妖精で人間なアヤメ男装して旅にでます。

道野 架子

母とアヤメ

迷いの森は今日も平和であった。
たまに、人間に追われ逃げてくる奴や、妖精を捕まえようとする輩などいるが、泉にいる限り妖精の力でどうとでも出来る。

アヤメ「ねぇ母さん、どうして父さんは人間なの?」

薄紫色の髪を肩より下になびかせ、母譲りの美しい顔の少女がいた。

母さん「それは、母さんが父さんに惚れてしまったからよ。」

相変わらず衰えることのない美しさを持つ泉の妖精。2人を見れば姉妹にしか見えない。

アヤメ「ふぅーん。で、その父さんはどこ行ったの?」

母さん「…。アヤメあなたしつこいわね。人間は人間と暮らす方が幸せなの。だから村に返したの!」

母さんは父さんの話をするとき、いつも興奮気味。いつもは飄々としていて、感情なんてわからないのに。

アヤメ「私も人間の血が入っているから、村に行こうかな。」

母さん「何言ってるの。ダメって言ってるでしょ?あなたは妖精の血が濃いの。人間にバレれば殺されてしまうって何度言わせるの!」

母さんは顔を真っ赤にしながら言った。

アヤメ「わかってるけど、私はこの森の泉しか知らない。そして私が完全な妖精になれば、母さんは石になってしまうのでしょ?」

母さん「そうよ。だからなんなの。アヤメには1人でも自分の身を守れるよう、色々教えてあげたでしょ?」

アヤメ「…妖精は殺されない限り寿命はないけど、子を産みその子が一人前になったとき親は石になるなんてひどくない?母さんと一緒に居たい。」

母さん「あなた、父さんと過ごしてないのに性格がそっくりね。人間臭いわ。同じ場所に妖精は2人居てはいけないの。森の秩序が乱れてしまう。」

アヤメ「だから!私が出て行くって言ってるでしょ?」

母さん「もうこの話はお終い。母さんは石になるけど、アヤメが泉にいる限りずっと一緒よ。ただ喋らなくなるだけ。」

母さんは私が村に行くことを許すことはなかった。
人間の血が混じっていても、妖精と共に過ごすと妖精の血が勝ち、妖精になることができる。私はもう時期15歳になる。それは妖精が一人前になるのに十分な時間だった。
私は1人は嫌だ。母さんは石になってもずっと一緒って言ったけど、あれが言葉の比喩だってわかってるんだから!!
一緒だって言っても生きてなきゃ意味なんてないじゃない!!
いくら私が妖精って言ったて、1人じゃ何にも楽しくない…。父さん、どうして母さんを1人にしたの?どうして会いに来てくれないの?このままじゃ、母さんと二度と会えなくなるんだよ?父さんは母さんのこと好きじゃなかったのかな…。
 


数日後、母さんは石になった。それは私が15歳になった日だった。



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