家に帰ると知らないおっさんがいた。なんどそんな恍惚とした顔しれるの？

　ギルドに報告してお金を受け取り、露天商を見に行く。
　ニコバアの家は雑貨屋なので新鮮な野菜や肉などは露天商の方がいいものが多い。

　露天商へいくとかつての世界で見たような食べ物も結構ある。
　イチゴやオレンジ、キウイフルーツ……南国のフルーツも寒い地域のフルーツも色々混ざっている。

　この世界のイチゴはものすごく甘くて香りが強かった。
　あれほど、元の世界で品種改良されているのにこっちの方が安くて甘いなんてなんとも複雑な気分になる。

　俺はイチゴを中心にフルーツをいくつか買いイブキへのお土産にする。
　イブキが喜んでくれるといいな。
　なぜか今にもスキップしてしまいそうなくらい楽しい気分になっている。

　俺の家は町はずれにあるので、普段だと家に向かって歩いていくと徐々に人の数が減っていく。

　だが、今日は家に向かっていくと少しずつ人が増えていった。
　なんだろう。幸せそうな顔をしている人が沢山いる。
　何かお祭りでもあるのだろうか。

　家に帰ると俺の家からおっさんが一人、また一人と恍惚とした表情ででてくる。
　えっ？　どういうこと？
　俺が家に入ろうとすると、並んでいたおっさんたちから、

「お前ちゃんと並べ」
「ずるはよくねぇぞ」
「そうだ、そうだ」

　なぜかおっさんたちに止められてしまったので大人しく並ぶことにする。
　ここ俺の家なんだけど。

「なにかこの家にあるんですか？」
「なんだ？　知らないでならんでいるのか。それはついてるな。まぁ待ってればわかる」

　なんで自分の家に入るのに並ばなければいけないのかわからないが、しばらく待っているとおっさんたちが出てくるごとに入れ替わりで入っていく。
　えっもしかして……俺の家は怪しい大人のたまり場にでもなってしまったのだろうか。

　家の中に入るとニコバアが
「一人１０００ペトだよ」
と言って包帯をしているイブキがお金を受け取っている。

「ニコバアこの騒ぎは？」
「あらお帰り、お風呂が盛況でね。今日だけでかなり稼げたよ。お礼は１割でいいからね」

　ニコバアとイブキは嬉しそうにしている。
　俺が１日かけて稼いだ金額以上にイブキとニコバアは家にいながら稼いでいた。
　なんだろうこの少し寂しい感じ。

　おっさんたちがお風呂からでると、
「古傷の痛みが治った」
「慢性的な肩こりがない」

「これは今日の夜も頑張るしかないな」
　などと言いながら帰っていった。

　昨日ニコバアが入っただけなのにこの盛況って田舎は話のネタがないから情報が早いのだろう。人に喜ばれるのはいいことだ。