幼馴染に異常性癖を暴露(アウティング)されて破滅するけど、◯◯◯希望のかわいい彼女をゲットしたので人生楽しい~幼馴染が後になって後悔しているようだけど、もう遅い

スンダヴ

第50話 贖罪

「涼真くん、おはよ!今日もいい天気だね〜」

いつものように、家の前で玲が微笑みながら待っている。
白のブラウスにデニムパンツという出立ちで、最近はかなり大人びてきていた。
それでも、出会った頃の柔和な表情と優しい性格は変わっていない。

軽い欠伸をしつつ、俺は玲と腕を繋いで道を歩き始めた。

「…一限サボらね?最近オシャレな喫茶店みつけてさぁ」
「こら!その授業もう3回もサボってるじゃん。5回サボったら単位でないんだからね」
「真面目だなあ、玲は」

Tを破滅させてからはや3年。

俺と玲は今年高校を卒業し、同じ大学の同じ学部に進学した。
秋山さんは別の大学に進学したけど、頻繁に連絡を取り合っている。
麻衣ちゃんは高校3年生で「お兄ちゃんとお姉ちゃんとのキャンパスライフを過ごすのです!」と絶賛受験勉強中だ。

ふと昔を思い出したくなり、スマホの写真履歴を漁った。

ー玲と2人きりで行ったデートや学校の日常風景。
ーささいなことで喧嘩して、秋山さんの協力のもと仲直りに成功した時の様子。
ー麻衣ちゃんや秋山さん含む4人で行った、浴衣姿が印象に残る夏祭り。
ー玲に応援されながらクラス対抗リレーを走った体育祭。
ー玲がメイド服を着て接客した喫茶店が大盛況だった文化祭。
ー玲と秋山さんで冬のスキーを楽しんだ修学旅行。
ーそして、みんなで涙を流した卒業式。

高校卒業までの約2年間の想い出が克明に記録されている。
その全てが、一生忘れることがないだろう想い出だ。
これだけでも、俺の少年時代は幸せだったと断言できる。

「…そう言えば、Tさんもそろそろ少年院から出てくる頃だね」
「ああ。でも過ちを犯さないよう、俺がちゃんと監視し続けるさ」

俺に対する暴行罪や玲への殺人未遂罪など、数々の犯罪行為の責任を問われたTに下された判決はー、



女子少年院への送致処分であった。


****


いまだ未成年であるTの裁判は、家庭裁判所で行われた。
俺も被害者の1人として参加したが、印象に残ったのは2つある。

ー被害者の方には誠に申し訳ありません…!」
ー過失は、恵里の心の闇に気づけなかった私たちにあります…!被害を受けた方に対する賠償も、責任を持って行います…!

1つ目は、善良なTの叔父・叔母夫婦だ。
実の娘ではないTの罪を謝し、ひたすら泣き崩れ続けたのをよく覚えている。
その姿を見て、俺は2人に対する損害賠償請求を行わなかった(Tは未成年のため支払う義務は叔父・叔母夫婦にある)。
最終的に、麻衣ちゃんと始めとする複数人の被害者へ、ある程度の賠償金を支払うとして決着している。

2つ目は、他ならぬTこと戸田恵里だ。
一夜で真っ白になった髪を染めようとせず、淡々と証言した。

ーはい、認めます。あたしは、自分の寝取られ性癖のために、佐渡さんや天野さんを傷つけました。全ては、あたしの罪です…叔父さんや叔母さんにも申し訳ないと思っています。
ー何故そう思うのですか?
ー佐渡さんが教えてくれたからです。合意のない寝取られスワッピングをリアルで実行する恐ろしさを…パパの言う通りでした。佐渡さんがいなかったら、あたしはもっと罪を重ねていたかもしれません。
ーは、はあ…今後はどう生きていきたいと思いますか?
ーあたしが傷つけた人に、償いをする一生を歩みたいと思います。賠償金も、あたしがきちんと働いて返します。それに…
ーそれに?

そこまで言うと、Tは突然スカートをめくる。
ステンレス製の貞操帯がその姿を現した。
裁判場がどよめく中、Tは涙ながらに叫んだ。

ーひ、被告人!?公衆の面前で何をー
ー佐渡さんを裏切った罰として、この貞操帯を一生付け続けます…!誰ともエッチしませんし、オナニーもしません!!!鍵もつけてません!!!
ーええ…何この人…

動揺する女性裁判官だったが、1分後に被告人の退廷を命じ、Tはあっさりとつまみ出されるのであった。



前述した通り、最終的にTは女子少年院に送致されることとなった。
本来なら1年程度で出所するケースが多いが、T本人が2年の長期処遇を希望し、それが受け入れられている。
少年院内では、模範的な行動を度々評価され、少し前に出所したそうだ。



もちろん、これで終わりではない。
これからは一生、性的衝動を発散できないまま彼女は生き続ける。
被害者に対する罪を償いながら。

それが、彼女自身が望んだ罰だ。


****


「みんなで集まる?」
「うん!大学生活も落ち着いたし、いつものみんなで集まろうかなって」

大学の学食でご飯を食べている時、玲に提案される。
それなりに友人やサークル仲間が出来ているが、基本的な行動は玲と共にしていた。

「いいね。秋山さんも大学に慣れてきて、麻衣ちゃんも受験勉強で疲れてるだろうし、ちょうどいいんじゃないかな」
「でしょ?みんなと久々に会えるの、楽しみだな〜〜〜」

楽しそうに食事を箸に運ぶ玲を見て、こちらも楽しくなってくる。
高校を卒業して大学生になっても、想い出を作り続けることはできる。

こんな穏やかな日々が、いつまでも続いて欲しい。

「ただ、もう1人追加で呼びたい人がいるんだ」
「呼びたい人…もしかしてTさん!?」
「違うわ!その人は…」

疑問を浮かべる玲の耳に、俺は耳打ちをした。


****


「…くくくくくくくく…くはははははは…!」

アパートの粗末な一室で、1人の人物が大声で笑う。
鋭い包丁を手にし、とある写真を何度も差し貫いていた。

それは、1人の少年の写真。

「もう我慢できない…実行するしかない!」

遂にはビリビリと完全に破り捨て、破片を蹴り上げると、アパートを出て行く。



その写真は、他ならぬ佐渡涼真のものだった。

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