猫と宇宙人はゴーストバスターを始めたようです

たっさそ

第79話 夏と言えば海! 海と言えば、オレ!!





「ほーぅら、高い高ーい!」
「きゃーーーーー! 」


 時は夏休み。
 パパが帰ってきたから親睦を深めるために、パパと猫たちが庭で遊んでいる。


「たかーいたかーい」
「ひっ…………」


 言っちゃえばタマが遊んで遊んでとせがんだのだ。


「たかーい………うおらぁあああ!!」
「ふぎゃあああああああああああああ!!!」








 タマが上空で点となって行く。
 僕のパパ、上段海が、タマに高い高いをしていたら、テンションを上げていたらしく、上空にブン投げてしまったようだ。
 僕もデタラメな筋力を持っているけど、パパほどではない。






「・・・・・ぁぁぁぁぁぁあああああああ おうふ!!!! 」




 とても女の子の口から出た声とは思えない声を残し、上空から降ってきたタマを柔らかくキャッチしたパパ。




「(カタカタカタカタ)」




 初めこそ楽しそうに遊んでいたはずなのに、上空に飛ばされてしまえば、いくら猫の身体能力とはいえ、耐えられるものではないだろう


 タマは目から生気を失って、ふらふらと歩きだし、体育座りで庭の隅に座り込んだ




「ありゃ、また加減を間違ったか。ごめんな白い嬢ちゃん、嫌わないでくれ!」
「ふ、ふふふ………んふふ………死ぬかと思った」


 僕も3歳くらいの時にパパに高い高いしてもらった記憶がある。


 あの時はパパが力の加減を間違えて、僕を成層圏ギリギリまでブッ飛ばしたんだ。
 その時に比べればましだろう。


 僕がどうやって助かったのかって?
 僕は宇宙人の血を濃く受け継いでいるからね。


 酸素が薄くても気圧が低くても気温が低くても生きていたらしい。
 あと、僕がきれいな放物線を描いている頂点で、パパが僕をキャッチした。


 おかげで、屋敷の裏庭にはかなり大きなクレーターふみこみのあとができているけど。




 パパの身体能力は本当にデタラメだ。




「ねーねー! いまの、ぼくにもやってー!」




 今度はティモがパパにくっついた。
 ティモはタマのあの死んだ顔を見ていないのか?


 もうこの世の終わりのような顔をしているんだぞ


 上空から落下する感触を味わったことがないからそんなことを言うんだ


 落ちているだけで内臓が上にせりあがってくるんだぞ
 例えるなら、エレベーターがものすごいスピードで下って行くんだぞ、しかも2分も!






 泣きはしなかったけど、あれはすごく気持ちが悪かった


「おう、よかろう。よっこらしょっと。高い高―い」


 パパはまず、ティモを1mほど上に放り投げた。それだけで十分高い。


「うわー! たかー!! すっごーい!」


「たかーいたかーい」


 次に、10mほど上空に放り投げた


「きゃはははは! すごいすごーい!」


「たかい………おらああああああああああああああああ!!!」


「に゛ゃああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・・・・・・・・・・‥‥‥‥‥‥…………………」




 今度は3000mほど上空にブッ飛ばす。


 さらばティモ。お前の事は忘れない。




「………………‥‥‥‥‥‥‥・・・・・・・・・・・・ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああ ごぶぅふ!!!!」


 柔らかくキャッチしたにもかかわらず、普段のティモからは絶対にでないであろうセリフを吐いた。
 上空3000mからの落下なんだ。
 その程度まで軽減してくれてラッキーなくらいだ。




