幼馴染に異常性癖を暴露(アウティング)されて破滅するけど、◯◯◯希望のかわいい彼女をゲットしたので人生楽しい~幼馴染が後になって後悔しているようだけど、もう遅い
第19話 賜与
次回から福田リベンジ編に入ります。
****
「すみません、急にお呼びして」
「まあ構わないけど。今日で2度目か…」
「?」
「いや、気にしないでくれ」
秋山さんは僕をある場所へと連れて行った。
すなわち、同じフロアに備え付けられた多目的トイレである。
あまり上品とは言えないが、知られたくない秘密や行動を隠すには最適な場所である。
適度に密閉され、適度に広く、適度に綺麗(通常のトイレと比較して)だ。
最近は至る所にある上に、利用料金も無料。
先日物議を醸したお笑い芸人渡辺の気持ちも、今なら少し分かる。
あらゆる箇所が監視カメラで見張られ、何かあればすぐスマホで拡散されてしまう現代社会に残された、人類最後のフロンティア。
それが多目的トイレなのだ。
閑話休題。
「で、秘密を抱えているんだよね」
重要なのは、秋山さんがここに僕を呼び出したこと。
可憐なワンピース姿をした彼女が話し場所として指定するには異質すぎる。
つまり、今から話すのはそれなりにアブナイ内容だということだ。
「僕で良かったら話してみてよ」
「はい」
秋山さんがワンピースの袖をぎゅっと握りしめる。
アーモンド型の瞳で、こちらを真剣な目つきで見つめた。
「結衣は…」
そのまま近寄ってくる。
幼い顔を寄せ、唇を震わせー、
「やっぱり無理!」
目を閉じ、背を向けた。
多目的トイレの鍵を開け、出ようとする。
「えええええ!?」
「すいません、忘れてください!」
「いや、ここまで来たら気になって夜も眠れないんだけど!」
「だって…」
こちらに背を向けながら、秋山さんはか細い声でつぶやいた。
何かに怯えている?
「きっと知ってしまえば、佐渡さんは結衣のことを嫌いになります…異常な人間だって…」
なんとなく、話の内容が分かってきた気がした。
僕だけに話そうとした理由、誰もいない密室を選んだ理由、今になって躊躇し始めた理由。
「心配ないよ、秋山さん」
少し震えている肩に手を置き、そっと話しかける。
「人間はみんな変態で異常者だ。普通の人間のように振る舞ってるけど、それを隠して生きてるだけ」
「…」
「でも、それを隠し続けて生きるのは辛いことなんだ。もしよければ、ここでさらけ出してみないか?」
僕も天野さんに出会っていなければ、一生隠し続けて生きていただろう。
天野さんが僕にしてくれたことを、秋山さんにしてあげたい。
「佐渡さん…」
秋山さんの肩の震えが、徐々におさまっていく。
ドアにかけた手が離れ、元に戻った。
「ありがとうございます。結衣を認めてくれて」
そして振り返る。
その表情に、もはや迷いはなかった。
「結衣の想い、欲望は…」
ぐいっと顔を寄せられる。
キスでもするのだろうか。
だが、このまま引き下がれない。
そのまま待つ。
ペロリ。
頬に暖かい感触。
秋山さんの小さい舌に舐められたのだ。
ヒリヒリする。
初めて頬から少し出血しているのに気づいた。
おそらく、先ほど秋山さんと転んだ時できたもの。
「んっ…」
呆気に取られる僕を見つめながら、秋山さんは舌で頰の血を舐め取り、口の中で反芻した。
「…美味しい」
そして、母乳を初めて舐めた赤子のように、幼い顔をほころばせる。
要するに、秋山さんは吸血性愛があるらしい。
****
「いてっ!」
「すいません!結衣が乱暴に舐めたから」
水玉模様のハンカチで僕の頬を拭いながら、秋山さんは申し訳なさそうな顔をした。
「話すつもりはなかったんですけど、転んだ佐渡さんの血を見るとつい興奮して、結衣だけ自分の性癖を隠すのもフェアじゃないと思って…すみません」
「いや、いいんだ。肉を食べると血を連想してしまうんだね」
「はい。このお肉には元々どんな血が流れてたんだろうって想像すると、体が落ち着かなくて」
「そんな時は、どうやって気を紛らわすの?」
「赤いものを食べたり飲んだりします。だから、トマトとか赤いジュースとかが好きです」
「そういえば、さっき頼んでたのもみんな赤いものだったね」
やがて血を拭い終わり、秋山さんはハンカチを仕舞う。
「でも、やっぱり気持ち悪いですよね。血を見ると舐めたくなるなんて」
「そうかな?人間含む動物には傷を負うと本能的に血を舐めようとする。何故だかわかるかい?」
「いえ…」
「傷を治すためだ」
昔の本で読んだことがあるが、唾液には抗菌作用と傷を塞ぐ作用がある。
人間含む動物に傷口に舐める本能があるのは、きっとそのことを知っているからだ。
「だから、傷口を舐めるのも、誰かの痛みを癒したいという想いから来てるのかもしれないね。秋山さんは優しい人なんだ」
彼女が少し驚いた表情を浮かべる。
申し訳なさそうな表情より、ずっと良い。
「…そんなこと言われたのは、初めてです。少し、肩の荷が降りました」
「じゃあ、これから僕が何度でも言ってやるさ」
今の気持ちを、正直に伝える。
「性癖がどうであろうと秋山さんは秋山さんだ。これからも秋山さんと仲良くしたいし、態度を変えることは決してない。それに…」
ー佐渡くんって、女の人の首を絞めて喜ぶ異常者なんだね!
