猫と宇宙人はゴーストバスターを始めたようです

たっさそ

第57話 ★今年の夏は、いつもより楽しめそうやんな。



 高3最後の夏。川や海に遊びに行くリア充はクソ喰らえ!
 そんなことをしとる暇があるなら履歴書の自己PRでも書いてろ。
 質問されそうなことをノートにまとめてすべてにおいての答えを書き出せ!
 高3の夏こそ自分の未来を決める最後のチャンスなのだ!


 部活を引退したなら勉学に励み、いい会社に入る努力をするのだ!!




「―――とか言われてもねー。」




 最寄駅に止めておいた自転車にまたがり、無人駅から一人走り出す。
 県大会で無様に負けて転がって、桜島から帰ってきたところだ。個人戦をした帰りだから、ちょっと体が重い。


 べつになりたい職業もないし、俺の成績もまちまち。
 なぁなぁで人生を歩む気満々だったオレにそんなことを言われてもピンとこない。


 そもそも、部活動を真面目にしていたわけでもないし、部活を引退したからといって、勉強しようとも思っていない。


「まーたしかに? おっちゃんには友達はおらんから海に行ったりはせんよ? 海が近いからってわざわざ海に行こうなんて思わないもんにゃー。どーせ行っても一人ぼっちやし。」


 猫たちと海に行くのはいいだろうな。
 でも、お風呂が嫌いなあいつ等は、水に濡れるのを極端に嫌うし、現実的ではない。


「進路も決まらんとに遊びほうけるのはアレやけど、悩んでも決まらんもんは決まらんな。」


 猫たちのこともあるし、とりあえずは就職やんな。
 でもどこに就職するんだ?


 今やってるバイト先にでも就職するかなー。


 コンビニと本屋。鶏の解体に夏場はかき氷屋。病院の介護人の真似事。あ、幽霊退治もあったか。
 最近はお財布も危ないから深夜もバイトばっかり入れて修行どころじゃないし
 猫たちがドンドン化け物になって行ってしまうよ。
 おっちゃん悲しい。


 でも何が一番悲しいって。あー、思い出したら腹立ってきた。


 バドミントン部の個人戦で3回戦敗退ってのが悲しいね


 ダブルスに至っては初戦敗退ですよ。
 キャプテンは個人戦で三位に入賞するし


 女子部に至ってはダブルス優勝だよ。


 俺だけが入賞できなかった


 まぁわかってるけどね。元々が運動音痴やし。それなりに努力をしても結果が伴わない。
 これが才能の差ってやつか


 あーやだやだ。努力はいつか報われるなんて幻想に過ぎないんだってことを否応なしに突き付けられるよ。結局世の中は才能がものを言うってことだね。


 人としゃべるのも苦手。運動ができるわけでもない。成績がいいわけでもない。イケメンでもない。それはもう人として人生を詰んでるんじゃないかな。


「ただいま。」


 まぁ詰んでるからといって、今の人生が楽しくないといったら嘘になるけど。


「おかえりにいちゃん! さびしかった!」


「おっふ! ただいまティモ坊。ええ子にしとった?」


「えへへ、もちろんだよ!」


「よっこら………ん、ちょっと重くなったね。」


 ティモ坊を抱き上げる。最近身長を測ってみたら125cmだった。最初に擬人化した頃よりも2cmくらい伸びてるかな。ちなみに、猫の姿になっても、普通だったらもうかなり大きな猫になっててもおかしくないんだけど、まだ片手に乗る程度の大きさしかない。
 猫としての成長速度は人間の成長速度に比例するみたいだ。


 もしかしたら、『猫としてすごした成長した時間』と『人としてすごした成長した時間』で別々のくくりなのかもしれないけど、頭の悪い俺にはわからない。


「おっちゃーん、おかえりなさーい。ご飯出来てるよー。またティモちゃんが頑張ってくれたのー。安心してー? 火は私が責任もって管理してるからー。」


 タマがオタマをもって駆け寄ってきた。なんだこの子。胸を叩きながら微笑むこの子は天使か? 天使だな、間違いない。
 ティモを下ろして、俺は膝をつく。タマに目線を合わせてから


「ありがとう。おっちゃんの自己満足のために抱きしめさせてくれ。」


「んふふー、いーよー。」


 タマは両手を広げて待機する。この子、0歳児なのに、精神年齢的には俺と同じくらいなんじゃないかと思っている。
 俺のPCを勝手にいじってはDドライブのエロゲ―を勝手にプレイしていやがるし。
 俺が近くに来たとわかると、イヤホンを片方俺に差し出してくるんだよ?


