猫と宇宙人はゴーストバスターを始めたようです

たっさそ

第42話 ………笑えるくらい、ノリのいいゴーストたちだ。

―――リリリリリリリリン♪ リリリリリリリリン♪


 肝試し4周目にて、ようやく『開かずの扉』が始動した。
 ちなみに、1~3周目は空振りだ


「あ、あああぁぁぁあ……………ななななんか、電話が鳴ってるんだけど…………」


「はわわわわ…………だだだ、大丈夫だよほほほほほほほら、いいいいいいいいいってきなさいよリズム。」


「あたたあたあたしに押し付けないでよ! 」


「ヒィ――――ッ! ヒヒィ―――――――――――――ッ!!」


 いやあ、僕としては反応がおもしろい。
 これは役得だ。とくに正明。お前は馬か。ゴーストが面白がって生徒を驚かせる理由はこのためか。見ている分にはおもしろい。本人たちはこの世の終わりみたいな顔をしてるし


「…………くぁ………」


 でも、なんだかんだでもう12時だ。普通に眠い。






「「「「 なんでスカイくんは落ち着いていられるの!? 」」」」






 なんでって、そりゃあ慣れてるからでしょ。






―――リリリリリリリリン♪ リリリリリリリリン♪






 鳴り響く電話ボックスの中の着信音。


 電話の中に、ゴーストが入り込んでいるんだ。僕には見えているし、気配を感じる。


「………いくよ、里澄。」


 僕が声をかけると、顔を真っ青にして


「え、えええ!? 本当にあたし!? う――――っ! うう――――――――っ!!」


「ほほほほらほらほらー、はは早くいきなさいよ、骨のひとつくらいは拾ってあげるから」


「やだよ死にたくないよ! やだやだ押さないで―――――っ!!!」


 僕が電話ボックスの扉を開いて中にご招待する


 中に里澄が入って、扉を閉めるとあら不思議。中からは出られなくなりました。


 これが『開かずの扉』簡単に言えば、何人かのゴーストが悪ふざけで扉を押さえているだけ。


「いや――――!! 本当に開かなくなってる!! た、助けて! ん! んん!! ダメ! 押しても開かない! ふぇえええん!!」


『あははは、この子、反応がかわいいーっ!』


『これ本当にやりがいがあるぜ!』


『この反応を見たいがために俺たちはここにいるようなもんだ!』


『今日はもりあがってるわ! とことん驚かせてやるわよーっ!』




 いやほんと、ノリよすぎだろ、あんたら。




「いやーっ! 開けて―っ!! 助けて―――――っ!!」


 ドンドンと壁を叩いても扉は開かない。


「ほ、本当に出られないの!? う、うそこけー。さっきすんなり開いたじゃん」


「でも、あれ、こっちからも開かないよ!?」


「うっそ! マジで閉じ込められちゃった!?」


「リズムちゃん、澄海くん、気をたしかにして! ぼぼ、僕がついてるから!」


 おっ? 正明、お前案外根性あるな。ちょっと見直した


「………で、でも、澄海くん、まったく動揺してるようには見えないね」


 僕が落ち着いているからか、里澄も落ち着きを取り戻したみたいだ。一人冷めた奴がいるだけで、こんな効果があるとは。


「………別に。こっくりさんの時と同じだろ。」


 僕はテキト―にそう言っておいた。『だからってその反応は普通じゃないよ………』という里澄の呟きは聞かなかったことにする。






―――リリリリリリリリン♪ リリリリリリリリン♪






「………電話、出てみろよ。じゃないと出れないだろうし。」


「怖いよ! あたしより落ち着いてる澄海くんが出るべきなんじゃないの!?」


 正論。でも僕は、めんどくさいんだよ。




「………何言ってんの。僕だって怖いに決まってんじゃん。だから、頼りにしてるよ。」




 僕が里澄の肩を叩きながら言ってるのは、クズの発言。自覚はあるよ。僕はサディストに目覚めたのかもしれない。しかし逆に、これは『里澄にとってはチャンス』の状況。


 僕に好意を向けているから、頼りにされたら頑張りたいだろう。それも分かった状態で、あえて僕は里澄を追いこんでみた。はたして里澄は受話器をとるのか取らないのか。




「うっ、………わかった。受話器はあたしが取る………」


 取るのか。里澄も神経太いな。いやはや根性あるよ。見直した。




―――リリリリリリリリン♪ リリリリリ(ガチャ




「も、もしも――――」








『――― コ ロ ス (ブツ』








「ひゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」


 里澄は受話器を放り投げて電話ボックスから出ようとするが、もちろん開かない。


「たすっ、助けて澄海くん! うああああああああああああああああああん!!」




 うん。ごめん、やりすぎた。反省してる。


 今度は、里澄が僕にしがみついて離れようとしない。これはさすがに悪いのは僕だから、無理に引きはがすこともないだろう


 僕はため息を吐き、泣きじゃくる里澄の頭をポンポンと叩いてから、受話器をもとの位置に戻した。








――――バンッ! ………バンッ!!








 と、次はボックスの外から音が聞こえてくる。


「ここ、今度はなに!? もうやだ帰りたい!! ヒッ―――! て、手形あああ!?」


 音と同時に、赤い手型が電話ボックスに貼りつく。
 電話ボックスの中にいる里澄にしか見えなよう、ゴーストが電話ボックスを外から叩いているんだ。いやもうすがすがしいくらいノリのいいゴーストたちだ。
 電話ボックスの外でゴーストたちが、ハイタッチしてるのが見える。僕にとっては台無しの光景だ。


「ひっぐ、ぁぁぁぁ…………あわわわわわわ………………!!」


 もうそれらを見ないように、僕に顔を押し付けて肩を震わせる里澄。いいかげんウザい。


 周りのゴーストもみんな大爆笑である。満足のいく反応だったみたいだ
 僕もちょっと笑いをこらえるのが大変だ。僕の肩が震えているのは、こわいからじゃなく、まぁそういうことだよ。


 んー、………そろそろ出るか。
 えっと、たしか電話の裏に御札が貼ってあるはず。………あったあった。




 僕は御札に念を込める。それをそのまま―――


「―――ふん!」




 電話ボックスの扉に叩きつけた。




『『『『 うわぁ!? 』』』』


 弾かれるように電話ボックスから離れるゴーストたち。
 これで扉は開くようになったな。


「………出るよ。」


「ま、待って………あ、足が……動かない。そ、それに………開かないし………」


 腰が抜けたみたいだ。僕にしがみついた姿勢のまま動けないっぽい。




「……………。」


 ため息を一つ。


 僕は里澄に肩をかしてから、扉を開く。あっさり開いた扉に、みんなが口をあんぐりさせていた






「な、中でなにがあったの…………?」


 正明が里澄の怖がりようを心配していた。あんなにパニックになってたんだ。しかも外からは何があったのかはほとんどわからない状況で。


「お、思い出させないで……………」




 これ、絶対にトラウマになるよね。まあいい。それで、心霊現象から離れてくれれば、それだけで危険は減る。多少荒っぽい感じになったけど、これで里澄はオカルトに興味を持つことはないだろう。




「………どうする。まだ続けるの。」


「「「「 (フルフルフル!!) 」」」」


「………そう。じゃあ帰ろう。」




 里澄のチームはリタイア。







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