幼馴染に異常性癖を暴露(アウティング)されて破滅するけど、◯◯◯希望のかわいい彼女をゲットしたので人生楽しい~幼馴染が後になって後悔しているようだけど、もう遅い
第37話 野外
「ワーツホグ城ってこんな気合入ってるんだ…」
石井と戸田を追跡してはや30分。
前回来た時にはなかった新たなエリアに入りながら、俺は感嘆の声を上げる。
ユニバーサル・スタジオ・ワールドで近年の大人気のエリア、『ウェザーディング・ワールド・ハリーポッタブル』である。
その名の通り、大ヒットファンタジー映画『ハリーポッタブル』シリーズの舞台で、イギリスの古い街並みや巨大なワーツホグ城が完璧に再現されたエリアだ。
そのためかオープン当初から人混みでごった返しており、石井と戸田を見失わないよう、距離を保ちながら慎重に追跡する。
「玲が最後にここに来たのはいつなの?」
「私も大分前かなぁ。久々に来ると、かなり変わってるからびっくりするよ〜」
隣には玲がいて、共に変態カップル共を尾行している。
残りの2人、すなわち秋山さんと麻衣ちゃんは別行動だ。
ー4人が一斉に尾行すると目立つし、交代制で尾行しよう。まず俺と玲が見張るから、秋山さんと麻衣ちゃんは遊んでおいで。
ーいいんですか?佐渡さん1人に負担が…
ーお兄ちゃんを1人にしては置くのは…
ー大丈夫さ。玲もいるし、こんな変態カップルに全員が時間を割く必要はない。青春を楽しむんだ!
ーわ、分かりました!
というわけで、このエリアから離れた場所で2人は遊んでいる。
「あっ!」
玲が指差す方向を見ると、変態カップルが、ワーツホグ城へ続く長い行列の最後尾に付くのが見えた。
「中のアトラクションに入るのかな?」
「そうらしいね。確か絶叫系だったはずだけど大丈夫?」
「私は全然大丈夫だよ。急ごう!」
「いや、その前に…」
7月の大阪の日差しの暑さを嫌というほど感じながら、玲に提案する。
今日の温度は、予報では35度となっていた。
「飲み物でも買おう。多分、外で結構待たされるはずだ」
「それもそうだね。じゃあ…」
玲が体をモジモジさせながら、とあるものを指差した。
イギリス風の服装を着た売り子が、とある飲料を販売してる。
「ハリーポッターブルワールド名物、甘いバタービールです!!ビールといってもアルコールは入ってません。子供でも飲めますよー!」
映画内で登場した有名な飲料を再現したバタービールだ。
「あれ、飲んでみたいんだけど…いいかな?」
「もちのロンさ!」
上目遣いで言われると断れません!
石井と戸田も今は列で身動きが取れないし、少しぐらいはいいか。
というわけで頼もうとするのだがー、
「バタービール2つ…」
「1つください!」
「はい!そこの美男美女カップルに1つね!」
注文は途中で遮られ、売り子は商品を1つだけ玲に渡した。
彼女は並々と注がれたビール状の飲み物に1つだけストローを指し、俺の横に並ぶ。
「もう、水臭いんだから涼真くんは。一緒に飲も!」
ちゅうちゅうと4分の1ほど飲み干し、サングラスとマスク越しでも分かるほど表情を綻ばせた。
「…甘い!泡もふわふわだよ〜〜〜」
玲の唇で少しへこんだストローで、バタービールを飲む。
「うん。おいしい」
「でしょ?帰りにまた買おうね!」
「ああ。秋山さんと麻衣ちゃんの分もね」
俺の中で、想い出が更新されていくのを感じた。
ユニバーサル・スタジオ・ワールドに初めて来たのは、戸田とではなく、玲、秋山さん、麻衣ちゃんとだ。
復讐の味は甘いという言葉も、今なら分かる気がする。
****
「ねえ、何か飲み物ないの戸田ちゃん。喉乾いたんだけど〜〜〜」
「え?ないけど…」
「え〜〜〜気が利かないな〜〜〜こういう時はさ、女性が男の分の飲み物も用意するもんっしょ〜〜〜」
「自分で用意すればいいじゃない…」
「何かいった?」
「…何もいってない」
案の定、前に並ぶ戸田と石井は暑さと喉の渇きを感じているようで、変態バカップルの化けの皮が剥がれ始めていた。
互いに無言となり、スマホをいじるだけの状態となる。
典型的な失敗デートだ。
ピンポン。
急にスマホへLIENの着信。
それも俺と玲の懐から同時だ。
慌ててスマホを取り出し、それぞれの画面を確認する。
「石井くん、また性懲りも無く麻衣にLINEしてる…『今度の日曜日遊びに行かない?』ってさ」
麻衣ちゃんのスマホを預かっている玲が、乾いた笑いを浮かべた。
「こっちも、戸田からのLINEだ」
「何で書いてるの?」
「えーと…」
いつも通り、無味乾燥とした文章が連なっている。
いまどこで何してるの?