 ギュッと抱きしめたついでに抱き上げると、タマは俺の頬に頭を擦り付ける。髪の毛が柔らかくてくすぐったい。


 まー一緒に風呂入ったりエロゲ―をプレイしたりするけど、俺がこの子たちに興奮したことはないね。
 俺はロリコンではなかったらしい。実に残念だ。それに、もともと俺は性欲がそんなに存在しなかったというのもでかいね。
 男としてそこんとこどうなんだろう。性欲が欲しい。ドラゴンボールに願ってもいい。


 知識を深めてしまったタマも、俺が何もしないことを知っているからこそ、俺が抱き上げることをただのスキンシップと認めているんだ。


「タマは抱きしめられるのを嫌がったりせんのん?」
「んー? 嫌がるわけ無いよ~。むしろ抱きしめられるのは好きな方だよー?」
「さよか………。おっちゃんを嫌わないでくれてありがとう。大好きや。」
「私もおっちゃんのことは好きだよー。それにぃ、まだ私たちは0歳なんだからー。甘えたい年頃なのー。」


 一度タマを下ろしてからタマの向きを反転させて、わきの下に手を入れ、よっこらしょと持ち上げる。
 まだ体重が30kgも無いから、俺の筋力でも簡単に持ち上げることができた。
 そのままタマを肩車する。


「今日のご飯は?」
「たいしたことはできないからねー。普通に味噌汁と肉野菜炒めだよー。」
「ほう! あのねシロちゃん。そういうのを家庭の料理って言うんだよ。おっちゃんはその野菜炒めすら作ってないから、充分たいしたことやで。まず料理をする0歳児ってのがありえないから。」
「んふふ~、ありがとー!」


 タマは照れを隠すように俺の頭をギュッと抱きしめる
 悲しいかな、肋骨の感触しかないんだよ。残念。おっぱいが足りないね。


 とか考えてたら、タマが俺の頭を抱えたまま体重を後ろに傾けた


「うわっ!? ちょ―――」


 体重に負けて俺は後ろにひっくり返ってしまった。


「あいたたた、タマ、だいじょう―――ぶふぇえ!?」


 今度は頭にしがみついていたはずのタマが俺の腹の上で馬乗りに
 マウントポジション。おしりの形がはっきりわかるけど、残念。肉が足りない。


「なんか失礼なことを考えてる気がするんだよねー。」
「失礼な。タマは大人になったらものすごい美人になるってことしか考えていない。」


 間違っていないはずだ。


 タマは、ならいいけどー。とか言いながら、キッチンに向かってオタマを放り投げた。
 くるくる回転しながら飛んでいくそれ振り返らずにをキャッチしたのは、クロ。


 漆黒の髪を持つ美少女。黒髪なのに光を反射して眩しいです。


「修さん………おかえり、なさい。試合は、どうだったの?」


 タマを横にずらして上半身を起こすと、背中からティモがよじ登ってきた。
 ティモ坊をおんぶして、キッチンの方へと向かう。


「おう。負けたよ。3回戦で。」
「あいては、強かったの?」
「んにゃ、おっちゃんよりは強いけど、勝てないほどではなかったかな。最終的にはおっちゃんの気力とスタミナ切れで負けた。」
「……………? 修さんより強いのに、勝てないほどではないの?」