過去の記憶がフラッシュバックし、胸に痛みが走る。
それをこらえながら彼女に微笑みかけた。
「僕が秋山さんの秘密をばらすことは決してしないと誓うよ。墓場まで持っていくから」
「あ、ありがとうございます!」
「だから悲しい顔をする必要はないよ。なんなら、僕の血を定期的に飲むかい?」
「え…」
「大量にあげるのはまずいだろうから、少しだけだけどね」
「さ、佐渡さん…!」
秋山さんがこちらに抱きついてくる。
こんな細い力にこれだけの力があるとは思えないほどだ。
天野さんほどじゃないけど、形の良い胸の感触を感じて落ち着かない。
「あ、秋山さん!?」
「佐渡さんは神さまです。結衣にここまで優しくしてくれて…」
涙を流しているようで、胸に湿った感覚を感じた。
でも、くぐもった声の中には嬉しさが滲み出ている。
「僕は神なんかじゃないよ」
彼女のさらさらの髪を撫でながら、語りかける。
「その代わり、僕の復讐に協力して欲しいんだ」
「復讐…」
「そう、復讐。そのためには秘密を暴く必要があるんだけど、僕が直接動くと怪しまれる。少しだけ協力してくれないか?」
「…」
秋山さんが、ゆっくり顔をあげる。
涙で濡れていたが、今日1番の笑顔だ。
「結衣にできることなら、なんでもやります!」
「ありがとう。助かるよ」
こうしてー、
僕と秋山さんの間には特別な関係が築かれた。
少し歪んでいるけど、慣れっこだ。
****
「秋山さん、佐渡くん、どこ?」
待ってもなかなか現れないので、2人を探しにいくことにした。
が、どこにもいない。
「やれやれ…」
だいたい想像はつくつもりだ。
ー実は、結衣には佐渡さんに言ってない秘密があるんです。
「きっと、秋山さんの秘密を受け入れているんだね。佐渡くんはそういう人だから…」
秘密。
私の心に鋭い痛みが走る。
「だめよ、私」
チョーカーを撫でながら、気分を落ち着かせようとする。
「それを知ったら、いくら佐渡くんだって…」
ガラリ。
その時、目の前の多目的トイレの扉が開かれ、探していた2人が現れる。
どこかすっきりした表情だ。
「佐渡く…」
「いやー、まさか僕が秋山さんの初めてなんてね」
…え?
