 今のところ生活魔法の土、風、石を覚えている。
 できれば火の魔法あたりは覚えておけると野営にも困らなくなる。

 森の中入口の人目につかないところで、火災に気を付けてまずはたき火の準備をする。
 その火の近くへ傘を持っていきあぶってみる。

 折れた場合には戻るが燃えてしまったらどうなるかわからないので慎重に傘を火に近づけるがなかなか魔法を覚えられない。

 他の時には結構すんなり覚えたので今回もと思ったが火魔法は難しいのかもしれない。
「ちょっとだけ火の中にいれて見るか」

 傘を火の中にいれると勢いよく燃えだすかと思ったが燃えることはなかった。
 簡単に壊れない傘になったようだ。
 しばらくすると、頭の中に声が響く。

『生活魔法:火 を覚えました』

 あとはせっかくなので生活魔法を練習しておく。
 火魔法などは自分が想像した大きさの火をだせるようだ。

 意外と自由度が高い。
 連続してだすのか、ボールのようにしてだすのか。

 ボールの場合は1m先くらいで落ちてしまうがそれでも火をつけるには十分だ。
 土魔法は土を掘ったり、土壁を作ったりすることができる。

 土壁はかなり頑丈に作れるようだ。
 姫からもらったナイフで切り付けようとしたが傷がつかなかった。
 俺がだした土壁は俺の意思で消したりできる。

 ただ、こちらも高さや横幅など1回で作れるものには限界があるようだ。
 何度か繰り返せばつなぎ目がわからないように作れるので自分で家を建てる時にでも使えるかも知れない。

 風魔法は目には見えにくいが小さな竜巻を作れるようだ。
 風魔法を放ったところの草が根こそぎ引っこ抜かれた。
 草抜きする時にこの魔法があったらかなり便利だろう。

 石魔法は自分の想像した石をカットした状態で作ることができる。
 別に土魔法でも良さそうな気はするが、投げつけたりするにはちょうどいいって感じかな。

 これだけ魔法を覚えていれば旅するのも少しは楽になるはずだ。
 俺は旅に必要な非常食などを買って帰る。
 いよいよ明日は村から出発だ。

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