 クロが首を傾げる。
 世の中は実力が下の人に負けることもそのまた逆もあるんだよ。


「最初は18-12で勝ってたんだけどねー。油断したわけでもなけど、デュースを8回積んで逆転負け。悔しいね。勝てない試合じゃなかったのに、負けちゃった」


 実際、最初は俺が押してた。俺は運動音痴だから、すこし工夫してトリッキーな動きをするもん。4回戦以上に出てくる人なら簡単に対応してくる………というか時々俺と同じことをしてくるけど、高校の2,3回戦程度の実力では対応しきれないんだろう。
 視覚トリックを使ったバドミントンの戦法なんて、見破られたらそれまで。
 初見殺しのトリックプレーだよ。


 ま、スマッシュも打てないほどの運動音痴が2回戦を勝ち抜いたことを喜ぶべきかな。
 スマッシュを打つことができないから、相手も俺の対応に慣れてきて、そこからもうやられまくりだね。しゃーない。基本スペックが違うんだよ。俺は凡人さ。


 たしかにトリックプレーを使い始めた初日だけは、キャプテンにも勝てた。それ以外はもう対応されたさ。
 キャプテンはその対応に慣れたおかげで入賞したと言ってたから、俺の行動が無駄だったわけではないか。


「えと………おつかれ、さま。」


 どういう表情をしたらいいのかわからないでいるクロの顔をムニムニする。
 クロが気にすることはない。これは完全に俺の問題なんだから。


「んーっ! これで部活とはおさらばだと考えると胸の中がスッとするなー!」


 これは紛れもない本心。部活してていいことあったかな。
 うーん。とくにないな。強いていうなればキャプテンと知り合ったことによって兄弟ができたって程度かな。
 クラスにゃ友達いないけど、俺はほかのクラスで入り浸って楽しく過ごしているよ。


 だから、クラスに友達がいないことについても、まったく気にしていない。
 まぁ、自分のクラスに友達がいないから、昼休みはトイレで食べているっつう不名誉な噂が立ってるけど、そんなことはどうだっていい。


 俺の背中に貼りつくティモ坊を降ろして、クロの頭をポンポンする。


「クロちゃん。おっちゃんがおらん間、澄海んちに行ってたんだよね。」


「うん、そう………だよ。」


「なにか変ったことあった?」


「えっと………」


 初めて俺がいないままお泊りしたんだ。どうしていたのか気になる。
 まぁ、俺も深夜のバイトとかしてるから、あまりいつもと変わらないのかもしれないけどさ。


 でも、よく見るとクロの目が泳いでいた。あらら、おっちゃんに言いにくいなにかがあったのかしら。


 うーむ。ありえんとは思うけどもし澄海が俺のクロちゃんにふしだらなことをしたのであれば返り討ちに会うことを承知でぶん殴りに行こう今すぐ。


「どしないしたん?」
「………えっと、その………怒らないで、聞いてください」
「ムリ」
「ふえっ!?」
「あのね、さすがにどんな話かも分からんのにそんな約束はできんよ。」


 ふぅむ。クロがなにかをやらかしたのかな?
 わざわざ怒らないように言質を取ろうとするくらいだし。


 チラリとタマの方を窺うと『大丈夫だよー』と言いたげに微笑んでいた


「とにかく言ってごらん?」


 タマがそうなら、そんなに不安がることもないだろうに。
 しかし、クロは少しだけ泣きそうになりながら


「は、はい。肝試しを、しました………。」
「ほう………肝試しか。そんなんじゃおっちゃんは別におこらんよ。楽しかったけ?」
「うん………。」
「そかそか」


 楽しんだならなによりだ。それにしても、肝試し程度で俺が怒るとでも思っているのだろうか。どんだけ俺は器が小さい男なんだよ


「で?」


 話を促す。


「その………たまたまその日が、鬼門が開く日で………、戦闘に、なったの………」
「あー………けが人は出てないよね?」
「うん………澄海くん、だけ。怒らないの?」


 澄海が怪我をするってちょっと考えられないんだけど。
 礼子さんの家にお邪魔するようになってから知ったけど、澄海の体力ってバカみたいなんだもん。筋力も俺の10倍くらいは簡単にあるし、本気出したらどうなるのか、本当にわからん。そんな澄海が怪我をするのに、クロたちが怪我をしなかったのは不思議だ。
 でも、大事には至っていないらしい。よかった。