あたしは、あなたを想って毎日泣いてます。
今ならまだ間に合う。
私はあなたを救いたいの。
このままじゃ、あなたは異常な人間のまま戻れなくなる。
だから、もう一度一つになって、普通に戻りましょう。
どうやらLINEをポエム発表会かなにかと勘違いしてるらしい。
そもそも、他人を傷つけるため間男とデートする女のどこが普通なのだろうか。
「消した方がいいんじゃない?」
「いや、少し泳がせておこう。それに…」
相変わらず無言で列に並ぶ変態カップルを、写真で撮影した。
「変なポエムを送って復縁を迫る間、堂々と別の男とデートしてたって証拠にする」
「なるほど。涼真くんも悪よの〜…」
「ぐへへへへへ…」
2人で悪代官気分を味わっていると、石井と戸田の番がくる。
「ええ?これ絶叫系なの?あたし苦手なんだけど…」
「はあ〜〜〜ここにきてなんだよ。大したことないって」
ワーツホグ城のアトラクションは、1人4列のライドに乗り込んで、城内を駆け巡る爽快なものだ。
が、どうやら戸田は苦手らしい。
「ほらほら、乗った乗った!」
「嫌だっていってるのに、最悪…!」
残念ながら、石井は配慮するつもりが全くないらしく、強制的に押し込んで2人は出発する。
「私たちも乗ろっか。こういうの好きだから楽しみ!」
「ああ、俺もだ!」
事前に玲に確認しておいて良かったと、心から思った。
****
「ね〜〜〜そんなへそ曲げないでよ〜〜〜彼氏とのデートなんだしさ〜〜〜」
「…」
デート開始から約1時間で、変態カップルの仲は冷え切っているようだ。
麻衣ちゃんが犠牲にならなくて本当によかったと心から思える。
(でも、なんかモヤモヤすんだよな。まるでー)
「ねえねえ〜〜〜機嫌なおしてよ〜〜〜」
その時、石井がことさら大袈裟な声をあげた。
「今日はせっかく外でヤルんだからさ〜〜〜」
「…大きな声で言わないで」
「刺激的で楽しみって言ってたじゃん〜〜〜もっとテンション上げていこうよ〜〜〜」
その後は再び無言となる2人だったが、重要な情報は十分に伝わる。
「…最低」
玲がツンドラのような冷たさで悪態をつくほどに。
「麻衣ちゃんには、言わないでおくね」
「…ありがとう」
いずれにしろー、
今日の夜は修羅場となりそうだ。
石井と戸田を追跡してはや30分。
前回来た時にはなかった新たなエリアに入りながら、俺は感嘆の声を上げる。
ユニバーサル・スタジオ・ワールドで近年の大人気のエリア、『ウェザーディング・ワールド・ハリーポッタブル』である。
その名の通り、大ヒットファンタジー映画『ハリーポッタブル』シリーズの舞台で、イギリスの古い街並みや巨大なワーツホグ城が完璧に再現されたエリアだ。
そのためかオープン当初から人混みでごった返しており、石井と戸田を見失わないよう、距離を保ちながら慎重に追跡する。
「玲が最後にここに来たのはいつなの?」
「私も大分前かなぁ。久々に来ると、かなり変わってるからびっくりするよ〜」
隣には玲がいて、共に変態カップル共を尾行している。
残りの2人、すなわち秋山さんと麻衣ちゃんは別行動だ。
ー4人が一斉に尾行すると目立つし、交代制で尾行しよう。まず俺と玲が見張るから、秋山さんと麻衣ちゃんは遊んでおいで。
ーいいんですか?佐渡さん1人に負担が…
ーお兄ちゃんを1人にしては置くのは…
ー大丈夫さ。玲もいるし、こんな変態カップルに全員が時間を割く必要はない。青春を楽しむんだ!
ーわ、分かりました!
というわけで、このエリアから離れた場所で2人は遊んでいる。
「あっ!」
玲が指差す方向を見ると、変態カップルが、ワーツホグ城へ続く長い行列の最後尾に付くのが見えた。
「中のアトラクションに入るのかな?」
「そうらしいね。確か絶叫系だったはずだけど大丈夫?」
「私は全然大丈夫だよ。急ごう!」
「いや、その前に…」
7月の大阪の日差しの暑さを嫌というほど感じながら、玲に提案する。
今日の温度は、予報では35度となっていた。
「飲み物でも買おう。多分、外で結構待たされるはずだ」
「それもそうだね。じゃあ…」
玲が体をモジモジさせながら、とあるものを指差した。
イギリス風の服装を着た売り子が、とある飲料を販売してる。
「ハリーポッターブルワールド名物、甘いバタービールです!!ビールといってもアルコールは入ってません。子供でも飲めますよー!」
映画内で登場した有名な飲料を再現したバタービールだ。
「あれ、飲んでみたいんだけど…いいかな?」
「もちのロンさ!」
上目遣いで言われると断れません!
