猫と宇宙人はゴーストバスターを始めたようです
第25話 ★三食おやつに首輪付き………わたしの意思は?
そして時は土曜日。
猫たちは学校にももう慣れたみたいだ。
時折、別の学年から奇怪なものを見るためにわざわざ人が来る事もあるが、猫たちは気にした素振りはみせない
最初からそうなることはわかっていたんだろう。
「澄海君、いっしょにかえろ?」
「………。」
ともかくだ、慣れることはいいことだろう。
「すーかーいーくーん!」
「………うるさい」
学校生活に慣れたからといって本を読んでる最中に揺さぶって耳元で名前を呼ばれるのはどうかと思うけど。
友達がたくさんできただろうし、ティモはそいつらと帰ればいいのに。
「ほらはーやーく!」
「………ティモ。」
「あは、なに? 澄海くん」
「………いいことを教えてあげる。」
「?」
「………僕は気が短い」
「わわっ!」
ティモの心臓の位置を人差し指で押し、距離をとる
今日は土曜だから、午前中だけで終わった。何かをする予定もないから、教室で本を読んでいたんだけど………タチの悪い生物に絡まれたもんだ。
オレンジ色の耳をしょんぼりと垂れさせても僕は椅子から動かない
すると、僕が目を通していた本が、いきなり引き抜かれて閉じられた
「………。おい。」
「コラコラー。ティモちゃんをイジメたら許さないよー? 澄海くーん。」
全面的に被害者は僕じゃなかろうか
「………返せ。」
僕は苛立ちながら椅子から立ち上がってタマが閉じた本に手を伸ばすが
「クロちゃーん、拘束してー?」
「う………うん」
すんでの所でクロに羽交い締めにされた
猫の体温は人より高いみたいで、密着するクロは柔らかくてかなり暖かい
なんだかいい匂いもする。
だけど、僕が結構力を込めても動けないほどがっちり固められている
「………。」
ため息を一つ。
僕が諦めたのに気付いたのか、タマは「172ページ」と言いながら机の上に本を置いた
さすがにそこまで騒がれたら読む気も失せるよ。
―――ゴッ!
「あぅ! ………痛いよ、澄海くん………。」
羽交い締めにしていたクロのおでこに後頭部で軽く頭突きして、拘束が緩んだ隙に抜け出した。
当然の報いだ。反省はしない
目をギュッと瞑って額を抑えるクロを無視して、カバンに本をしまう。もちろん172ページにしおりを挟むのは忘れない。
時間は12時前
12時くらいまで時間を潰しときたかったな。午後もいつも通り予定ないし。
僕が歩き出すと猫たちも後ろについてきた。
「澄海くんはー、どうして私たちと距離を置くのかなー?」
色の違う左右の瞳に疑問符を浮かべるタマ。
「………理由はない。」
考えてみてもやっぱり理由なんかない。
多分この内向的な性格のせいじゃないかな。
僕は別に優しいわけでもないし
時輝みたいな奴が僕に悪戯を仕掛ける時はあるけど、ことごとく返り討ちにしてるし、まぁそんなんじゃ友達もできないだろう。
欲しくないとは思わないけど、かといって欲しいとも思わないからなぁ。
思ったことは言わないけど、思った皮肉はよく口から出るし………。
人と距離を取るというより、やっぱり性格上、そうなっちゃうんだろ
その点、猫たちは気まぐれで人懐っこい。僕とは真逆の存在なんだろうな
「………?」
ふと、現状に違和感を覚えた。
なぜかゴーストが校門から離れるように行動している。
『ヤツが来た!』
『なんで今更あの悪魔が来るんだよ!』
『いやだ!俺はただ毎日小学生を眺めながら過ごしたいだけなのにぶべら!』
気持ちの悪いゴーストを一匹ぶん殴っといたが、ゴーストたちの行動は深く気にしないで校庭を歩く。
野球やドッヂボールをして遊ぶ生徒たちの合間を縫って校門まで進むと、そこには―――
「よー澄海。迎えに来てやったぞうりむし。感謝しろ。」
ゴーストが逃げていた理由はコイツか。
「あ、れいこさん!」
ティモが声を上げる。
まぁあんな特徴的なしゃべり方をする奴は僕のママしかいない。
「………なんでここにいるの。というか、なにやってんの。」
校庭にリムジンを用意して、中学生程度の体格に巫女服を着込み、サングラスを付けている変態が、そこにいた。
「あれ? 聞いていない? そっか、そうだな。言ってないもんな」
「………。」
「うわっ、睨むなって。コレは覚えていない澄海も悪いヴィトンネルソン。なんでそんなに機嫌がわるい………。今夜は一緒にお風呂に入る?」
若干僕の怒気に気圧されたものの、いつものふざけた雰囲気を取り戻し、サングラスを懐にしまう。
