猫と宇宙人はゴーストバスターを始めたようです
第33話 ★澄海くん………つめたいよ。つんでれ? ってやつなのかな。
今日から始まった修行は、ティモとおっちゃん・タマとママ・クロと僕のペアに分かれてそれぞれの修行をしている。
というか、もうこのペアですることになっている。
タマの幽体離脱の修行は難航しており、ティモとおっちゃんは漢字だらけのお経を読むのに苦戦している。
僕たちはというと
「えっと………。んっ!」
「………ちがう。もっと強く念を込める。じゃないと、鏡の力が発揮されないどころか、鏡を開くこともできない。」
クロが鏡を使いこなせるように、僕が指導していた。
正直にクロに言ったよ。「めんどくさい。」と。
そしたら、クロが涙目になって、ママに頭を叩かれた。「女泣かすなハゲ!」だって。
僕に自由時間はないのかな。
「………鏡を貸して。」
クロから鏡を受け取り、霊力と念を送る。
「………時間をかけてもいい。まずは、霊力………クロの場合は、たぶん妖力か。どっちでもいいけど。妖力と念をありったけぶち込めば、勝手に鏡は開く。」
錆びついた金属にと不思議な力によって、力を込めても開きそうになかった小さな鏡の蓋が僕の掌で開いた。
………そこには、やる気がなさそうで、不健康そうな顔が映った。
それを、またパタリと閉じて、クロに手渡す。
「よし………やってみるね。………んんっ………………!」
そのままクロが念を送り続けること10秒。
ヂャリッ、という錆が離れるような音とともに鏡が開いた。
「や、やった! できたよ、………澄海くんっ!」
「………(コクリ) 次は、その中にいる神様らしい人に、言葉に力を込めて話しかける。」
ようやく第二段階になった。うれしそうにしているクロには申し訳ないが、すぐに次に進ませてもらう。
「あの………」
クロが鏡に向かって話しかけるも、そこには青い瞳が映るばかり。
「だめ。………そいつはクロの霊気に反応するんだから、言葉にも霊力を込めないといけない。」
「うぅ………。難しいよ………」
「………そんなことは知らない。早く終わらせて。」
僕はその辺に座布団を敷いて、胡坐ををかいて座る。
「え、えっと………は、はんのう、してくださいっ………!」
クロが頑張って鏡に話しかけるも、鏡からの反応はない。
あー、そういえば、まだ麻雀の入門書を読んでいる途中だったな
………取ってくるか。
「………僕はちょっと部屋から出るよ。一応すぐ戻ってくるようにするから。」
「う、うん………わかった。」
僕とクロに割り当てられた部屋を出て、自分の部屋へと向かう。
その途中で、ママとタマの部屋から声が聞こえてきた。
『―――休憩はすんだな? ならまた、自分の体の数センチ上に、もう一人の自分が居るイメージをしろ。』
『うー………いつまで続くのー?』
『まず自分の幽体を感じることができるまでだ。がまんシロップ』
『無理だよー!』
『邪念を払え。口を開くな。そこに寝て、ほら集中!』
『むー!』
やはり難航しているみたいだ
さ、ほっといて入門書を取りに行こう。
☆
小脇に入門書を抱えて廊下を歩いていると。
『―――。――――』
ん? ぼそぼそと話し声が聞こえてきた。声が小さくて聞き取りにくいな。
すこし耳を澄ませてみるか。
『――にいちゃん、ここはなんてよむの?』
『んー? あー………おっちゃんも読めない。』
『ええー!』
こっちもこっちで大変そうだ。
そう考えると、クロが一番進展しているんじゃないだろうか。
そんなことを考えながらクロがいる部屋の襖を開く。
「………首尾はどう。順ちょ………」
順調? と、久しぶりに言葉の最後に『?』をつけようといたが、途中で言葉を出すのをやめた。
「えと………コレで、いい………よね?」
驚いた。ちゃんと、神様を呼び出すことに成功していたみたいだ
「………(こくり)」
『……………………………………ZZZ』
この神様、寝てるけど。
「あの………はなしかけても、はんのうがなかった、から。………開いたかがみに、霊力を………また、おくってみたの。」
そっか。それでもいいのか。初めて知った。寝ていたらそうやって、無理やり現世に顕現させればいいんだね。
僕もこの神様を直接見るのは初めてだ。
『むにゃ………』
畳の上で、幸せそうに寝ている姿を観察してみると………
なんかへんな羽衣みたいなのを着てる。
なんに使うんだろう。
Ω←こんな形の白いのとかが、背中から頭の上で弧を描いている
なんか邪魔そう。
「………起きて。」
触ろうとするも。実体がない。手がすり抜けた
「………。」
僕はポケットから御札とアロンアルファを取り出し、御札の下半分に大量に塗りたくって――
「………。(ぺたっ)」
―――そいつのおでこに貼り付けた
「………(ゲシゲシ)」
うん。踏んでも反応があるね。
「つ、次は………どうしたら………」
クロが次の指示をもらおうと、僕に話しかけてきた。
「………ごめん。そこから先は僕にもわからない。」
「そ………か。」
「………とりあえず、コレをそのまま………ママのとこまで転がしていく。」
「えっ―――!?」
「………手伝って。」
「ころが………って? え? う、うん。わかった………。」
わかっちゃうんだ。………クロの頭が緩いのか、僕の行動がアホなのか。
ま、僕はただ、引っ張ったり担いだりするのが面倒くさいだけなんだけどさ。
☆
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