幼馴染に異常性癖を暴露(アウティング)されて破滅するけど、◯◯◯希望のかわいい彼女をゲットしたので人生楽しい~幼馴染が後になって後悔しているようだけど、もう遅い

スンダヴ

第20話 開始

「…やっぱり、シュシュがない!!!」

夜。

私、福田美奈子は絶望的な事実に気づき、焦っている。
てっきり家に置いてあると思って探したけど見つからない。
きっと、アレの後そのままポケットにしまって…

「あれがないと私は…!くそっ!きっと佐渡の奴が無理やり盗んだんだっ!許せないっ!!!」
自室で震えながら、スマホを握りしめる。

「すっきりしない…すっきりしないよぉ…」

トイレで追い詰めたはずなのに、何故か自分が追い詰められたことを思い出す。
仲睦まじく、お互いを庇い合い、熱い視線を交わしていた。
私は、それに負けた。

異常者の癖になんで平然と恋人ごっこができるの?
こっちは数えるほどしか…

「…こうなったら、この怒りをあいつらにぶつけてやる」

私はあいつらとは違って普通。
そう、普通だから。



あいつらのように本性をひけらかしたりしない。



「学校へ行けないようにしてあげるわ、天野さん…」

スマホを取り出し、一枚の写真を見つめる。
あいつらに直接突きつけても効果がないなら、ばらまいてやればいいんだ。

ピンポン。

クラスLINEに『これって天野さん?』と白々しくコメントを添えて送信してやった。

みるみるコメントが付いていく。
明日には学校中で噂になるだろう。

「ふふふふふ…思い知れ。ん?」



1通のメールが届いたと表示が来た。


****


「バラしてほしくなかったら、あなたの手腕に期待する…こんな文面でいいかしらね」

caotrun52@gmail.com

作ったばかりのメールアドレスで、傀儡である福田に本命の指示を下す。
福田に佐渡くんの写真を送ったのは、自分の情報収集能力をアピールし、脅迫をスムーズに行うためだ。
これで言うことをよく聞いてくれるだろう。

「さて、問題は…」
佐渡くんの写真で埋め尽くされた天井を見ながら想像にふけった。



「あの女にはどうやって退場してもらおうかしら?あの女の役目は…」
「何してるの、学校に遅刻するわよ」
「今行きます。叔母さん!」

想像するのは後にしよう。

時間は、いくらでもある。


****


「お、おはよう天野さん!」
「…おはよう」

波乱の日曜日が過ぎ、本日は月曜日。
いつも通り天野さんと学校に向かうわけだが、少し様子が違っていた。

「いい天気だね〜…まだ5月だってのに暑くってたまらないよ。天野さんは暑さは苦手?」
「…冬の方が嫌い。朝起きるの苦手だから」
「そ、そうなんだ。じゃあ、今日は楽しく1日を過ごせそうだね!」
「…それは、気分によるかも」

ぷいとこちらから視線を逸らし、ご機嫌斜めなのだ。
秋山さんをめぐる出来事が原因なのは分かり切っている。
2人で後を追いかけ、謝罪と説明を尽くし致命的な誤解は避けられたが…

ーというわけです。すいませんでしたっ!
ー天野さん、すいません!
ーまあ、そういうことならいいけど。でも、定期的に秋山さんに血を分けてあげるつもりなんだ。
ー佐渡さん、やっぱり結衣に血を分けなくてもいいですよ?
一ほんの少しだけだし、秋山さんに福田や戸田への復讐を手伝ってもらう以上、何もないというのも…
ー佐渡さん…
ー…仕方ないなあ。少しだけだよ。

納得してもらえたが、ちょっとぎくしゃくした感じで終わってしまったのだった。

「「…」」

会話が途切れてしまい、無言のまま歩く。
取り繕っても仕方ないので、今思っていることを伝えた。

「ごめんね。僕のせいで、天野さんの秘密まで…」
「いいよ。佐渡くんのせいじゃないし」
「いや、僕にも責任があることだ。本当にすまない」

結局、昨晩福田によって例の写真はばら撒かれた。
天野さんはあえてそうなりたかったと言ってくれたけど、やっぱり一言言っておきたい。

「もう気にしてないのに」
「お詫びと言ってはなんだけど…受け取ってくれないか」
「え?」

学生カバンから包装された小包みを取り出して、天野さんに手渡した。

「わあ…!」
「本当は日曜日一緒に買いたかったけど、あんまり空気が盛り上がらなかったからさ」
「開けていい?」
「うん」

天野さんは小包みをするすると紐解いて、中のものを取り出し、驚いた。

「スカーフだ!」
「チョーカーも可愛いけど、締め付けがキツそうかなと思って。もう傷跡もほとんどないし」
「ありがとう…!」

シルク素材でできた、緑や白といった優しい色合いが涼やかなスカーフ。
似合ってると思って買ってみたけど、気に入ってくれたようで何よりだ。

「早速巻いてみる!」
「あ、でも学校で巻くと流石に目立つかも…」
「佐渡くんのプレゼントだからかんけーなし!」

チョーカーを外し、天野さんはスルスルと器用に巻いていく。

「に、似合う?」
「ああ、とても似合ってる」
「次のデートの時もこれ巻いていくね!」
「そうだね。次は2人っきりで。それに…」
「それに?」



「福田に復讐を終えた後で」
「…」




「うん…」
天野さんは柔和な笑みを浮かべる。



「その日が楽しみだね」


****


「みんな聞いて!何を隠そうあの写真は私です!私が佐渡くんと首絞めプレイを楽しんでました!」

意気消沈した顔を見てやろうと教室を訪れた私を出迎えたのは、クラスメイトの前で嬉しそうに全てをさらけ出す天野さんだった。

「マジで?」
「この教室やべー奴しかいねーぞ!」
「佐渡くんと仲が良いとは思ってたけど…」
「驚かせてごめんね」

動揺するクラスメイトの前で、天野さんはあっけらかんと笑う。

「でも、それで別に私が変わったわけじゃありません。今までまったく一緒。少し性癖がみんなと変わっているだけで、悪いことをするわけじゃないから」

(なんでそんな堂々と言えるのよ!頭がおかしいんじゃないの!?)

私だけ、私だけ我慢を強いられている。
恨めしい、妬ましい。

「…と言うわけだ。僕と天野さんは付き合ってる。首絞めと言ってもプレイの範疇だ」

ぞくりとする佐渡の冷たい声。

「暴露した人間が誰か、目星はついている。そいつにはいずれ落とし前をつけさせる。以上」

これじゃあ、せっかく暴露した意味がほとんどない。

「佐渡、本田の首をへし折ったってマジなのかな…」
「俺は線路の石で撲殺したって聞いたぞ…」
「おい、あんまり大きな声で言うなよ」

クラスの人間は内心佐渡を恐れているからだ。
ただ切り札を失うだけの結果に終わった。

(だめだ…こいつらがもっと異常者だと気づいてもらえる材料がないと…)

スマホを握りしめ、決意する。

(こいつらの私生活を全部撮ってやる。それであの件も…)

ブルブル。

その時、スマホが振動し、LINEの着信を告げる。
慌てて覗いてみると、そこにはこう書いてあった。



「福田さん、結衣です」



「結衣は、佐渡さんの本性を知っています」















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