****
「結衣が佐渡さんの初めてをもらっちゃいました!おいしかったです!」
秘密を明かした秋山さんは楽しそうだ。
「血も無事止まったし、天野さんにも悟られずに済みそうだよ」
「流石に動揺しますしね。でも気持ちよかったです。これからもお願いしますね」
「ああ。これから定期的に会おう。じゃあ天野さんと…」
その時、前方に探してた人が立っているのを見つける。
「あ、天野さん!待たせてごめんー」
「初めて…血…悟られない…気持ちよかった…これからも…」
「ん?」
「ふーん。そうなんだ。そうだったんだ…だからトイレで…」
「あ、あの?」
「佐渡くんのハレンチ!もう知らないもんっ!」
天野さんが踵を返し、走り去っていく。
泣きべそをかきながら、周りの買い物客も気にせず叫ぶ。
「うわあああああん!佐渡くんに浮気されたあああああ!」
「天野さん!?違うんだ!これは誤解なんだあああ!」
「すみません佐渡さん!結衣のせいでえええ!」
3人のおいかけっこは、しばらく続くのだった。
****
「すみません、急にお呼びして」
「まあ構わないけど。今日で2度目か…」
「?」
「いや、気にしないでくれ」
秋山さんは僕をある場所へと連れて行った。
すなわち、同じフロアに備え付けられた多目的トイレである。
あまり上品とは言えないが、知られたくない秘密や行動を隠すには最適な場所である。
適度に密閉され、適度に広く、適度に綺麗(通常のトイレと比較して)だ。
最近は至る所にある上に、利用料金も無料。
先日物議を醸したお笑い芸人渡辺の気持ちも、今なら少し分かる。
あらゆる箇所が監視カメラで見張られ、何かあればすぐスマホで拡散されてしまう現代社会に残された、人類最後のフロンティア。
それが多目的トイレなのだ。
閑話休題。
「で、秘密を抱えているんだよね」
重要なのは、秋山さんがここに僕を呼び出したこと。
可憐なワンピース姿をした彼女が話し場所として指定するには異質すぎる。
つまり、今から話すのはそれなりにアブナイ内容だということだ。
「僕で良かったら話してみてよ」
「はい」
秋山さんがワンピースの袖をぎゅっと握りしめる。
アーモンド型の瞳で、こちらを真剣な目つきで見つめた。
「結衣は…」
そのまま近寄ってくる。
幼い顔を寄せ、唇を震わせー、
「やっぱり無理!」
目を閉じ、背を向けた。
多目的トイレの鍵を開け、出ようとする。
「えええええ!?」
「すいません、忘れてください!」
「いや、ここまで来たら気になって夜も眠れないんだけど!」
「だって…」
こちらに背を向けながら、秋山さんはか細い声でつぶやいた。
何かに怯えている?
「きっと知ってしまえば、佐渡さんは結衣のことを嫌いになります…異常な人間だって…」
なんとなく、話の内容が分かってきた気がした。
僕だけに話そうとした理由、誰もいない密室を選んだ理由、今になって躊躇し始めた理由。
「心配ないよ、秋山さん」
少し震えている肩に手を置き、そっと話しかける。
「人間はみんな変態で異常者だ。普通の人間のように振る舞ってるけど、それを隠して生きてるだけ」
「…」
「でも、それを隠し続けて生きるのは辛いことなんだ。もしよければ、ここでさらけ出してみないか?」
僕も天野さんに出会っていなければ、一生隠し続けて生きていただろう。
天野さんが僕にしてくれたことを、秋山さんにしてあげたい。
「佐渡さん…」
秋山さんの肩の震えが、徐々におさまっていく。
ドアにかけた手が離れ、元に戻った。
「ありがとうございます。結衣を認めてくれて」
そして振り返る。
その表情に、もはや迷いはなかった。
「結衣の想い、欲望は…」
ぐいっと顔を寄せられる。
キスでもするのだろうか。
だが、このまま引き下がれない。
そのまま待つ。
ペロリ。
頬に暖かい感触。
秋山さんの小さい舌に舐められたのだ。
ヒリヒリする。
初めて頬から少し出血しているのに気づいた。
おそらく、先ほど秋山さんと転んだ時できたもの。
「んっ…」
呆気に取られる僕を見つめながら、秋山さんは舌で頰の血を舐め取り、口の中で反芻した。
「…美味しい」
そして、母乳を初めて舐めた赤子のように、幼い顔をほころばせる。
要するに、秋山さんは吸血性愛があるらしい。
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「いてっ!」
「すいません!結衣が乱暴に舐めたから」
水玉模様のハンカチで僕の頬を拭いながら、秋山さんは申し訳なさそうな顔をした。
「話すつもりはなかったんですけど、転んだ佐渡さんの血を見るとつい興奮して、結衣だけ自分の性癖を隠すのもフェアじゃないと思って…すみません」
「いや、いいんだ。肉を食べると血を連想してしまうんだね」
「はい。このお肉には元々どんな血が流れてたんだろうって想像すると、体が落ち着かなくて」
「そんな時は、どうやって気を紛らわすの?」
「赤いものを食べたり飲んだりします。だから、トマトとか赤いジュースとかが好きです」
「そういえば、さっき頼んでたのもみんな赤いものだったね」
やがて血を拭い終わり、秋山さんはハンカチを仕舞う。
「でも、やっぱり気持ち悪いですよね。血を見ると舐めたくなるなんて」
「そうかな?人間含む動物には傷を負うと本能的に血を舐めようとする。何故だかわかるかい?」
「いえ…」
「傷を治すためだ」
昔の本で読んだことがあるが、唾液には抗菌作用と傷を塞ぐ作用がある。
人間含む動物に傷口に舐める本能があるのは、きっとそのことを知っているからだ。
「だから、傷口を舐めるのも、誰かの痛みを癒したいという想いから来てるのかもしれないね。秋山さんは優しい人なんだ」
彼女が少し驚いた表情を浮かべる。
申し訳なさそうな表情より、ずっと良い。
「…そんなこと言われたのは、初めてです。少し、肩の荷が降りました」
「じゃあ、これから僕が何度でも言ってやるさ」
今の気持ちを、正直に伝える。
「性癖がどうであろうと秋山さんは秋山さんだ。これからも秋山さんと仲良くしたいし、態度を変えることは決してない。それに…」
ー佐渡くんって、女の人の首を絞めて喜ぶ異常者なんだね!