「んー? どこかにおっちゃんが怒る要素はあったか?」
「その………勝手にあぶないことを、した………から。」
「アホ、心配はしても怒ることはないよ。むしろその肝試しの参加者を守ったことはすごい。誇っていいよ。怪我をして帰ってきたら、さすがに怒るかもしれんね。」


 俺がそう言ってクロの頭を撫でると、クロは頬を緩めた。


 これが天使。


 おっちゃんは褒めて伸ばす子なのですよ。
 話を聞くと、戦闘になる前には肝試しはお開きにしたとか。賢明な判断だね。


「それにしても、澄海が怪我するなんてどういうことなん? 普通じゃありえんだろ。」


 俺の目パンピーから見ても、あの子の能力値は異常だからね。怪我をするなんて想像もできないな。
 厄介な相手でもいたのだろうか。地獄の鬼とか? それなら澄海でも怪我するかも。


「その………澄海くんをやったのは………イスルギさん、なの。」
「あの人が!? うわぁ、イスルギさんまじパネェっす。というかなんでイスルギさんが小学校に!? あ、そっか鬼門が開く日………。」


 猫たちを擬人化させたのだって、バイトを手伝うためだ。あの学校はゴーストは多い。猫に学校の厄介なゴーストを掃除させるため、小学校に送り込んだ。鬼門が開く日くらいはイスルギさんがいても不思議じゃないか。
 もう人間じゃないな。あの人は宇宙人だ。
 いや、澄海を倒しているからそれ以上の何かだ。


 それからクロは学校での出来事をかいつまんで話してくれた。


 肝試しでだれだれが気絶した。 とか


 水瀬のおっぱいがうらやましい。 とか


 後半の妖怪退治ではタマちゃんが抜けると連携に穴がある。 とか


 実は礼子さんがイスルギさんの妹だとか………うぇあ!?




「え!? なにそれ、マジ!?」
「う、うん。澄海くんも、知らなかった、みたい。」
「うっわー………礼子さんとイスルギさんの関係って前から気になってたけど、妹だったのか………。道理でどっちも化け物みたいな霊力を持ってるわけだ。」
(………あれ? わたしは………礼子さんは、ミコトさんから、霊力をもらって霊能力をを覚えさせたって聞いたような。)




 イスルギさんの嫁さんがスカイパパの妹だとか




「なにそれ!? 大山の家の家庭事情はしらんけど、なんかの閉鎖的な村のしきたりみたいな感じやんな! というかイスルギさん既婚者だったんだ………。まぁいい年だし、結婚くらい………」




 イスルギさんには9歳になる息子がいるとか。




「………マジかよ。半端ねぇな。というと、大学生くらいの年齢で子供がいたのか。」
「わたしたちと、同じ学年………みたい。」
「ん~、ということはいつかは紹介されるかもしれないね。宇宙人との子ってことは、そのクユルギって子はやっぱり白髪なのかな。」
「それは………わからない、です。」




 妖怪討伐の報酬で300万円もらったとか。




「お、修さん! しっかり、してっ!」
「にいちゃーん! どうしてかたまってるのー!?」
「おっちゃん………っ!? し、死んでる?」
「……………………………………はっ!? タマ、いらんボケをかますな。」


 たすっ、と俺の手首を握りながら腕時計を見るふりをしていたタマの頭にチョップ。
 どこでそんな高等なボケを覚えたんだおまえは。


 俺はあまりの金額に一瞬視界がブラックアウトしてしまったようだ。
 クラクラする頭を押さえて聞いてみる。


「えっと、その300万円とやらはどこに?」


 300万円あったらランサー買えるよ。買わんけど。どーせ俺は自転車があったらどこにでも行ける貧乏学生さ。愛車の自転車ぴーちゃんが居ればどこにだって行ける。


「えと………タマちゃんが、管理………してる。」


 タマが?
 そんなことして大丈夫なのか?
 そう思うかもしれない。
 しかし違う。俺が全幅の信頼を寄せる我が家のシロちゃんはイタズラはしても間違ったことだけは絶対にしない子だ。


