猫と宇宙人はゴーストバスターを始めたようです

たっさそ

第41話 七不思議『開かずの扉』



 4周目。


 メンバーは名前を忘れた女生徒二人と里澄、正明。それと僕だ。


「す、澄海くん、こわくないの?」


 眠くなってきた。あくびを噛み殺しながら歩いていると、正明に話しかけられる。
 太いからだで、思いのほか高い声。まぁ、僕も声変わりもまだなんだけどさ。


 こわがる? わけないじゃん。何言ってんの。
 この僕が怖がることなんて、そうそうあるわけがないよ。


「……………別に。ここ4回目だし、もう慣れた。」


 まぁ、一回目に一人で行った時も怖くはないんだけどさ。
 僕が何周もすることになってよかった。
 もしも、猫たちや僕がいない状況でゴーストに襲われでもしたら、こいつらは絶対に憑かれる
 それを避ける意味でも、今回の組み分けは、割といい感じだ。常に、お守役として僕がついているんだから。


 常に気を張っておく必要があるから、かなり疲れるけど。






―――ほらリズム。もうすぐチャンスだよ。次のおどかしがきたら、スカイくんに抱きついて!


―――や、やだ………恥ずかしいよ………


―――だめだよリッちゃん、こういうのはダイタンにいかないと!


―――で、でも………


―――デモもストもないの。ええいわかったわ。あたしたちがチャンスを作ってあげるから!




 緊張感のないこいつらには呆れた。


 小声で話しているんだけど、やっぱり僕の耳は拾ってしまう。


―――3、2、1………


 そして、そこで隠れている生徒の声も聞こえてるからね。まったく怖くないよ。




「わーっ!」
「ばぁ――!」


「「きゃっ!」」
「ひっ………!!」
「うわぁああ!?」
「………………。(ひょいっ)」


 もちろん、全員を避ける。
 驚かせた生徒は、僕に的を絞って驚かそうとしているようだし
 里澄は、僕の腕を掴もうとしたみたいだけど、体を反らして簡単に避ける。
 僕が避けにくいように僕を挟んでいた女生徒二人も避ける




「「「……………………」」」






 フラグクラッシャー? 上等だよ。






「えっと、次は………どこだったっけ?」


 またしばらく進み、正明が次の御札の場所を確認する


「………電話ボックス。」


 もう4周目だ。ルートも覚えたよ


「あ、そうだったね。」


「あの電話ボックスって、七不思議の………? だれも使わない、よね?」


 リズムが震える声で僕に聞いてきた。
 その通り。その電話ボックスは『開かずの扉』という七不思議のおかげで、誰も使用しない電話ボックスだ。
 今は携帯があるからね。普通に誰も使わないよ。
 低学年の生徒は、何も知らずに使うことがあるけど、あまり心配ない。


「………(こくり)」


 僕が頷いておく。怖がることはない。


 どうせ、これもゴーストが悪ふざけをしているだけだから。
 行っても、ほとんどの確率で何も起きないんだよ。僕が学校に来てから今まで電話ボックスに閉じ込められた人は100にんちょっと。だけど、ひととおり泣きじゃくると、ゴーストも満足して扉を開けてくれる。


 一応、10回くらいは、開かずの扉をこじ開けて助けたことはあったかな。そのころ、僕は携帯持ってなかったし。




「あ、着いたよ。」


「電話ボックスのどこかに御札が張ってあるみたいだよ。ここは一番小柄なリズムとスカイくんに行ってもらおうかなー」


「え!? ええ!? ふたりで!?」


「そーだよ。電話ボックスに5人も入れないじゃない。そのくらいわかってよー」


「でで、でも中に入ったらでられな(小声)」


「それはそれで役得でしょ(小声)」


「っ!!」


 いやいや、まる聞こえだからね。僕の耳を侮っちゃあいけませんよ。そんな浮かれていていいのかな。もう、そんな余裕もなくなっちゃうはずだよ。 それに


「あ、あれ? なんかおかしくない? 音?」




 里澄が電話ボックスに違和感を感じたのか、ゆっくりと近寄る。
 僕はすこしニヤリと笑った。人が怖がる姿を見るのは、思いのほか楽しい。


 この電話ボックスはゴーストも凝っている。
 まー、一般生徒が最初に怖がるのは入ってから開かなくなる扉ではなく、扉を開く前に―――






―――リリリリリリリリン♪ リリリリリリリリン♪








 ………これだ。4周目で、『開かずの扉』の七不思議が始動した。





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