石井と戸田も今は列で身動きが取れないし、少しぐらいはいいか。
というわけで頼もうとするのだがー、
「バタービール2つ…」
「1つください!」
「はい!そこの美男美女カップルに1つね!」
注文は途中で遮られ、売り子は商品を1つだけ玲に渡した。
彼女は並々と注がれたビール状の飲み物に1つだけストローを指し、俺の横に並ぶ。
「もう、水臭いんだから涼真くんは。一緒に飲も!」
ちゅうちゅうと4分の1ほど飲み干し、サングラスとマスク越しでも分かるほど表情を綻ばせた。
「…甘い!泡もふわふわだよ〜〜〜」
玲の唇で少しへこんだストローで、バタービールを飲む。
「うん。おいしい」
「でしょ?帰りにまた買おうね!」
「ああ。秋山さんと麻衣ちゃんの分もね」
俺の中で、想い出が更新されていくのを感じた。
ユニバーサル・スタジオ・ワールドに初めて来たのは、戸田とではなく、玲、秋山さん、麻衣ちゃんとだ。
復讐の味は甘いという言葉も、今なら分かる気がする。
****
「ねえ、何か飲み物ないの戸田ちゃん。喉乾いたんだけど〜〜〜」
「え?ないけど…」
「え〜〜〜気が利かないな〜〜〜こういう時はさ、女性が男の分の飲み物も用意するもんっしょ〜〜〜」
「自分で用意すればいいじゃない…」
「何かいった?」
「…何もいってない」
案の定、前に並ぶ戸田と石井は暑さと喉の渇きを感じているようで、変態バカップルの化けの皮が剥がれ始めていた。
互いに無言となり、スマホをいじるだけの状態となる。
典型的な失敗デートだ。
ピンポン。
急にスマホへLIENの着信。
それも俺と玲の懐から同時だ。
慌ててスマホを取り出し、それぞれの画面を確認する。
「石井くん、また性懲りも無く麻衣にLINEしてる…『今度の日曜日遊びに行かない?』ってさ」
麻衣ちゃんのスマホを預かっている玲が、乾いた笑いを浮かべた。
「こっちも、戸田からのLINEだ」
「何で書いてるの?」
「えーと…」
いつも通り、無味乾燥とした文章が連なっている。
いまどこで何してるの?
あたしは、あなたを想って毎日泣いてます。
今ならまだ間に合う。
私はあなたを救いたいの。
このままじゃ、あなたは異常な人間のまま戻れなくなる。
だから、もう一度一つになって、普通に戻りましょう。
どうやらLINEをポエム発表会かなにかと勘違いしてるらしい。
そもそも、他人を傷つけるため間男とデートする女のどこが普通なのだろうか。
「消した方がいいんじゃない?」
「いや、少し泳がせておこう。それに…」
相変わらず無言で列に並ぶ変態カップルを、写真で撮影した。
「変なポエムを送って復縁を迫る間、堂々と別の男とデートしてたって証拠にする」
「なるほど。涼真くんも悪よの〜…」
「ぐへへへへへ…」
2人で悪代官気分を味わっていると、石井と戸田の番がくる。
「ええ?これ絶叫系なの?あたし苦手なんだけど…」
「はあ〜〜〜ここにきてなんだよ。大したことないって」
ワーツホグ城のアトラクションは、1人4列のライドに乗り込んで、城内を駆け巡る爽快なものだ。
が、どうやら戸田は苦手らしい。
「ほらほら、乗った乗った!」
「嫌だっていってるのに、最悪…!」
残念ながら、石井は配慮するつもりが全くないらしく、強制的に押し込んで2人は出発する。
「私たちも乗ろっか。こういうの好きだから楽しみ!」
「ああ、俺もだ!」
事前に玲に確認しておいて良かったと、心から思った。
****
「ね〜〜〜そんなへそ曲げないでよ〜〜〜彼氏とのデートなんだしさ〜〜〜」
「…」
デート開始から約1時間で、変態カップルの仲は冷え切っているようだ。
麻衣ちゃんが犠牲にならなくて本当によかったと心から思える。
(でも、なんかモヤモヤすんだよな。まるでー)
「ねえねえ〜〜〜機嫌なおしてよ〜〜〜」
その時、石井がことさら大袈裟な声をあげた。
「今日はせっかく外でヤルんだからさ〜〜〜」
「…大きな声で言わないで」
「刺激的で楽しみって言ってたじゃん〜〜〜もっとテンション上げていこうよ〜〜〜」
その後は再び無言となる2人だったが、重要な情報は十分に伝わる。
「…最低」
玲がツンドラのような冷たさで悪態をつくほどに。
「麻衣ちゃんには、言わないでおくね」
「…ありがとう」
いずれにしろー、
今日の夜は修羅場となりそうだ。
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