 タマに体ごと向き直ると、俺に通帳を見せてきた。
 そこに記されていたのは




  残高  3’012’092円


 目がくらむ桁だった。
 最近は記帳していなかったけど、残高1万2千円しか残ってなかったのか。
 給料日が近いとはいえ、家賃分も払えなくなるところだった。危ないな………。


 現金で受け取ったって聞いたけど、ATMって暗証番号がわからなくてもお預入れはできるんだっけ。
 というか賢いタマの事だ。俺の口座の暗証番号を把握しているに違いない。俺がATMでお金を降ろそうとしているところを何度も目撃しているし。指の動きで把握している可能性もある。タッチパネルのは暗証番号の並び順ってコロコロ変わるきがするけど、タマならあるいは………。
 いや、子供を疑うのは止そう。


 それに、タマは俺の口座からお金を降ろしても決して悪い事には使わないだろう。


 高1 高2の時にバイトで貯めてた貯金がなくなるギリギリだったから、正直助かった
 この子たちの養育費が案外バカにならないんだよな。


 0歳児にしては、ティモでさえ文字も読めるようになったし、文法もあっている。
 頭はいいのだ。だからといって、勉強をさせないわけにはいかない。
 小学1年生用のちょっとした教材も買った。算数ドリルも買った。
 それに、食費もでかい。洋服もすぐに合わなくなるだろうし。


「それにしても、なんでお金が入ったことを俺に言ったんだ? 黙っとけば全部自分の物にできたはずやのに。」


 俺が何の気なしにそういうと、みんなは苦い顔になった。


「にいちゃん。ぼくたちがそんなことをするはずがないよ!」
「信用して………ない、の?」
「それはあんまりなんじゃないかなー。」


 あー、まずいことを言ったと今更ながら悟った。


「ごめん。信用してないわけじゃないんだ。もし俺が逆の立場だったら、報酬は150万だったとかいいながら、残りをもらっていた可能性もあったから。俺は卑しい守銭奴だからね。」
「にいちゃん。そんなことするの?」


 うぁ………涙目で見ないでくれ。俺だってそんなことはしないよ


「しないしない。したとしてもおっちゃんは嘘が下手やからすぐばれる。」
「だよねー。おっちゃんがそんなことできるわけがないよー。」
「そだよ。それに、このお金は俺が稼いだものじゃない。ティモ坊とクロとタマが頑張って稼いだものだ。俺の手柄じゃない。それを俺が使うのはちょっとな………」
「そんなこと………気にしなくても、いい、のに。」
「多少は気にするさ。それに、子供のうちから大金を持たせて成長させるのもどうかと思ってるし、の300万円はおっちゃんがあずかる。おっちゃんも生活費以外で使う気はない。俺が稼いだわけじゃないから、猫たちが大人になったら使ってくいやん。」


 俺は三人の頭を順番に撫でる。猫であるこいつらは、なんだかんだで撫でられるのが好きなんだ。




「まー、とりあえず必要経費として、お前らの水着を買わないとな。もうすぐ水泳の授業があるんだろ?」






 俺が悪い笑みを浮かべながらそういうと、猫たちはぴしゃりと固まった。






「おおおおおおおっちゃん。わたたわた私は泳げないよー?」
「知ってる。お風呂だって嫌いだもんね。」
「にいちゃんのバカァ! 知っててなんでそんなこと言うの!?」
「だって授業じゃん。」
「そ、それとこれとは………」
「話は同じじゃねぇか。何言ってんの? 明日は帰り次第、学校指定水着の新調に行くぞ。んで今日も、飯食ったらお風呂だね。」




「「「 にゃぁああああああああ!!! 」」」




 大山荘101号室は、今日も騒がしい。



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