………あと、ものすごく目立っているもんだからすごく恥ずかしい。
「………覚えていない?」
というと、前から約束かなんかがあったんだろうか。
「やっぱり忘れてる。修ちゃんと猫たちをウチで修業させるって話だよ。」
「………あー。」
思い出してみると、確かにそんな話があったな。大体一週間くらい前に。
「だから早く車に乗りコンクリーゼント」
もはや何を言っているのかわからないけど、僕はリムジンに乗り込むことにした。
「ほら、三猫ちゃんたちも乗った乗った。今から修ちゃんの高校に向かうよ!」
「ふぇ? にいちゃんの学校? いくいくー!」
爛々と瞳を輝かせるティモたちもリムジンの座席に乗り込んだ。
―――そして、ママも運転席ではなく、座席の方へ。
「………ママが運転じゃないの。」
「うん、ママンでもよかったんだけどさ、澄ちゃんがね、どーしても運転したいって聞かなくてねえぇ」
「………おばぁちゃんが。」
澄、とは宇宙人の純血であるおばあちゃんのことだ。
もう何歳なのかわからないけど、100歳は軽く超えている超高齢の宇宙人だ。
「なんでも、その猫たちを一目見たかったんだって。どうせ今日、ウチに連れてくるのにね。待ちきれなかったのかしら。」
肩をすくめて運転席を親指で指差すママ。おばあちゃんは楽しいことが大好きの快楽主義の宇宙人だからね。そんだんだからおじいちゃんに先立たれるんだよ。そんなことを考えていると、
『聞こえちゃっているわよ、礼子。』
「やはは………地獄耳だねぇ、澄ちゃん。」
リムジンのスピーカーからおばあちゃんの声がした。
ママは気まずそうに鼻の頭を掻いた
運転席と座席は完全に別の空間のようで、おばぁちゃんはわざわざスピーカーで言ってきたくらいだ。
純血の宇宙人はさすがに人間より五感が優れているみたいだね。防音措置されているはずなのに運転席のおばあちゃんは聞き取れるなんて。
『猫ちゃんたち、めっちゃかわいいわね。特に黒猫ちゃん。アナタかわいいわ。三食首輪付きでおやつもあるよ、ウチにおいでよ。』
「い、いえ………その、えんりょ………します。」
「首輪って澄ちゃん。飼う気満々じゃん! ダメだよ、修ちゃんがすでに飼っているんだからサルモネラーメン」
そんな腹を下しそうなラーメンは食いたくないな。
『仕方ないわね………。その、修ちゃんとやらに直接交渉してみることにするわ。』
「え………わたしの………意思は………?」
涙目になるクロだが、そんなものはあの自由人たちには関係ないんだよ。
僕は静かに心の中で手を合わせた。南無
猫たちは学校にももう慣れたみたいだ。
時折、別の学年から奇怪なものを見るためにわざわざ人が来る事もあるが、猫たちは気にした素振りはみせない
最初からそうなることはわかっていたんだろう。
「澄海君、いっしょにかえろ?」
「………。」
ともかくだ、慣れることはいいことだろう。
「すーかーいーくーん!」
「………うるさい」
学校生活に慣れたからといって本を読んでる最中に揺さぶって耳元で名前を呼ばれるのはどうかと思うけど。
友達がたくさんできただろうし、ティモはそいつらと帰ればいいのに。
「ほらはーやーく!」
「………ティモ。」
「あは、なに? 澄海くん」
「………いいことを教えてあげる。」
「?」
「………僕は気が短い」
「わわっ!」
ティモの心臓の位置を人差し指で押し、距離をとる
今日は土曜だから、午前中だけで終わった。何かをする予定もないから、教室で本を読んでいたんだけど………タチの悪い生物に絡まれたもんだ。
オレンジ色の耳をしょんぼりと垂れさせても僕は椅子から動かない
すると、僕が目を通していた本が、いきなり引き抜かれて閉じられた
「………。おい。」
「コラコラー。ティモちゃんをイジメたら許さないよー? 澄海くーん。」
全面的に被害者は僕じゃなかろうか
「………返せ。」
僕は苛立ちながら椅子から立ち上がってタマが閉じた本に手を伸ばすが
「クロちゃーん、拘束してー?」
「う………うん」
すんでの所でクロに羽交い締めにされた
猫の体温は人より高いみたいで、密着するクロは柔らかくてかなり暖かい
なんだかいい匂いもする。
だけど、僕が結構力を込めても動けないほどがっちり固められている
「………。」
ため息を一つ。
僕が諦めたのに気付いたのか、タマは「172ページ」と言いながら机の上に本を置いた
さすがにそこまで騒がれたら読む気も失せるよ。
―――ゴッ!