過去の記憶がフラッシュバックし、胸に痛みが走る。
それをこらえながら彼女に微笑みかけた。
「僕が秋山さんの秘密をばらすことは決してしないと誓うよ。墓場まで持っていくから」
「あ、ありがとうございます!」
「だから悲しい顔をする必要はないよ。なんなら、僕の血を定期的に飲むかい?」
「え…」
「大量にあげるのはまずいだろうから、少しだけだけどね」
「さ、佐渡さん…!」
秋山さんがこちらに抱きついてくる。
こんな細い力にこれだけの力があるとは思えないほどだ。
天野さんほどじゃないけど、形の良い胸の感触を感じて落ち着かない。
「あ、秋山さん!?」
「佐渡さんは神さまです。結衣にここまで優しくしてくれて…」
涙を流しているようで、胸に湿った感覚を感じた。
でも、くぐもった声の中には嬉しさが滲み出ている。
「僕は神なんかじゃないよ」
彼女のさらさらの髪を撫でながら、語りかける。
「その代わり、僕の復讐に協力して欲しいんだ」
「復讐…」
「そう、復讐。そのためには秘密を暴く必要があるんだけど、僕が直接動くと怪しまれる。少しだけ協力してくれないか?」
「…」
秋山さんが、ゆっくり顔をあげる。
涙で濡れていたが、今日1番の笑顔だ。
「結衣にできることなら、なんでもやります!」
「ありがとう。助かるよ」
こうしてー、
僕と秋山さんの間には特別な関係が築かれた。
少し歪んでいるけど、慣れっこだ。
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「秋山さん、佐渡くん、どこ?」
待ってもなかなか現れないので、2人を探しにいくことにした。
が、どこにもいない。
「やれやれ…」
だいたい想像はつくつもりだ。
ー実は、結衣には佐渡さんに言ってない秘密があるんです。
「きっと、秋山さんの秘密を受け入れているんだね。佐渡くんはそういう人だから…」
秘密。
私の心に鋭い痛みが走る。
「だめよ、私」
チョーカーを撫でながら、気分を落ち着かせようとする。
「それを知ったら、いくら佐渡くんだって…」
ガラリ。
その時、目の前の多目的トイレの扉が開かれ、探していた2人が現れる。
どこかすっきりした表情だ。
「佐渡く…」
「いやー、まさか僕が秋山さんの初めてなんてね」
…え?
****
「結衣が佐渡さんの初めてをもらっちゃいました!おいしかったです!」
秘密を明かした秋山さんは楽しそうだ。
「血も無事止まったし、天野さんにも悟られずに済みそうだよ」
「流石に動揺しますしね。でも気持ちよかったです。これからもお願いしますね」
「ああ。これから定期的に会おう。じゃあ天野さんと…」
その時、前方に探してた人が立っているのを見つける。
「あ、天野さん!待たせてごめんー」
「初めて…血…悟られない…気持ちよかった…これからも…」
「ん?」
「ふーん。そうなんだ。そうだったんだ…だからトイレで…」
「あ、あの?」
「佐渡くんのハレンチ!もう知らないもんっ!」
天野さんが踵を返し、走り去っていく。
泣きべそをかきながら、周りの買い物客も気にせず叫ぶ。
「うわあああああん!佐渡くんに浮気されたあああああ!」
「天野さん!?違うんだ!これは誤解なんだあああ!」
「すみません佐渡さん!結衣のせいでえええ!」
3人のおいかけっこは、しばらく続くのだった。
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