「ゲホッ! えへへ、もいっかい!」


「よしきた! そらああああああ!!」


「ふにゃあああああああああああああああああ・・・・・・・・・・・・・‥‥‥‥‥‥‥‥‥…………………………」




 うーん、太陽がまぶしくてティモを目で追えない。
 もう点すら見えないけど、あと30秒くらいしたら降ってくるだろう。




「………パパ、仕事は。」


「む? ああ。澄海が夏休みだからな。長期休暇を取ったのだ。」


「? なんで。」


「うむ。最近、澄海に友達ができたって礼子に聞いたからな。顔を見たかったのもある。」


「………『も』? 本来の目的はなに。あと、僕に友達なんかいない。」


 僕がそう聞くと、パパは空を見上げて叫びながら落ちてくるティモをキャッチする
 よく見ると気絶していた。
 無茶するから………


 パパはティモを地面に寝かせた。


「うむ。久しぶりに澄海と遊びたかったのだ。海に泳ぎに行こう!」


「………なに、いきなり。」


「夏と言えば海! 海と言えばオレ!!」


「………なんで。」


「うむ。なにせ、名前がカイだからだ!!」


 腰に手を当て、バーン! という効果音が付きそうなポーズをとってそんなどうでもいい宣言をした
 どうでもいいけど、パパに大事なことを教えてあげよう。


「………パパ」


「む?」


「………僕も『澄海』なんだけど。」


「は! そうだった!」


「………誰が名づけたんだか。」


「いや、そのえっと、ほら、澄海はどちらかというと『空』だろう!?」


「………海だよ。」


 息子相手にしどろもどろになるパパは、ちょっと天然だった。




                 ☆




 パパに海に誘われたけど、特に日程は決めていない。


「………で、いつ海に行くの。」


 パパに合うのは日曜参観の日以来だ。
 久しぶりに会うから、僕も少しうれしい。


 パパと久しぶりに遊びたいという気持ちがあった。


 ちょっとだけわくわくしながら、パパに日程を聞いてみた。


 パパの答えは―――


「あ、お兄さん味噌汁おかわり。」


「スカイパパ、味噌汁くらい自分でよそってくださいよ」


 おっちゃんに味噌汁のおかわりを要求することだった。
 というか、パパはおっちゃんが居ることに対してなんのツッコミもしなかったぞ。
 どういうことなんだ。
 おっちゃんも不満を言いつつ汁椀を受け取ろうと手を伸ばしていた


「……………。」




 僕は無言で手刀を繰り出し、パパの手を打って汁椀を落とす


「いってぇ! 腕を上げたな、澄海。」


「……………。」


「うお、睨むなよ。そんなドスの効いた睨みはそうそう見ないぞ」


 僕がパパを睨むと、あごひげを撫でながらそんなことを言うパパに続き、我が家の駄家政婦、水瀬優が


「そうですよ。澄海坊ちゃんは目つきが悪いのがいけないのであります。もうちょっと愛想があったらかわいげがあるというのに。褐色の人。わちきもおかわりであります。ご飯大盛りを所望します」


 などと言いながらおっちゃんに茶碗を差し出した


「ええけど、水瀬、お前はただ飯ぐらいニートやろ。こういうところでしっかり働けよ。」


「ニートじゃありませーん。ちゃんと学校には通っているであります!」


「家出中のくせにか」


「もちろん。わちきをそんじょそこらの家出少女と一緒にしてもらっては困りますね!」


「はん、笑わせるな。」


「お? 喧嘩売っているのでありますか? 上等であります。庭に出ましょう。」


「お? やるか? よかろう。おっちゃんが相手になっちゃる。今日は修行があるから明日のこの時間に庭に集合な。」


「え? い、いや、ああ明日は予定があるので明後日にしましょう。」


「そそそそうだな。俺も明日はゴロゴロするという大事な使命がある。じゃあ延期にしよう。120年後あたりに。」


「そうですね。それがいいであります。首洗って待っててくださいよ」






 おっちゃんと優の寸劇は一瞬で終わった。
 誰がどっちもチキンじゃねえかとツッコミをしてやるもんか。




 パパに視線を移す。


「………で、パパ。いつ海に行くの」
「ズズ………うむ。そうだな。じゃあ明日あたりがいいだろう。」


 おっちゃんに入れてもらった味噌汁を啜るパパ。


「………ずいぶん急だね。」
「とくに予定を組んでたわけでもないしな。」


 こんな適当な性格をしているのに、よく警察なんてやってられるな。


「おー、パパさん澄海くんと海行くのー? 私もいきたーい!」


 と、今度はタマが挙手してパパに自己主張した。
 ついさっき上空に投げ飛ばされたのに、もう引きずっていないのかな。


「おお、白い嬢ちゃんも来てくれるか。さすが澄海の友達だ。これからも仲良くしてくれよ」


「んふふ~ もちろんだよー。」


「………だから友達じゃ」


「じゃあそういうことにしといてやるよい」


「………。」




 否定しようとしたら被せられた。なんか釈然としない。


「ねーねー。私達の友達よんでもいーい?」
「うむ。いいぞ。たくさん呼びなさい。オレも小学生たちの水着姿を見れたらうれしい。」
「んふふ、ロリコンさんだぁ」
「ワハハハ! ロリコンではなかったら礼子と結婚なんぞしないわ!」
「その通り! ダディちゃんはロリコンなのだ! ロリコンじゃなかったらこんなちんちくりんのアタシをもらってくれる人なんて居るわけがないね! 修ちゃん、みそしるおかわりーゼント!」


「僕はみなさんのお母さんポジションですか! なんで僕ばっかり動かないといけないのですか! ちょっとは自分で動いてくださいよー!」




 おっちゃんの悲鳴も、夜の喧騒に溶けて消えた。


 なんか知らないうちにどんどん話が進み、パパとママの付き添いでみんなで海に行くことになってしまった







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