「あぅ! ………痛いよ、澄海くん………。」
羽交い締めにしていたクロのおでこに後頭部で軽く頭突きして、拘束が緩んだ隙に抜け出した。
当然の報いだ。反省はしない
目をギュッと瞑って額を抑えるクロを無視して、カバンに本をしまう。もちろん172ページにしおりを挟むのは忘れない。
時間は12時前
12時くらいまで時間を潰しときたかったな。午後もいつも通り予定ないし。
僕が歩き出すと猫たちも後ろについてきた。
「澄海くんはー、どうして私たちと距離を置くのかなー?」
色の違う左右の瞳に疑問符を浮かべるタマ。
「………理由はない。」
考えてみてもやっぱり理由なんかない。
多分この内向的な性格のせいじゃないかな。
僕は別に優しいわけでもないし
時輝みたいな奴が僕に悪戯を仕掛ける時はあるけど、ことごとく返り討ちにしてるし、まぁそんなんじゃ友達もできないだろう。
欲しくないとは思わないけど、かといって欲しいとも思わないからなぁ。
思ったことは言わないけど、思った皮肉はよく口から出るし………。
人と距離を取るというより、やっぱり性格上、そうなっちゃうんだろ
その点、猫たちは気まぐれで人懐っこい。僕とは真逆の存在なんだろうな
「………?」
ふと、現状に違和感を覚えた。
なぜかゴーストが校門から離れるように行動している。
『ヤツが来た!』
『なんで今更あの悪魔が来るんだよ!』
『いやだ!俺はただ毎日小学生を眺めながら過ごしたいだけなのにぶべら!』
気持ちの悪いゴーストを一匹ぶん殴っといたが、ゴーストたちの行動は深く気にしないで校庭を歩く。
野球やドッヂボールをして遊ぶ生徒たちの合間を縫って校門まで進むと、そこには―――
「よー澄海。迎えに来てやったぞうりむし。感謝しろ。」
ゴーストが逃げていた理由はコイツか。
「あ、れいこさん!」
ティモが声を上げる。
まぁあんな特徴的なしゃべり方をする奴は僕のママしかいない。
「………なんでここにいるの。というか、なにやってんの。」
校庭にリムジンを用意して、中学生程度の体格に巫女服を着込み、サングラスを付けている変態が、そこにいた。
「あれ? 聞いていない? そっか、そうだな。言ってないもんな」
「………。」
「うわっ、睨むなって。コレは覚えていない澄海も悪いヴィトンネルソン。なんでそんなに機嫌がわるい………。今夜は一緒にお風呂に入る?」
若干僕の怒気に気圧されたものの、いつものふざけた雰囲気を取り戻し、サングラスを懐にしまう。
………あと、ものすごく目立っているもんだからすごく恥ずかしい。
「………覚えていない?」
というと、前から約束かなんかがあったんだろうか。
「やっぱり忘れてる。修ちゃんと猫たちをウチで修業させるって話だよ。」
「………あー。」
思い出してみると、確かにそんな話があったな。大体一週間くらい前に。
「だから早く車に乗りコンクリーゼント」
もはや何を言っているのかわからないけど、僕はリムジンに乗り込むことにした。
「ほら、三猫ちゃんたちも乗った乗った。今から修ちゃんの高校に向かうよ!」
「ふぇ? にいちゃんの学校? いくいくー!」
爛々と瞳を輝かせるティモたちもリムジンの座席に乗り込んだ。
―――そして、ママも運転席ではなく、座席の方へ。
「………ママが運転じゃないの。」
「うん、ママンでもよかったんだけどさ、澄ちゃんがね、どーしても運転したいって聞かなくてねえぇ」
「………おばぁちゃんが。」
澄、とは宇宙人の純血であるおばあちゃんのことだ。
もう何歳なのかわからないけど、100歳は軽く超えている超高齢の宇宙人だ。
「なんでも、その猫たちを一目見たかったんだって。どうせ今日、ウチに連れてくるのにね。待ちきれなかったのかしら。」
肩をすくめて運転席を親指で指差すママ。おばあちゃんは楽しいことが大好きの快楽主義の宇宙人だからね。そんだんだからおじいちゃんに先立たれるんだよ。そんなことを考えていると、
『聞こえちゃっているわよ、礼子。』
「やはは………地獄耳だねぇ、澄ちゃん。」
リムジンのスピーカーからおばあちゃんの声がした。
ママは気まずそうに鼻の頭を掻いた
運転席と座席は完全に別の空間のようで、おばぁちゃんはわざわざスピーカーで言ってきたくらいだ。
純血の宇宙人はさすがに人間より五感が優れているみたいだね。防音措置されているはずなのに運転席のおばあちゃんは聞き取れるなんて。
『猫ちゃんたち、めっちゃかわいいわね。特に黒猫ちゃん。アナタかわいいわ。三食首輪付きでおやつもあるよ、ウチにおいでよ。』
「い、いえ………その、えんりょ………します。」
「首輪って澄ちゃん。飼う気満々じゃん! ダメだよ、修ちゃんがすでに飼っているんだからサルモネラーメン」
そんな腹を下しそうなラーメンは食いたくないな。
『仕方ないわね………。その、修ちゃんとやらに直接交渉してみることにするわ。』
「え………わたしの………意思は………?」
涙目になるクロだが、そんなものはあの自由人たちには関係ないんだよ。
僕は静かに心の中で手を合わせた。南無
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